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エピローグ
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「ずっと待ってたのに来てくれないから、
来ちゃった」
彼女の前に立ち、肩を竦める。
彼女は僕を見上げ、尚も首を振った。
「……出会わなければ良かったって、思っ
たの」
涙に揺れる声が、僕の胸を締め付ける。
「あの時、川で死んでしまえば良かった、
って。そうすれば、あなたが傷つくことはな
かっ……」
最後まで言わせたくなかった。
僕は彼女を抱き寄せ、髪に頬を押し付ける。
「やっぱり、苦しんでた」
絞り出すように言えば、腕の中で細い肩が
小刻みに震える。彼女の涙に、その苦しみに
息を吐くと、僕は抱き締める腕に力を込めた。
「佐奈は、何ひとつ悪くない。だから自分
を責めないで。お願いだから、もう苦しまな
いで」
――『罪』は人の心にある。
だから、誰が責めようと、誰が許そうと、
自分を許せない限り永遠に、『罪』に苦しみ
続けなければならないのだ。
それでも、彼女が自分を許せないという
なら、僕も一緒にその『罪』を背負おう。
たとえ半分でも、心にある『罪』が軽くな
れば、きっと、彼女はまた笑みを取り戻して
くれるだろうから。
僕は彼女の背を母のようにやさしく擦った。
「僕には佐奈が必要なんだ。佐奈の笑顔が
傍にないと生きていけない。だから、僕のた
めに傍にいて欲しい。そして、笑って欲しい。
この手で救った命が輝く姿を、ずっと見てい
たいから」
嗚咽と共に、腕の中の彼女が小さく頷く。
躊躇うように、けれど、しっかりと僕の背
に細い腕が回された。
やっと彼女の心ごと抱き締めることが出来
た僕は、徐に視線を上げる。すると視線の先、
店のガラス戸の向こうで、武弘が笑っていた。
『よくやったな、とべ』
武弘の唇がそう動いた気がして、僕は親友
に笑みを返す。ずっと会いたいと願いながら、
会えなかった武弘の笑みに、凍っていた心の
一部が瞬く間に溶けていった。武弘はひらり
と手を振ると歩く人波に交ざり消えてしまう。
それ以降、二度と僕の手にあの感触が戻る
ことはなかった。
=完=
※この物語を読了くださり、誠にありがとう
ございます。読者様とのご縁をいただけまし
たこと、心より感謝致します。 橘 弥久莉
来ちゃった」
彼女の前に立ち、肩を竦める。
彼女は僕を見上げ、尚も首を振った。
「……出会わなければ良かったって、思っ
たの」
涙に揺れる声が、僕の胸を締め付ける。
「あの時、川で死んでしまえば良かった、
って。そうすれば、あなたが傷つくことはな
かっ……」
最後まで言わせたくなかった。
僕は彼女を抱き寄せ、髪に頬を押し付ける。
「やっぱり、苦しんでた」
絞り出すように言えば、腕の中で細い肩が
小刻みに震える。彼女の涙に、その苦しみに
息を吐くと、僕は抱き締める腕に力を込めた。
「佐奈は、何ひとつ悪くない。だから自分
を責めないで。お願いだから、もう苦しまな
いで」
――『罪』は人の心にある。
だから、誰が責めようと、誰が許そうと、
自分を許せない限り永遠に、『罪』に苦しみ
続けなければならないのだ。
それでも、彼女が自分を許せないという
なら、僕も一緒にその『罪』を背負おう。
たとえ半分でも、心にある『罪』が軽くな
れば、きっと、彼女はまた笑みを取り戻して
くれるだろうから。
僕は彼女の背を母のようにやさしく擦った。
「僕には佐奈が必要なんだ。佐奈の笑顔が
傍にないと生きていけない。だから、僕のた
めに傍にいて欲しい。そして、笑って欲しい。
この手で救った命が輝く姿を、ずっと見てい
たいから」
嗚咽と共に、腕の中の彼女が小さく頷く。
躊躇うように、けれど、しっかりと僕の背
に細い腕が回された。
やっと彼女の心ごと抱き締めることが出来
た僕は、徐に視線を上げる。すると視線の先、
店のガラス戸の向こうで、武弘が笑っていた。
『よくやったな、とべ』
武弘の唇がそう動いた気がして、僕は親友
に笑みを返す。ずっと会いたいと願いながら、
会えなかった武弘の笑みに、凍っていた心の
一部が瞬く間に溶けていった。武弘はひらり
と手を振ると歩く人波に交ざり消えてしまう。
それ以降、二度と僕の手にあの感触が戻る
ことはなかった。
=完=
※この物語を読了くださり、誠にありがとう
ございます。読者様とのご縁をいただけまし
たこと、心より感謝致します。 橘 弥久莉
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桜花音様
ああ、もう。
嬉しすぎて私の方がじんわりしてしまいました
(´இ□இ`。)°
物語のあとがきに添えたくなるような素晴らしい
感想を(しかも二通も!)本当にありがとうござい
ます!!!
「人を救うのは人」。なんという素敵な言葉
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掴めたのかも知れません。
マサと岬さんのエピソード、涙してくださったんですね😭実は私も書きながらほろりとしてました(苦笑)作者が泣ける作品でなければ読者様に泣いて貰えないと思っているので、じんわりシーンを
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そして「加害者家族は罪を犯していない罪人」という佐奈の言葉。これは参考文献を読み込んでいる時に私が感じたことで、加害者家族という立場に追いやられた彼らの苦しみを言葉に表現出来ればと思い表紙に持ってきました。
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痛感しました。ですが成功したようで良かった!
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です。
桜花音様とのご縁をいただけたことに心の
底から感謝しています!仲間って本当に有難い
ですね。またいつか作品を公開した際は
よろしくお願い致します(⋆ᴗ͈ˬᴗ͈)
心に残る感想をありがとうございました!
完結を待って一気読みしました。
124エピローグの当麻の母親に想いをこめて発した言葉が
とてもとても心に染みました。
犯罪だけでなく日常にある悲しみや苦しみにも当てはまるのではとおもいました。
強く、しなやかに物事を受け止めることができる親で有りたいと。
子供と同じ年代の犯罪や事故をニュースで見ると被害者の親、加害者の親として想像することはよくあります。他人事ではないと。
でも、想像よりも現実は苦しいですよね。物語を読んで短慮であったと痛感しました。
じわじわ色んなこと感じます。
今回はとてもメッセージ性の強い物語ですね。橘さんの作品の広さに感動です!
天鈴様
この物語に込めたメッセージを掬い上げ、
そしてこんな嬉しい感想まで……本当に
ありがとうございます。
今回はかなり重いテーマだったので、
読者様の反応が心配だったのですが
加害者家族の苦しみ、被害者遺族の
悲しみを感じていただけて本当に感激
です(T^T)
犯罪を犯した者が未成年だった場合、
加害者の親は特にその責めを世間から
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ありがとうございました!!
つなべ夏様
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