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第七章:絡みつく孤独
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「……あれっ?」
横断歩道を駆け抜け、三叉路を左側に進ん
だ満留は、息を切らしながらきょろきょろと
辺りを見回した。
確か、満の家はこの辺りにあったはずだ。
なのに、満留の記憶違いだったのか焼杉と
黄色い塗り壁の日本家屋は見当たらず……
代わりに満の家だと思っていた場所には大き
めのコインパーキングがある。
もしかして、勘違いしてしまったのだろう
かと、道を戻り三叉路を右側に進んでみる。
が、その道を突き当りまで走ってみても
それらしき家は見当たらず、満留は首を傾げ
ながらもう一度ぐるりと回って、三叉路の左
の道を突き当たるまで走った。
けれどやはり、焼杉と塗り壁の二色の家は
見当たらない。
「……どういうことなの???」
満留は額に滲む汗を手の甲で拭いながら、
煌々と光を放つ、コインパーキングの看板を
見上げた。
まさか、この一週間の間に彼は引っ越して
しまったのだろうか?仮にそうだったとして
も、たった一週間の間に家を取り壊し、駐車
場に作り替えるなんて絶対に不可能だ。
満留はわけがわからず、呆然とその場に立
ち尽くす。あるはずの家がないなんて、まる
で狐につままれたようで気味が悪く、心臓は
ばくばくと激しく鳴っている。
「……どうして、なんでないの?」
満留はそう呟くと、もう一度辺りを見回し
てみた。けれど暗い夜道に通行人の姿はなく、
誰かに尋ねることも出来ない。仕方なく走っ
てきた道を戻り、大通りを渡り、あの夜、満
と入ったコンビニに向かう。
そうして明るい店の前で立ち止まった満留
は、その瞬間に、おや?と眉根を寄せた。
確か、コンビニの看板は青色で店員の制服
も青と白のストライプではなかったか?
なのにガラス越しに店内を見れば、緑色の
制服を着た店員が二人、レジの中で話をして
いて、明るい光を放つ看板は赤と白の二色に
変わっている。
満留はそのことを不思議に思いながらも
自動ドアをくぐり、そろりと店内に足を踏み
入れた。適当に冷蔵庫から飲み物を取り、そ
れを手にレジへと向かう。幸い客足は少なく、
レジに他の客は並んでいなかった。
満留はおずおずとレジ台に緑茶のペット
ボトルを差し出した。
何も言わずに茶髪の男性店員が『ピッ』と
バーコードリーダーをかざす。カウンターの
中にはもう一人年配の男性店員がいて、おで
んを仕込んでいる。
「百五十八円です。シールでいいですか?」
無表情でそう言ったかと思うと、碌に返事
も待たずに店員はペタリとシールを貼り付けた。
満留は一瞬、どうしようかと迷ったが思い
切って口を開いた。
「すみません、ちょっとお尋ねしたいこと
があるんですけど」
「はい?」
財布から小銭を出しながらそう言った満留
に、若い男性店員がちろりと視線だけを投げ
かける。満留は混乱したままの頭の中を必死
に整理すると、普通に道を尋ねる客の体で話
した。
横断歩道を駆け抜け、三叉路を左側に進ん
だ満留は、息を切らしながらきょろきょろと
辺りを見回した。
確か、満の家はこの辺りにあったはずだ。
なのに、満留の記憶違いだったのか焼杉と
黄色い塗り壁の日本家屋は見当たらず……
代わりに満の家だと思っていた場所には大き
めのコインパーキングがある。
もしかして、勘違いしてしまったのだろう
かと、道を戻り三叉路を右側に進んでみる。
が、その道を突き当りまで走ってみても
それらしき家は見当たらず、満留は首を傾げ
ながらもう一度ぐるりと回って、三叉路の左
の道を突き当たるまで走った。
けれどやはり、焼杉と塗り壁の二色の家は
見当たらない。
「……どういうことなの???」
満留は額に滲む汗を手の甲で拭いながら、
煌々と光を放つ、コインパーキングの看板を
見上げた。
まさか、この一週間の間に彼は引っ越して
しまったのだろうか?仮にそうだったとして
も、たった一週間の間に家を取り壊し、駐車
場に作り替えるなんて絶対に不可能だ。
満留はわけがわからず、呆然とその場に立
ち尽くす。あるはずの家がないなんて、まる
で狐につままれたようで気味が悪く、心臓は
ばくばくと激しく鳴っている。
「……どうして、なんでないの?」
満留はそう呟くと、もう一度辺りを見回し
てみた。けれど暗い夜道に通行人の姿はなく、
誰かに尋ねることも出来ない。仕方なく走っ
てきた道を戻り、大通りを渡り、あの夜、満
と入ったコンビニに向かう。
そうして明るい店の前で立ち止まった満留
は、その瞬間に、おや?と眉根を寄せた。
確か、コンビニの看板は青色で店員の制服
も青と白のストライプではなかったか?
なのにガラス越しに店内を見れば、緑色の
制服を着た店員が二人、レジの中で話をして
いて、明るい光を放つ看板は赤と白の二色に
変わっている。
満留はそのことを不思議に思いながらも
自動ドアをくぐり、そろりと店内に足を踏み
入れた。適当に冷蔵庫から飲み物を取り、そ
れを手にレジへと向かう。幸い客足は少なく、
レジに他の客は並んでいなかった。
満留はおずおずとレジ台に緑茶のペット
ボトルを差し出した。
何も言わずに茶髪の男性店員が『ピッ』と
バーコードリーダーをかざす。カウンターの
中にはもう一人年配の男性店員がいて、おで
んを仕込んでいる。
「百五十八円です。シールでいいですか?」
無表情でそう言ったかと思うと、碌に返事
も待たずに店員はペタリとシールを貼り付けた。
満留は一瞬、どうしようかと迷ったが思い
切って口を開いた。
「すみません、ちょっとお尋ねしたいこと
があるんですけど」
「はい?」
財布から小銭を出しながらそう言った満留
に、若い男性店員がちろりと視線だけを投げ
かける。満留は混乱したままの頭の中を必死
に整理すると、普通に道を尋ねる客の体で話
した。
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