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【月が輝く理由】
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家へ帰ってベッドに入ると、熱は派手に
上がっていた。躰中の関節がギシギシと軋んで
痛い。体温計の数字は39.6度で音を鳴らしたが、
すぐに40度を超えてしまいそうな感覚だった。
帰りがけ、コンビニで買った鍋焼きうどんは、
結局、冷蔵庫に押し込んだまま食べていない。
熱を出すのは中学以来だから、看病をしてくれる
人が誰もいないのは、初めてだった。
------こんな時、弓月がいてくれれば。
熱に浮かされた頭で、そんなことを考えて
苦笑いする。
もう、何も知らずに笑っていられた時間は、
二度と戻らないのだ。
僕は鼻先まで布団をかぶって、背中を丸めた。
しだいに意識が闇に包まれていく。
このまま、永遠に目覚めなければ楽になれる
かもしれない……そんなことを思って、また
少し泣いた。
ピンポン………ピンポン………
深く沈んだ意識の中で、聴き慣れない音がして、
僕はぼんやりと目を開けた。
部屋の明かりが眩しくて、顔を顰める。
いつの間にか眠っていたようだ、と、壁の時計に
目をやった時だった。今度は鮮明にその音が聴こえた。
……ピンポン、ピンポン………
滅多に鳴ることのない、この部屋のインターホン
が鳴っている。そう気付いた僕は、ぱっと飛び起き、
玄関へと急いだ。慌てて鍵を開ける。
ドアの向こうに立つ人物が誰なのか……
確認もせず勢いよくドアを開けた僕は、
目の前に立つその人を見て、言葉を失った。
「久しぶりだね。突然来ちゃって悪いんだけど、
いま、いいかな?」
白髪交じりの頭に手をやりながら、目尻に深い皺を
刻み微笑うその男は、最後まで、僕の“父親”に
ならなかったその人、高田弘之(たかだ ひろゆき)
だった。
「……どうぞ」
具合が悪いから、と、追い返すこともできず、
かと言って、愛想よく迎え入れることもできず……
僕は厚手のカーディガンを引っ掛け、ケトルで
湯を沸かすと、彼にインスタントコーヒーを出した。
怠い躰をベッドの背に預けて座る。テーブルを挟んで、
向かい側にどっか、と胡坐をかいて座った高田は、
「ありがとう」
と、白い歯を見せてマグカップを手に取った。
「和くん、もしかして寝てたのか?
顔色悪いけど、熱でもあるんじゃ……」
飛び起きたままの乱れたベッドと、僕のパジャマ姿
を見ながら、高田の表情が心配げなものに変わる。
僕はテーブルに視線を落としたまま、
いえ、と首を振った。
「大丈夫です。さっき、薬飲んだから」
「やっぱり、具合が悪いのか。起こしちゃって
悪かったね。僕は出直すから、早く休みない。
ああ、その前に、何か食べるものでも買って
こようか?そこのコンビニ行ってくるから、
何か必要なものがあったら言いなさい」
尻のポケットから財布を取り出しながら、
高田が立ち上がる。僕は、彼の顔を見上げると、
僅かに声に苛立ちを滲ませて言った。
「必要なものは帰りに買ってきたから、ありません。
それより、早く用件を話してくれませんか?」
上がっていた。躰中の関節がギシギシと軋んで
痛い。体温計の数字は39.6度で音を鳴らしたが、
すぐに40度を超えてしまいそうな感覚だった。
帰りがけ、コンビニで買った鍋焼きうどんは、
結局、冷蔵庫に押し込んだまま食べていない。
熱を出すのは中学以来だから、看病をしてくれる
人が誰もいないのは、初めてだった。
------こんな時、弓月がいてくれれば。
熱に浮かされた頭で、そんなことを考えて
苦笑いする。
もう、何も知らずに笑っていられた時間は、
二度と戻らないのだ。
僕は鼻先まで布団をかぶって、背中を丸めた。
しだいに意識が闇に包まれていく。
このまま、永遠に目覚めなければ楽になれる
かもしれない……そんなことを思って、また
少し泣いた。
ピンポン………ピンポン………
深く沈んだ意識の中で、聴き慣れない音がして、
僕はぼんやりと目を開けた。
部屋の明かりが眩しくて、顔を顰める。
いつの間にか眠っていたようだ、と、壁の時計に
目をやった時だった。今度は鮮明にその音が聴こえた。
……ピンポン、ピンポン………
滅多に鳴ることのない、この部屋のインターホン
が鳴っている。そう気付いた僕は、ぱっと飛び起き、
玄関へと急いだ。慌てて鍵を開ける。
ドアの向こうに立つ人物が誰なのか……
確認もせず勢いよくドアを開けた僕は、
目の前に立つその人を見て、言葉を失った。
「久しぶりだね。突然来ちゃって悪いんだけど、
いま、いいかな?」
白髪交じりの頭に手をやりながら、目尻に深い皺を
刻み微笑うその男は、最後まで、僕の“父親”に
ならなかったその人、高田弘之(たかだ ひろゆき)
だった。
「……どうぞ」
具合が悪いから、と、追い返すこともできず、
かと言って、愛想よく迎え入れることもできず……
僕は厚手のカーディガンを引っ掛け、ケトルで
湯を沸かすと、彼にインスタントコーヒーを出した。
怠い躰をベッドの背に預けて座る。テーブルを挟んで、
向かい側にどっか、と胡坐をかいて座った高田は、
「ありがとう」
と、白い歯を見せてマグカップを手に取った。
「和くん、もしかして寝てたのか?
顔色悪いけど、熱でもあるんじゃ……」
飛び起きたままの乱れたベッドと、僕のパジャマ姿
を見ながら、高田の表情が心配げなものに変わる。
僕はテーブルに視線を落としたまま、
いえ、と首を振った。
「大丈夫です。さっき、薬飲んだから」
「やっぱり、具合が悪いのか。起こしちゃって
悪かったね。僕は出直すから、早く休みない。
ああ、その前に、何か食べるものでも買って
こようか?そこのコンビニ行ってくるから、
何か必要なものがあったら言いなさい」
尻のポケットから財布を取り出しながら、
高田が立ち上がる。僕は、彼の顔を見上げると、
僅かに声に苛立ちを滲ませて言った。
「必要なものは帰りに買ってきたから、ありません。
それより、早く用件を話してくれませんか?」
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