青空と黒い空

わたなべ ゆたか

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   序

 とある病室のベッドで、老婆は横になっていた。左腕には点滴の管、心臓付近には心電図の電極、そして顔の半分は酸素マスクで覆われていた。
 それでも意識ははっきりとしているのか、老婆は面会に来た息子に告げた。

「お願いがあるの……」

「言っておくけど、外出はできないよ」

 空が見たいと言って看護師を困らせているという話を思いだし、息子は苦笑いを浮かべた。しかし老婆は、首を横に振った。

「もうすぐ、出産、よね?」

 息子の妻は今、妊娠七ヶ月目。もうすぐというには、まだ焦れったいほどの月日が残っていた。そんな気持ちを隠しながら息子が頷くと、老女は言葉を続けた。

「子どもが産まれたら――」

 老女の願いに青年は戸惑いながら、それでも断ることはできなかった。
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