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第四話 悪魔の誘い
しおりを挟む耳をつんざくような激しい泣き声に、私もアンジュレアも驚く。
しかし、こんなことなど育児では茶飯事だ。
きちんと向きっていかなければならなーー
「うるさいわね! レオン、いい加減にして頂戴! 私は今から舞踏会に行かなければならないのよ!?」
アンジュレアがレオンの泣き声にも勝る声で怒鳴った。
目を見開き、怒りをあらわにしたアンジュレアは更に言葉を続ける。
「早く黙って! うるさい! うるさい!」
「うるさいのは貴女よ」
「何を言っているの! この子が泣き止まないから私は怒っているのよ! 正当な育児よ!!」
「母親となる者は、子が泣いたくらいで怒鳴らないわ」
頭に針を刺されるくらいの勢いで喚き立てるアンジュレア。
彼女が私の部屋で叫べば、自然と悪い噂がたってしまう。
それに、ここまでアンジュレアに母親の責任感がないとは思わなかった。
「うるさいわね! いいから黙りなさい!」
アンジュレアはなお泣き叫ぶレオンの口を塞いだ。
レオンは苦しそうに嗚咽を漏らす。
「一旦静かにしてください、アンジュレア。王太子殿下の子に乱暴を働くことは不敬罪です。この部屋からご退出を願います」
「っ!」
今だからこそ使える、王太子妃の権限。
身分が上の者は、下の者に立ち退きを命じることができる。
ここでレオンとアンジュレアを一緒にさせることは危険だ。
だが最終的にアンジュレアは舞踏会に行き、私とレオンは離れ離れになる。
結果は同じなのだから、私が激昂して状況を悪くするよりよっぽどマシであろう。
それにーー復讐を果たせればレオンが帰ってくる可能性も高い。
それまでの辛抱だ。
「・・・・・・分かりました。・・・・・・王太子妃様に一つだけお願いがございます。
今宵の舞踏会に来ていただけないでしょうか? お見せしたいものがありますので」
ようやく泣き止んだレオンを再び抱きかかえ、アンジュレアは軽く頭を下げる。
先程までとは随分と違う清楚なる態度。
「いいでしょう、では準備をして参加しますね」
「ありがとうございます。心から感謝いたします」
そう言ってアンジュレアは部屋を出ていった。
王侯貴族たちの華やかな行事、舞踏会。
貴婦人たちの情報を手に入れるチャンスでもある。
もしかすると誰かがアンジュレアの情報を知っているかもしれない。
私は情報収集のため、月に一度の舞踏会に参加することを決めたのであった。
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