消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

わたなべ ゆたか

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消耗品扱いの発掘技師は、元クールビューティーな魔造少女と世界を救う

発掘都市アーハム襲撃 その4

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 発掘都市アーハム襲撃 その4


 飛来してきた巨石を撃ち落としたあと、レオナは魔造動甲冑を大きく跳び上がらせた。
 門の前にいた部隊を飛び越えて、歩兵と交戦している部隊の背後に着地した。


「後方の部隊まで敵が来てる!?」


「多分、伏兵よ。あいつらの常套手段なんだけど――街の守備隊とか護衛兵じゃ知らないか」


「なんで、そんなことに――」


「だから、昔より練度が低いのよ。それより、あそこは乱戦になりかけてるから、元の姿に戻るわ。この状態だと、なにも出来ない」


「うん。わかった」


 数歩だけ近づくと、そこでレオナは魔造動甲冑の形体を解いた。
 僕を抱きかかえながら着地すると、「結界で護ってて」と言い残して部隊のほうへ跳んでいった。


 兵士や護衛兵たちは、白兵を行っているが、相手の持つ魔導器の盾のせいで、斃すのに手間取っているようだ。
 それどころか、すでに三人ほど、ゴブリンによって命を失った兵の姿もあった。
 レオナは右腕から光の刀身を発生させると、すぐに最大の技を繰り出した。


「剣圧最大――雷撃波!」


 雷の刃がゴブリンの盾を貫いた。ゴブリンは無傷だったけど、その一撃で結界は消失――つまり、魔導器の能力が使えないほどに、魔力を消費したってこと。
 レオナは即座に倒れた兵士のライフル型の魔導器を拾い上げると、先ほどのゴブリンに銃口を向けた。
 魔力弾で盾ごと頭を吹き飛ばしたレオナは、次のゴブリンにも同様に、雷撃波からの銃撃という手順を繰り返した。


「攻撃を最大にして盾の結界を打ち破って! それからなら、斃すのも容易いの!!」


 レオナの指示で、生き残っていた二人の兵士がライフルによる攻撃を始めた。
 ゴブリンの持つ盾の結界を打ち消してから、護衛兵が白兵を挑むという流れが出来たころには、後方の戦いは収束していた。


「レオナ、無事?」


「ええ。それより、前の援護にも行かなきゃ。アウィン……あの、一緒に来てくれる?」


「僕が役に……立つなら」


 正直に言うと、怖かった。死ぬことや怪我をすることもそうだけど、それ以上に〈死〉を目の当たりにするのが怖かったんだ。
 それでも、僕は頷いた。レオナが、僕を必要って言ってくれたから。
 レオナは再び魔造動甲冑の姿になると、僕を乗せた。


「まずは、あの投石器を壊す。それから直接、隊長を狙うわ」


「わかった。指揮系統ってのを壊すんだね」


「そういうこと。行くわよ!」


 脹ら脛の球体から光を放ち、魔造動甲冑が夜空に跳んだ。
 後方の部隊の援護をしているあいだに、投石は二度ほど行われたみたいだ。まだ照明は無事だけど、監視塔の石壁や屋根は、大きく損傷していた。

 レオナは先ず、向かって左側の投石器を狙った。
 遠距離から魔力砲を撃ちつつ、魔造動甲冑は投石器に接近した。近くにオーガは投石器の操作を諦め、彼らの体躯に合った、大きなハンマーで向かってきた。


「あんたたちに構ってる暇はないの!!」


 レオナは叫びながら、右腕から光の刀身を発生させた。


「剣圧最大――雷撃波!」


 魔造動甲冑の右腕から、眩い雷撃が迸る!
 堪らずに目を細めた僕の眼前で、投石器諸共に二体のオーガが胴を真っ二つにされて絶命した。
 この攻撃に、右方向にいたオーガたちも僕らの存在に気づいたみたいだ。投石器を僕らに向けようとしたけど、その前にレオナが魔力砲を撃った。
 魔力の砲弾の直撃で、投石器の巻き上げ機構が大破した。これでしばらくは、街への攻撃は防げたはずだ。


「あとは、隊長ね」


 周囲を見回した僕らは、少し後方で大熊に騎乗した甲冑姿のゴブリンを見つけた。
 蛮刀らしいものを振り上げながら、なにかを僕らに言っているけど――ここまでは声が届いてこない。


「ゴブリンロードってヤツね。どうせ、一騎打ちとか言ってるんだと思うけど」


「どうするの?」


「んー……正直、そんなものに付き合う義理はないんだけどね」


 レオナが魔造動甲冑を進めると、漸くゴブリンロードの声が聞こえてきた。


「キサマ、伝説の赤い悪魔だな! そのようなカラクリから降りて、尋常に勝負をしろ!」


 人の言葉は慣れないのか、やや訛りのある怒鳴り声だ。
 僕が振り返ると、レオナは溜息をついた。


「あたし、赤い悪魔って言われてるの? まったく……」


 どうするのかと僕が見守っていると、レオナはいきなり魔力砲を撃った。
 騎乗した大熊ごと、ゴブリンロードを消し炭にしたレオナは、襲いかかってきた二体のオーガを光の刀身で切り捨てた。


「ぐずぐずしてたら、被害が増えるし。応援に行くわね」


「あ……うん」

 ……なんて容赦の無い。

 レオナは周囲を見回しながら、潜んでいたゴブリンの歩兵へ砲撃を加えた。
 周囲の安全を確保してから、レオナは魔造動甲冑の形体を解いた。後衛を援護したときに拾ったライフル型の魔導器を手にすると、レオナは背後からワーグに乗ったゴブリンの騎兵へと跳躍した。
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