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第六章 忘却の街で叫ぶ骸

間話 ~ 幼き日

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 間話 幼き日


 詳しいところは、わからなかったけど。家は特別に裕福でもなければ、極端に貧しくもなかった。
 なんだっけ……公営共同住宅というのか。マンションよりはほどよく寂れてて、でも安普請のアパートよりは立派なところに住んでいた。
 三台もあったエレベーターは、背が足りなくて一人では乗れなかった。もっとも四階にあった部屋の玄関すら、自力で開けることは出来なかったけど。
 家の中では、穏やかな時間が流れていた――けど、そればかりでもなかった。


「あたしのほうが、おねえちゃんなんだから」


 二才上のおねえちゃんが親の見ていないところで、オモチャや猫のぬいぐるみを奪っていくのが日常的に繰り返され、泣け叫びながら姉弟ケンカを繰り返していた。
 だから、おねえちゃんが幼稚園に入ったとき、羨ましいというより、オモチャを独り占めできる嬉しさのほうが勝っていたと思う。
 だけど同時に、一人の時間が増えた。
 おねえちゃんの送り迎えや買い物、そのほかの用事……ママが外に出ているあいだ、家の中で一人っきりだった。
 絵本やおもちゃ……ときにはテレビに流してくれていた、でぃーぶいでぃーのヒーローものの番組を見て、一人の時間をすごしていた。
 そのヒーローものだって、なんども見てると、だんだんと退屈になってくる。だけど、ほかのヤツをねだるのは、なんとなく雰囲気を察してできなかった。
 同じ番組をなんどもみているうちに、ふと思ったことがある。


 ――なんで一人の怪人相手に、みんなで戦うんだろう?


 卑怯とか、そんなことを思ったわけじゃない。単なる疑問だった。そして次に思ったのは、怪人側への疑問だった。


 ――なんで怪人側は、数十人規模で襲わないんだろう?


 弱っちい小物を引き連れての戦いはあったけど、数十人の怪人と数十体の巨大怪獣で襲えば、ヒーローにだって勝てるのに。
 そんなことを考え初めてから、ヒーローものへの興味が薄れた気がする。
 まあ、ママはでぃーぶいでぃーを流してくれたから、文句を言わないで観たけれど。でもどちらかといえば、しーじーを使ったアニメのほうが好きだった。
 でも、そういうアニメはママは買ってくれなくて。パパが「ママには内緒な」と言って買ってくれた。
 そのあと、パパがママに土下座するのをなんどか見たけど……なんで怒られてたんだろう?
 もっと、仲良くして欲しかったなぁ。
 ママだって、ヒーローもののでぃーぶいでぃーを一緒に観るとき、「今回の男優はいまいちよねぇ。前のほうが好みだったな」とか言って楽しんでたんだから。
 パパがアニメを買ったって、怒ることないのに。おねえちゃんだって、アニメのほうが好きだって言ってたんだし。
 そんなママだけど、お昼ご飯のときは、いつもニコニコとしていた。


「――クン、――クン。今日のお昼は、なにを食べよっか?」


 日曜日のつぎの日になると、買い物から帰ってきたママはそんな質問をしてくる。
 買い物袋にある野菜とかの中に、カツとか天ぷらとか……スーパーで買ったおかずが入っているが見えたけど、そんなことを気にする注意力なんてない。


「えっとね。カレーがいい」


「カレーかぁ……」


 いつもだと、「それもいいけど、今日のお昼はコロッケうどんにしよっか」とか言ってくるんだけど……その日は、少し考えて両手でピースを作った。


「うん、それじゃあねぇ……レトルトもあるし、今日はカツカレーにしちゃおっか」


「やったー! カツカレー!!」


 嬉しさのあまりバンザイをすると、ママは頭を撫でてくれた。


「準備をするから、大人しく待っててね」


「うん!」


 大きく頷くと、ママはまたヒーローもののでぃーぶいでぃーを流してくれた。
 歌を鼻歌で奏でながら台所へ行くママの背中を見つめてから、テレビよりもカレーの異ばかり考えていた。

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本作を読んで頂き、誠にありがとうございます!

わたなべ ゆたか です。

ご覧の作品は、転生して古物商になったトトが、幻獣王の指輪と契約しました 第六章 間話その2 で間違いございません。

ちょっと趣向を変えてみました……という感じです。

天気予報で「花粉 非常に多い」と言われる度に、精神がごっそり削られる日々です。
もうですね、仕事中に「目が、目があああ!」と、ムス●状態になります。鼻水だけならマスクでなんとかなりますが……目の痒みだけは、どうにもできません。
眼鏡も……水中眼鏡的なものじゃないと意味は無いし……そんなんしてたら邪魔ですし。

目薬も数分保てばいいほうというですね。

……ほんと、杉の木なんとかせいって言いたくなります。虫よりこっちが先じゃろがい。

少しでも楽しんで頂けたら幸いです。

次回もよろしくお願いします!
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