転生公爵令嬢が、親友と姉妹になろうと頑張った結果

国湖奈津

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 翌日からは国の穀物庫とも呼ばれる、ターガリウス公爵領の大農場地帯を視察され、我が家が管理を任されている王家の金山にも出向かれるなど、ヴィンセント様は精力的に活動された。

 金山から帰ってきたとき、私は今までに感じたことのない疲労を感じていた。

 すでに王太子殿下がいらっしゃってから10日が経っていた。
 金山への道のりは宿泊を伴う行程だった。
 慣れない母の代行役で緊張が続いていたためか、私は馬車から降りたとき、膝が震え、危うくその場で座り込んでしまいそうになった。

 どうにか立っていられたけれど、歩くたびに少しふらついているような気がした。
 『ホストを任されている立場として、きちんとしなければ』
 という気力だけで、どうにか立っていたけれど、前を歩く父がヴィンセント様に立ったまま何やら話しており、一向に進まないのが辛かった。
 私は一刻も早く椅子に座りたかった。

 持ちこたえようと頑張ってみたけれど、時すでに遅く、私はヴィンセント様に向かって倒れ掛かっていた。
 計画は中止したのに、こんな時に限ってナチュラルにボディタッチできそう。
 スローモーションのように周りが見える中、そんなのんきなことを考えていた時、後ろから誰かが私を抱きとめてくれた。

 「エミリア、しっかりしろ」

 心配そうな声でそう言ったのは、アレックス様だった。
 今回の随員として、アレックス様もいらしていたのだ。
 
 もちろん知っていたけれど、アレックス様の結婚話を聞いてしまってから、アレックス様を見るのがとても辛いような気がして、私はなるべくアレックス様のことを見ないように、意識しないように、考えないようにと自分に言い聞かせてこの10日間を過ごしていた。

 「アレックス様、ありがとうございます。申し訳ありません。少し疲れが出てしまったようで足が言うことを聞かなくて」

 見たら辛いと思っていたのに、アレックス様に心配そうに顔をのぞき込まれて目が合うと、幸せな気持ちと、やっぱりアレックス様のことが大好きだという気持ちがあふれてきた。

 アンナが駆け付けてくると、アレックス様は、
 「私がお運びしよう。」と言って、私を抱きかかえた。
 アレックス様は、先導するアンナに続いて私を部屋まで運び、ベッドに寝かせてくれた。
 
 医術の心得のある者が呼ばれて診察してくれたけれど、疲労だろうと言うことで、良く休んで経過を見ることになった。

 「エミリア、どこか痛いところはないか?本当に疲れが出ているだけか?」

 アレックス様は、ベッドで横になっている私の頭をなでながら心配してくれている。

 「はい。こんな大舞台で母の代役をするのは初めてなものですから」

 大丈夫だと伝わるように、私はにっこりとほほ笑んだ。


 「お嬢様は、ここのところほとんど寝ていませんからね。さすがに無理がたたったのでしょう。そうだ、この機会にアレックス様にお悩みを相談されてみてはいかがですか?」

 「ちょっと、何言ってるの、アンナ」

 私は予想外のアンナの言葉にあわてた。
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