教師失格

ひとちゃん

文字の大きさ
13 / 18
新学期

胸が高鳴るその瞬間は

しおりを挟む
【着いた。南口のロータリーに車を停めた】

渡辺先生からラインが来た。

そう、今日はゴールデンウィーク初日。
渡辺先生とディズニーランドへ行くことになりました。

【急いで向かいます!】

渡辺先生が到着したのはまさかの予定より15分早い。
最寄りが巣鴨って言ったのまずかったかな…。
実際のところ、家の最寄りは都営三田線の新板橋駅だ。
一本早い電車に乗れば待たせず済んだけど…予定時刻の9時に合わせて来ちゃったから待たせちゃうな。

無事に巣鴨駅に着き、南口のロータリーへ向かった。
すると、渡辺先生らしき姿があった。

「待たせちゃってすみません!」
「いいんだ。俺が早く着きすぎた」

渡辺先生は「ほら」と助手席のドアを開け、私を座らせた。

「さて、ゴールデンウィーク初日だし、チケット予約してあったとはいえ混むの確実だと思ってくれな」
「もちろんですよ、ゴールデンウィークは確実に混みますよね。渡辺先生は混むのとか大丈夫なんですか?」
「まあ別に…今日は真綾もいるしな。普通に楽しめる」
「わ、渡辺先生…」

うぅっ、そんなふうに言われると胸が高鳴るよ…。

「さて、舞浜向かうぞ。首都高乗るから酔ったら言ってくれよ」

そう言い、渡辺先生は酔い止めを渡してくれた。
私、特に酔わないけど…その気遣いに渡辺先生の優しさが伝わる。




「渡辺先生!何から乗りますか?」

久しぶりのディズニーランドで私はとても気分が良い。
それに、今日は渡辺先生と一緒。
こんな幸せあっていいのか…としみじみと思う。

「真綾は何が乗りたい?」
「渡辺先生が乗りたいものがいいです!久しぶりのディズニーランドですよね?」
「じゃあ、ジェットコースターで」

…ジェットコースターか。
少し苦手だけど、渡辺先生が乗りたいなら私も乗らないと。
ジェットコースターと決め、渡辺先生と乗り場へと向かった。

「お前ジェットコースター乗れんのか?」
「ど、どういうことですか」
「いや、そのまんま。お前、顔にジェットコースター苦手ですって書いてある」

ぎくり。バレちゃったか。

「い、いいんです!怖いのは一瞬ですから!それに渡辺先生が乗りたいものを乗りたいんです私は!!」
「相変わらず強がるな…まぁ無理だと思ったら退出しような」

渡辺先生は私の頭をぽんぽんと撫でた。
…ほんとにこの仕草が好き。

30分ほど並んだら、とうとう自分達の番が来た。

「無理すんなよ。本気で大丈夫か?」
「だ!大丈夫ですよ!!」

最後の最後まで心配してくれた。

いざ発車すると、猛スピードで回転し始めた。

「ひっ、ひぃっっっ」

隣にいる渡辺先生の顔を見ると、今まで見たことのない…まるで無邪気な少年のような笑顔だった。

これが見れただけで私は満足だ…けど、早い!!何これ!!

「わ、渡辺先生!これ早すぎます!!」
「楽しいじゃないか、ほら、怖いなら捕まってろ!」

私は終わるまで渡辺先生にしがみついた。


「…無理させたか」
「い、いえ!私は渡辺先生の笑顔が見れたのですっごく嬉しいんです…!だけど怖かったです!」
「ふ、ふん」

私の言葉で渡辺先生は少しにやけていた。

「ほら、次乗るぞ。今度はゆったりしたものにしよう」

渡辺先生は私の手を繋ぎ、リードしてくれた。

「だいぶ暗くなっちゃいましたね」

時刻は8時半、閉園まで30分。
ジェットコースターはもちろん、コーヒーカップにシューティング系のアトラクションまで、たっぷり遊んで、一緒に食べ歩きもした。
…すごく幸せだなぁ。

「そろそろ閉園だな。今日は本当にありがとう」
「いえいえ!私すっごく楽しかったです。久しぶりにこんな楽しいの…ほんとに久しぶりで…その…」
「あぁ、俺はその倍くらい楽しかったぞ」

渡辺先生は口角を少し上げ、私の頭をわしゃわしゃと撫でた。

「さて、車に戻るぞ。送ってく」
「あっ、巣鴨駅で!」

巣鴨駅じゃないとまずい。本当に。

「どうした?この時間だぞ、家まで送る」
「だ、ダメなんです!」

渡辺先生は不思議そうに私の顔を見る。

「なんでダメなんだ。危ない。なんか理由でもあるのか?」
「え、えっと…」

…話すしかない。

「私、本当は都営三田線の新板橋駅が最寄りなんです。ただ…私彼氏と同棲してて」
「…なるほど。そういうことだったのか」

渡辺先生は少しだけ、悲しげな顔をした。
どうしよう。さっきまで無邪気な笑顔を見れたのに…こんな顔をさせてしまって。

(同棲なんかしなきゃよかった)

ふと、そんなふうに思ってしまった。
私、本当に…最低だ。

「真綾、そしたらあのロータリーまで送る。こんなこと聞いて…申し訳なかった」

駐車場にいるのに…渡辺先生は私をぎゅっと包み込むかのよう、抱きしめた。

…優しい、本当に。
この優しさに私は徐々に、6年前のように…あの感情が湧いて。
優しい金木犀の香りに包まれたあの私の部屋、初めて抱きしめた時の香り。
ずっとこの香り……。

再び、渡辺先生を本当に好きになってしまったんだ。


「それじゃ、向かうぞ」

私を助手席に乗せ、首都高を通って巣鴨駅に向かった。



「本当に気をつけて帰るんだぞ」
「わかってます。本当にありがとうございました」

渡辺先生は不安そうな顔をしている。

「大丈夫ですって。いつも帰り遅いので」
「…なんだよ、悪い子だな」

ムニっと私の頬を摘んできた。

「い、いてて!渡辺先生、意地悪!!」
「ふん、意地悪で何が悪い」

すると突然、渡辺先生は私を引き寄せた。

「え……」

渡辺先生は優しい瞳で私を見つめた。
そのまま…優しく口づけを落とした。

急なことで、私は戸惑った。
でも、意地悪されて…こんなことされたら胸が高鳴ってしまうよ。

「気をつけて帰れよ。また連絡する」

渡辺先生は私の頭を撫でた。

「じゃあ…また。今日は…ありがとうございました」

私は渡辺先生の姿を振り返って見て、駅へ向かった。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...

MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。 ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。 さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか? そのほかに外伝も綴りました。

還暦の性 若い彼との恋愛模様

MisakiNonagase
恋愛
還暦を迎えた和子。保持する資格の更新講習で二十代後半の青年、健太に出会った。何気なくてLINE交換してメッセージをやりとりするうちに、胸が高鳴りはじめ、長年忘れていた恋心に花が咲く。 そんな還暦女性と二十代の青年の恋模様。 その後、結婚、そして永遠の別れまでを描いたストーリーです。 全7話

とある男の包〇治療体験記

moz34
エッセイ・ノンフィクション
手術の体験記

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

真面目な女性教師が眼鏡を掛けて誘惑してきた

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
仲良くしていた女性達が俺にだけ見せてくれた最も可愛い瞬間のほっこり実話です

17歳男子高生と32歳主婦の境界線

MisakiNonagase
恋愛
32歳の主婦・加恋。冷え切った家庭で孤独に苛まれる彼女を救い出したのは、ネットの向こう側にいた二十歳(はたち)と偽っていた17歳の少年・晴人だった。 「未成年との不倫」という、社会から断罪されるべき背徳。それでも二人は、震える手で未来への約束を交わす。少年が大学生になり、社会人となり、守られる存在から「守る男」へと成長していく中で、加恋は自らの手で「妻」という仮面を脱ぎ捨てていく…

旧校舎の地下室

守 秀斗
恋愛
高校のクラスでハブられている俺。この高校に友人はいない。そして、俺はクラスの美人女子高生の京野弘美に興味を持っていた。と言うか好きなんだけどな。でも、京野は美人なのに人気が無く、俺と同様ハブられていた。そして、ある日の放課後、京野に俺の恥ずかしい行為を見られてしまった。すると、京野はその事をバラさないかわりに、俺を旧校舎の地下室へ連れて行く。そこで、おかしなことを始めるのだったのだが……。

愛しているなら拘束してほしい

守 秀斗
恋愛
会社員の美夜本理奈子(24才)。ある日、仕事が終わって会社の玄関まで行くと大雨が降っている。びしょ濡れになるのが嫌なので、地下の狭い通路を使って、隣の駅ビルまで行くことにした。すると、途中の部屋でいかがわしい行為をしている二人の男女を見てしまうのだが……。

処理中です...