後宮に入りましたが、旦那さんが来ないので恋人を探します

国湖奈津

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「そういうことだったんですか。事情は分かりました。でも最初に王宮でさらわれた時、猿ぐつわされて拘束されて、すごく怖かったんですよ!そのあとは楽しく暮らさせてもらいましたけど、あの時の事だけは謝ってください」

私はすごく怖かった、あの日のことを思い出していた。
あの日、私はリナレイとタモハンの間に最悪の出来事が起きたのでは?と本当に怖かったのだ。

「すまなかった。私の部下への命じ方が悪かった。これからすべて償うつもりだ。許してほしい」
スワイマン殿下は真摯に謝ってくれた。

スワイマン殿下と一度も接することなく謝られても、私は許せなかったと思う。
でも私に優しくしてくれたタバールさんとしてのスワイマン殿下を私は知っている。
それに何といっても、私にとって命の恩人だ。

だから、申し訳なさそうな顔をして謝るスワイマン殿下を可愛く思ったし、許せてしまった。

「そうしたら、どうしましょう?帰りますか?」
最初に想定していたよりも、かなり穏やかな対面になったと思う。

怒鳴られて殴られるところまで想像していたから、それに比べたら今は天国だ。

「待ってくれ。そのネックレスをプレゼントした日、私はジェニファーにプロポーズしようと思っていた。ジェニファーがいなくなって、ずっと捜してたんだ」

スワイマン殿下は言って、私の首にかかっているピンクダイヤのネックレスを見た。
私の首には、ピンクダイヤのネックレスと、抜け道の鍵のネックレスがかかっている。

「プロポーズですか?」
確かにこのピンクダイヤは王族がプロポーズの品にしてもおかしくない大きさと輝きだ。

「そうだ。君は聡明で、優しく美しい。君と接して理想の女性だと思った。しかしあの日、君は妻をないがしろにする男には嫁げないと言った。それで私は後宮に入れたきり忘れていたジェーン・デューバーに謝罪し和解してから、ジェニファーに改めて求婚しようと思ったんだ。でもジェニファーもジェーンも君だ。だから、どうだろう。その、私と結婚してくれないか?生涯君だけを愛すると誓う」

私の心の中にじんわりと温かいものが満ちていくのが分かった。
その温かかな物は私の心から溢れ、涙となって頬に流れた。

「本当ですか?私も、タバールさんがスワイマン殿下だと知らずに、あなたのことを好きになっていました。恋人になってくれたらなぁって思ってました。勇敢でカッコよくて、優しいスワイマン殿下が好きです。でも奥さんがいるって言ってたから、あきらめようって思ってたんです。だから、すごくうれしいです」

私が言うと、スワイマン殿下はゆっくり私の頬に手を伸ばし、指で涙をぬぐってくれた。

スワイマン殿下は私の傷に触れないよう私を引き寄せ、ゆっくりと私に口付けた。
初めての口付けを、好きな人とできて私は幸せに包まれた。

長い口付けが終わり、私は息を切らしながらもスワイマン殿下と見つめ合い笑いあった。
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