33 / 71
33
しおりを挟む
護衛騎士五十人程に囲まれた品のあるレリーフの大きな馬車が門をくぐって入ってきた。
城の賓客入口は塔から見えないので、降り立つ姿は見えない。
あれから十日何事もなく、今日フレア国の王女が到着した。
リンガルは出迎えに並ばなくてはいけないとあちらに行っている。
その間の護衛は何度か来てくれている第二騎士隊のイグニスだ。
エリート集団の隊所属とあって魔力量もそれなりに多く、鍛えられた体に剣も強そうだ。
ちなみに顔もかなり整っている。この第二騎士隊は狭き門らしく今は五人しかいないらしい。かなり厳しい条件で護衛の人選をしたそうだが、そんな貴重な人材を回してもらってもよかったのだろうか。
「本当なら王女の出迎えに並ぶはずだっただろう。こんなむさ苦しいところですまない」
そう言うと、イグニスはとんでもないと首を振り。
「麗しい魔導師長殿の護衛ができて光栄ですよ、お近づきになりたくて私は自分で手を上げました。それにここがむさ苦しいのであれば、騎士団などゴミ溜めのようですよ」
なるほど、出来る男は口も上手いな。
ふふっと笑うとイグニスも微笑む。
「花も霞む美貌の君の笑顔が見れただけでも役得です、帰ったら自慢させてください」
何だ、その変な異名は。
「イグニスはお世辞が上手だな」
「まさか、私の本心ですよ」
出来る男はたらしでもあるんだな。きっとモテることだろう。
「それにしても団長は王女との縁談どうするおつもりなんでしょうね、魔導師長殿も心休まりませんでしょう」
「もう婚姻は決まりだろう?何も困ることはない」
「なんと、そこまで話は決まっていたとは。残念です、私の入る隙は無さそうですね。おめでとうございます」
若干わざとらしく右手を腹部に添え笑顔で頭を軽く下げた。
友人の俺に言うのは変じゃないか?
「何故私に祝いの言葉を言うんだ?」
「え?」
「え」
イグニスはとても驚いて目を見開いて、口を手で覆い心なしか顔色も悪い。
どうしたんだ、体調が悪いのを我慢していたのか。
「イグニス、体調が悪いなら無理することはない」
「いえっ、体調は問題ありませんよ。それより魔導師長殿、先程婚姻が決まったと言ったのは……」
「王女とリンガルの婚姻だろう?」
今度は頭を抱えて前屈みで震え出したぞ。やはり具合が悪いのではないか。
ソファに座るよう言おうとしたところで来訪者のベルが鳴った。
「団長が戻ったようですね」
一瞬で顔と姿勢を正し、何もなかったように振る舞っている、さすが第二騎士隊のエリートだな。
イグニスを連れリンガルを迎えに出る。
「異常ありませんでした」
「後は通常勤務に戻ってくれ」
「は」
敬礼をして背中を向けたイグニスが、一度だけ振り返って肩を揺らしながら去って行った。
大丈夫だろうか、どこかで休んでくれればいいが。
「ソニアス、宰相から伝言だ」
ガニュード家の動きが心配だから今から城に来るようにとのことだ。
必要な物は揃っているからと手ぶらで用意された客間にやって来た。
通された客間は舞踏会の会場から一番離れていて、やはり囮にされたのではと疑いたくなる。
とはいえ、部屋は賓客クラスだ、広い応接にはテーブルを囲むように大きなソファーが並び、隣の寝室には天蓋付きの寝台、塔とは大違いの大きな風呂場。調度品も高級な物ばかりだ。
こんな部屋に泊まれるのなんて二度とないだろう、満喫してやる。
目を輝かせながらキョロキョロとするソニアスを温かな目で見る男が何故か今日は遠くに立っていた。
何でそんなに離れてるんだ、と言いかけて恥ずかしくなった。あいつはいつも通り扉の定位置にいる、部屋が広いせいで遠くに感じるだけだ。
「で、俺はどうすればいいんだ」
「今日はこの部屋から出ないでくれ、必要な物があれば手配する。食事もここに運んで貰う、食べたいものがあるなら言ってくれ」
少し考えて、食事は何でもいいと返事した。
皿に盛られた菓子はテーブルに置いてあるし、ティーセットもチェストの中にあった。
「せっかくだから広い風呂でも楽しもう、その後ティータイムだ」
とりあえず今は楽しもうと決めたソニアスだった。
城の賓客入口は塔から見えないので、降り立つ姿は見えない。
あれから十日何事もなく、今日フレア国の王女が到着した。
リンガルは出迎えに並ばなくてはいけないとあちらに行っている。
その間の護衛は何度か来てくれている第二騎士隊のイグニスだ。
エリート集団の隊所属とあって魔力量もそれなりに多く、鍛えられた体に剣も強そうだ。
ちなみに顔もかなり整っている。この第二騎士隊は狭き門らしく今は五人しかいないらしい。かなり厳しい条件で護衛の人選をしたそうだが、そんな貴重な人材を回してもらってもよかったのだろうか。
「本当なら王女の出迎えに並ぶはずだっただろう。こんなむさ苦しいところですまない」
そう言うと、イグニスはとんでもないと首を振り。
「麗しい魔導師長殿の護衛ができて光栄ですよ、お近づきになりたくて私は自分で手を上げました。それにここがむさ苦しいのであれば、騎士団などゴミ溜めのようですよ」
なるほど、出来る男は口も上手いな。
ふふっと笑うとイグニスも微笑む。
「花も霞む美貌の君の笑顔が見れただけでも役得です、帰ったら自慢させてください」
何だ、その変な異名は。
「イグニスはお世辞が上手だな」
「まさか、私の本心ですよ」
出来る男はたらしでもあるんだな。きっとモテることだろう。
「それにしても団長は王女との縁談どうするおつもりなんでしょうね、魔導師長殿も心休まりませんでしょう」
「もう婚姻は決まりだろう?何も困ることはない」
「なんと、そこまで話は決まっていたとは。残念です、私の入る隙は無さそうですね。おめでとうございます」
若干わざとらしく右手を腹部に添え笑顔で頭を軽く下げた。
友人の俺に言うのは変じゃないか?
「何故私に祝いの言葉を言うんだ?」
「え?」
「え」
イグニスはとても驚いて目を見開いて、口を手で覆い心なしか顔色も悪い。
どうしたんだ、体調が悪いのを我慢していたのか。
「イグニス、体調が悪いなら無理することはない」
「いえっ、体調は問題ありませんよ。それより魔導師長殿、先程婚姻が決まったと言ったのは……」
「王女とリンガルの婚姻だろう?」
今度は頭を抱えて前屈みで震え出したぞ。やはり具合が悪いのではないか。
ソファに座るよう言おうとしたところで来訪者のベルが鳴った。
「団長が戻ったようですね」
一瞬で顔と姿勢を正し、何もなかったように振る舞っている、さすが第二騎士隊のエリートだな。
イグニスを連れリンガルを迎えに出る。
「異常ありませんでした」
「後は通常勤務に戻ってくれ」
「は」
敬礼をして背中を向けたイグニスが、一度だけ振り返って肩を揺らしながら去って行った。
大丈夫だろうか、どこかで休んでくれればいいが。
「ソニアス、宰相から伝言だ」
ガニュード家の動きが心配だから今から城に来るようにとのことだ。
必要な物は揃っているからと手ぶらで用意された客間にやって来た。
通された客間は舞踏会の会場から一番離れていて、やはり囮にされたのではと疑いたくなる。
とはいえ、部屋は賓客クラスだ、広い応接にはテーブルを囲むように大きなソファーが並び、隣の寝室には天蓋付きの寝台、塔とは大違いの大きな風呂場。調度品も高級な物ばかりだ。
こんな部屋に泊まれるのなんて二度とないだろう、満喫してやる。
目を輝かせながらキョロキョロとするソニアスを温かな目で見る男が何故か今日は遠くに立っていた。
何でそんなに離れてるんだ、と言いかけて恥ずかしくなった。あいつはいつも通り扉の定位置にいる、部屋が広いせいで遠くに感じるだけだ。
「で、俺はどうすればいいんだ」
「今日はこの部屋から出ないでくれ、必要な物があれば手配する。食事もここに運んで貰う、食べたいものがあるなら言ってくれ」
少し考えて、食事は何でもいいと返事した。
皿に盛られた菓子はテーブルに置いてあるし、ティーセットもチェストの中にあった。
「せっかくだから広い風呂でも楽しもう、その後ティータイムだ」
とりあえず今は楽しもうと決めたソニアスだった。
30
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
逃げた弟のかわりに溺愛アルファに差し出されました。初夜で抱かれたら身代わりがばれてしまいます💦
雪代鞠絵/15分で萌えるBL小説
BL
逃げた弟の身代わりとなり、
隣国の国王である溺愛アルファに嫁いだオメガ。
しかし実は、我儘で結婚から逃げ出した双子の弟の身代わりなのです…
オメガだからと王宮で冷遇されていたので、身代わり結婚にも拒否権が
なかたのでした。
本当の花嫁じゃない。
だから何としても初夜は回避しなければと思うのですが、
だんだん王様に惹かれてしまい、苦しくなる…という
お話です。よろしくお願いします<(_ _)>
拝啓、目が覚めたらBLゲームの主人公だった件
碧月 晶
BL
さっきまでコンビニに向かっていたはずだったのに、何故か目が覚めたら病院にいた『俺』。
状況が分からず戸惑う『俺』は窓に映った自分の顔を見て驚いた。
「これ…俺、なのか?」
何故ならそこには、恐ろしく整った顔立ちの男が映っていたのだから。
《これは、現代魔法社会系BLゲームの主人公『石留 椿【いしどめ つばき】(16)』に転生しちゃった元平凡男子(享年18)が攻略対象たちと出会い、様々なイベントを経て『運命の相手』を見つけるまでの物語である──。》
────────────
~お知らせ~
※第3話を少し修正しました。
※第5話を少し修正しました。
※第6話を少し修正しました。
※第11話を少し修正しました。
※第19話を少し修正しました。
※第22話を少し修正しました。
※第24話を少し修正しました。
※第25話を少し修正しました。
※第26話を少し修正しました。
※第31話を少し修正しました。
※第32話を少し修正しました。
────────────
※感想(一言だけでも構いません!)、いいね、お気に入り、近況ボードへのコメント、大歓迎です!!
※表紙絵は作者が生成AIで試しに作ってみたものです。
転生したようだけど?流れに身を任せていたら悪役令息?として断罪されていた――分からないまま生きる。
星乃シキ
BL
発作の後に目覚めたら、公爵家嫡男の身体だった。
前世の記憶だけを抱えたまま生きるレイは、ある夜、男の聖女への嫌がらせの罪で断罪される。
だが図書室の記録が冤罪を覆す。
そしてレイは知る。
聖女ディーンの本当の名はアキラ。
同じ日本から来た存在だった。
帰りたい聖女と、この身体で生きるレイ。
秘密を共有した二人は、友達になる。
人との関わりを避けてきたレイの人間関係が、少しずつ動き始める。
龍の寵愛を受けし者達
樹木緑
BL
サンクホルム国の王子のジェイドは、
父王の護衛騎士であるダリルに憧れていたけど、
ある日偶然に自分の護衛にと推す父王に反する声を聞いてしまう。
それ以来ずっと嫌われていると思っていた王子だったが少しずつ打ち解けて
いつかはそれが愛に変わっていることに気付いた。
それと同時に何故父王が最強の自身の護衛を自分につけたのか理解す時が来る。
王家はある者に裏切りにより、
無惨にもその策に敗れてしまう。
剣が苦手でずっと魔法の研究をしていた王子は、
責めて騎士だけは助けようと、
刃にかかる寸前の所でとうの昔に失ったとされる
時戻しの術をかけるが…
神の寵愛を受ける僕に勝てるとでも?
雨霧れいん
BL
生まれるのがもっともっと今より昔なら、”信仰”することが”異端”でない時代なら世界ならよかったと、ずっと思って生きていた。あの日までは
溺愛神様×王様系聖職者
【 登場人物 】
ファノーネ・ジヴェア →キラを溺愛し続ける最高神
キラ・マリアドール(水無瀬キラ)→転生してから寵愛を自覚した自分の道を行く王様系聖職者
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる