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先ほど私に説明してくれた小隊長が、後宮を守る門衛に話をして、何やら手紙を差し出している。
門衛のうち1人はアクラムだ。
さすがにアクラムは私に気づいたみたいで、元々大きい目をさらに真ん丸に見開いて私を見ていた。
私は目力を込めて、口の前で人差し指を立てた。
後宮の部屋に籠っているはずの女が、正面から帰って来た。
アクラムも驚くはずだ。
それにしても、あんなに驚いていることを顔に出しちゃうなんて。
アクラムは腹芸のできないタイプのようで、私はなんだか安心した。
私の身柄はアクラムに引き渡された。
私は自分の部屋の2つ手前の部屋を選び、埃だらけの部屋の寝室をアクラムと掃除した。
「どういうことですか?」
アクラムは今まで見たことのない怖い顔をしている。
「えっと、えーっと、あのね、私ってリナレイから来たでしょ?リナレイでは女性が外に遊びに行くのは普通なの。それでカーン王子の後宮にいた時は、カーン王子が特別に私が外に遊びに行けるように抜け道を教えてくれていたのよ。でね、調べたら私の部屋にも抜け道があったの。だからちょっと遊びに行こうかなーって。そしたら、なんか危ないことに巻き込まれちゃって火傷しちゃった。そんな感じ」
「火傷なさったんですか?大丈夫なんですか?傷があっても大丈夫ですよ。スワイマン殿下はジェーン様を愛し続けてくださいます」
アクラムは私の体を心配してくれて、慰めてくれた。
アクラムは傷を私が気に病んでるだろうと思って、私が想像していなかったところまでフォローしてくれている。
なんだかすごい。
「リナレイの慣習で部屋に籠るとかいってたのは嘘ですか?」
「そんな慣習、リナレイにはないわね」
アクラムは私をにらんだ。
「まぁまぁ。機嫌を直してよ、アクラム。私にはアクラムしかいないんだから。ね?お願い協力して」
私はアクラムを拝んだ。
下手に出てアクラムの機嫌をとろうという作戦だ。
「正直に報告します」
アクラムはまじめな顔をして、部屋から出て行こうとしている。
私は慌ててアクラムを止めた。
「ダメ、ダメに決まってる。考えてみて。スワイマン殿下の愛する妻が後宮から逃げた。どうなる?」
「さぁ。逃げただけなら、その時の殿下の気分により許されるかもしれません。スワイマン殿下はジェーン様をそれは愛していらっしゃるようですから。でももし外で浮気していたら妻は死罪でしょう」
「浮気してないから、本当」
アクラムは、私の言った手紙の内容を信じているらしい。
実際は一つも愛されていない。
だからスワイマン殿下は私が浮気しようと、どうしようとどうでもいいと思ってそうだけど。
そのことは言わないでおこう。
「じゃあ、心底ほれ込んだ妻が逃亡したのに気付かなかった、後宮の侍従はどうなるかしら?」
アクラムの顔色が変わった。
「ね?こんなこと報告したって、お互いに損するだけだし、皆の時間を使わせることになる。問題になったら、それに対応するために人が動かなくちゃいけなくなるわけだから。黙ってるのが一番いいの。分かる?私は絶対に言わない。アクラムが無かったことにしてくれれば、すべて丸く治まって今までのままいられるのよ。どう?」
「分かりました。でも食事はどうするのですか?2人分届けられるんですよ」
アクラムは私の説得を聞き入れてくれた。
「そうね。アクラム家族いる?家族に持って帰るのはどう?アクラムが食べてもいいし。食事はどっちも私に届けられるわけだから、私がアクラムにあげても問題ないはず」
「それはちょっと…。量が多いと言って、少なくしてもらっては?」
「そうね。そうしましょう。リナレイの私は部屋に籠ってる設定だから食事を少なくしてほしいと言っても不自然ではないし。私も怪我人だもんね。じゃあ、それで。そうだ、あと洗濯物を毎日出さないと怪しまれるから、その辺も適当によろしくね!」
「分かりました」
アクラムはリネン類と着替えを取りに行き、私はベッドの用意ができると、その日は早く休んだ。
夜、私は肩の痛みで飛び起きた。
痛みで起きるのなんて初めてだったから、怖かった。
アクラムが寝る前に用意してくれた痛み止めを飲んで横になった。
薬が効くまでの間は、痛みで体中から汗が噴き出した。
門衛のうち1人はアクラムだ。
さすがにアクラムは私に気づいたみたいで、元々大きい目をさらに真ん丸に見開いて私を見ていた。
私は目力を込めて、口の前で人差し指を立てた。
後宮の部屋に籠っているはずの女が、正面から帰って来た。
アクラムも驚くはずだ。
それにしても、あんなに驚いていることを顔に出しちゃうなんて。
アクラムは腹芸のできないタイプのようで、私はなんだか安心した。
私の身柄はアクラムに引き渡された。
私は自分の部屋の2つ手前の部屋を選び、埃だらけの部屋の寝室をアクラムと掃除した。
「どういうことですか?」
アクラムは今まで見たことのない怖い顔をしている。
「えっと、えーっと、あのね、私ってリナレイから来たでしょ?リナレイでは女性が外に遊びに行くのは普通なの。それでカーン王子の後宮にいた時は、カーン王子が特別に私が外に遊びに行けるように抜け道を教えてくれていたのよ。でね、調べたら私の部屋にも抜け道があったの。だからちょっと遊びに行こうかなーって。そしたら、なんか危ないことに巻き込まれちゃって火傷しちゃった。そんな感じ」
「火傷なさったんですか?大丈夫なんですか?傷があっても大丈夫ですよ。スワイマン殿下はジェーン様を愛し続けてくださいます」
アクラムは私の体を心配してくれて、慰めてくれた。
アクラムは傷を私が気に病んでるだろうと思って、私が想像していなかったところまでフォローしてくれている。
なんだかすごい。
「リナレイの慣習で部屋に籠るとかいってたのは嘘ですか?」
「そんな慣習、リナレイにはないわね」
アクラムは私をにらんだ。
「まぁまぁ。機嫌を直してよ、アクラム。私にはアクラムしかいないんだから。ね?お願い協力して」
私はアクラムを拝んだ。
下手に出てアクラムの機嫌をとろうという作戦だ。
「正直に報告します」
アクラムはまじめな顔をして、部屋から出て行こうとしている。
私は慌ててアクラムを止めた。
「ダメ、ダメに決まってる。考えてみて。スワイマン殿下の愛する妻が後宮から逃げた。どうなる?」
「さぁ。逃げただけなら、その時の殿下の気分により許されるかもしれません。スワイマン殿下はジェーン様をそれは愛していらっしゃるようですから。でももし外で浮気していたら妻は死罪でしょう」
「浮気してないから、本当」
アクラムは、私の言った手紙の内容を信じているらしい。
実際は一つも愛されていない。
だからスワイマン殿下は私が浮気しようと、どうしようとどうでもいいと思ってそうだけど。
そのことは言わないでおこう。
「じゃあ、心底ほれ込んだ妻が逃亡したのに気付かなかった、後宮の侍従はどうなるかしら?」
アクラムの顔色が変わった。
「ね?こんなこと報告したって、お互いに損するだけだし、皆の時間を使わせることになる。問題になったら、それに対応するために人が動かなくちゃいけなくなるわけだから。黙ってるのが一番いいの。分かる?私は絶対に言わない。アクラムが無かったことにしてくれれば、すべて丸く治まって今までのままいられるのよ。どう?」
「分かりました。でも食事はどうするのですか?2人分届けられるんですよ」
アクラムは私の説得を聞き入れてくれた。
「そうね。アクラム家族いる?家族に持って帰るのはどう?アクラムが食べてもいいし。食事はどっちも私に届けられるわけだから、私がアクラムにあげても問題ないはず」
「それはちょっと…。量が多いと言って、少なくしてもらっては?」
「そうね。そうしましょう。リナレイの私は部屋に籠ってる設定だから食事を少なくしてほしいと言っても不自然ではないし。私も怪我人だもんね。じゃあ、それで。そうだ、あと洗濯物を毎日出さないと怪しまれるから、その辺も適当によろしくね!」
「分かりました」
アクラムはリネン類と着替えを取りに行き、私はベッドの用意ができると、その日は早く休んだ。
夜、私は肩の痛みで飛び起きた。
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アクラムが寝る前に用意してくれた痛み止めを飲んで横になった。
薬が効くまでの間は、痛みで体中から汗が噴き出した。
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