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第七章:絡みつく孤独
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「大通りの信号を渡ってすぐの三叉路を左
に曲がったところに、コインパーキングがあ
りますよね?その辺りに、焼杉と黄色い壁の
お宅があったと思うんですけど……。ご存あ
りませんか?」
まさか、道ではなく民家について訊かれる
とは思っていなかったのだろう。「は?」と、
一瞬間の抜けた声を発すると、店員は首を傾
げ苦笑いした。
「いや、ちょっとわかんないですねぇ。僕、
この辺に住んでるわけじゃないんで」
「……ですよね」
至極当たり前な回答に、満留は落胆する。
そもそも、一週間前までそこにあった家が
突然なくなったという奇怪な出来事に、満留
自身が大混乱しているのだ。もし、その事実
を口にしてしまえば『頭のおかしな客』とし
て店から追い出されてしまうに違いない。
となると、これ以上訊けることは何もない。
「すみません、ありがとうございました」
満留はトートバッグにペットボトルをしま
うと、諦めたようにそう言って踵を返そうと
した。その時、トングでおでん鍋にはんぺん
を入れていた定員が「あー」と、声を発した。
「あったかも知れないですね、そんな家が」
そのひと言に、「ホントですか!?」と声を
上げ、満留は男性店員の顔を食い入るように
見つめる。すると、年配の店員は「ふむ」と
鼻を鳴らしておでんを入れる手を止めると、
複雑な顔をして言った。
「黒と黄色い壁の、大きなお宅でしょう?」
「はい、そうです!とてもお洒落な」
「その家ね……ずいぶん前に火事が起きて、
焼けちゃいましたよ。何年前だったかなぁ。
確か死人も出たとかで、結構大きなニュース
になってたから記憶に残ってるんだけど」
がん、と頭を殴られたように視界が揺れて、
満留はカウンターに手をついてしまう。人間、
信じられないことを耳にすると思考が停止し
てしまうらしく、『火事』と『死人』の二つ
の単語だけが頭の中を飛び交っている。満留
は身体の芯からくる震えに、カタカタと奥歯
を鳴らしながら、小さく首を横に振った。
「そんな、まさか……だって私っ……」
言葉にならない言葉が口から洩れて、店員
が顔を見合わせる。酷く動揺しているその様
を見て、困っているようだった。
呆然とその場に立ち尽くしてしまった満留
に、眉間のシワを深め年配の男性店員が言う。
「僕はこの辺りに二十年以上住んでるから、
火事があって人が亡くなったのは間違いない
ですよ。しばらく焼けたままの家が残されて
たんだけど、パーキングに変わったのも十年、
いや、十二、三年くらい前じゃないかなぁ?」
「やっぱ、曰くつきの土地ってコインパー
キングになりやすいって話は本当なんっスね」
神妙な顔をして話した店員に、口元を歪め
ながら若い店員が茶々を入れる。もっとも、
満留の耳にその言葉までは届かなかったけれ
ど……。
に曲がったところに、コインパーキングがあ
りますよね?その辺りに、焼杉と黄色い壁の
お宅があったと思うんですけど……。ご存あ
りませんか?」
まさか、道ではなく民家について訊かれる
とは思っていなかったのだろう。「は?」と、
一瞬間の抜けた声を発すると、店員は首を傾
げ苦笑いした。
「いや、ちょっとわかんないですねぇ。僕、
この辺に住んでるわけじゃないんで」
「……ですよね」
至極当たり前な回答に、満留は落胆する。
そもそも、一週間前までそこにあった家が
突然なくなったという奇怪な出来事に、満留
自身が大混乱しているのだ。もし、その事実
を口にしてしまえば『頭のおかしな客』とし
て店から追い出されてしまうに違いない。
となると、これ以上訊けることは何もない。
「すみません、ありがとうございました」
満留はトートバッグにペットボトルをしま
うと、諦めたようにそう言って踵を返そうと
した。その時、トングでおでん鍋にはんぺん
を入れていた定員が「あー」と、声を発した。
「あったかも知れないですね、そんな家が」
そのひと言に、「ホントですか!?」と声を
上げ、満留は男性店員の顔を食い入るように
見つめる。すると、年配の店員は「ふむ」と
鼻を鳴らしておでんを入れる手を止めると、
複雑な顔をして言った。
「黒と黄色い壁の、大きなお宅でしょう?」
「はい、そうです!とてもお洒落な」
「その家ね……ずいぶん前に火事が起きて、
焼けちゃいましたよ。何年前だったかなぁ。
確か死人も出たとかで、結構大きなニュース
になってたから記憶に残ってるんだけど」
がん、と頭を殴られたように視界が揺れて、
満留はカウンターに手をついてしまう。人間、
信じられないことを耳にすると思考が停止し
てしまうらしく、『火事』と『死人』の二つ
の単語だけが頭の中を飛び交っている。満留
は身体の芯からくる震えに、カタカタと奥歯
を鳴らしながら、小さく首を横に振った。
「そんな、まさか……だって私っ……」
言葉にならない言葉が口から洩れて、店員
が顔を見合わせる。酷く動揺しているその様
を見て、困っているようだった。
呆然とその場に立ち尽くしてしまった満留
に、眉間のシワを深め年配の男性店員が言う。
「僕はこの辺りに二十年以上住んでるから、
火事があって人が亡くなったのは間違いない
ですよ。しばらく焼けたままの家が残されて
たんだけど、パーキングに変わったのも十年、
いや、十二、三年くらい前じゃないかなぁ?」
「やっぱ、曰くつきの土地ってコインパー
キングになりやすいって話は本当なんっスね」
神妙な顔をして話した店員に、口元を歪め
ながら若い店員が茶々を入れる。もっとも、
満留の耳にその言葉までは届かなかったけれ
ど……。
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