塔の魔導師と騎士団長の恋が実るまで

温井 床

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 後頭部を左手で支えられ、反対の手は覆い被さるように肘掛けに置かれ、その右膝は太腿の間にある。重みのままに口を塞がれると、力の入っていない唇に舌が入って前歯を舐められた。

 それを合図に隙間を作ると、口づけが深くなる。

「ん……んっ」

 鼻に抜けた喘ぎのような声がソニアスから漏れると、ふっとリンガルが体を離す。

「あっ」

 何で離れるんだ。

 背中から離した手を今度は首に回しギュッと抱き付くと、ふわりと体が浮くのを感じた。

「な……に」

「そのまま抱き付いていろ」

 ふわふわの意識のまま目を閉じて首元に顔を伏せるとゆらゆらと揺れ、少しして柔らかい物の上に優しく落とされた。

 ゆっくり瞼を上げるとリンガルが横から覗き込んでいる。

「リンガル?」

「起きちまったか」

 視線を巡らせると、自分が使っている客間の寝室だった。

 酩酊状態でぼんやりしながらリンガルの瞳を見つめ、手を伸ばそうとすると途中で手首を掴まれ止められた。

「もう寝ろ、水を貰ってくる」

 手を離して行こうとするその腕にしがみついて引き留めた。

「やだ」

 もう寝ろって何だ、お前にとっては据え膳じゃないのか。俺にプロポーズして、俺の色を着て、俺にあんなキスをしておいて。

 今更、手を離すなど人を馬鹿にして。今夜は、今夜までは俺のものだ。

 両手で掴んだ腕を力いっぱい引っ張り、風を起こして広い背中を強引に押し上げた。

「やだって……お前な、うわっ」

 あっという間にソニアスの上に乗り上げてしまったリンガルだが、かろうじて肘と膝をつくことで押しつぶすことは免れた。

「ソニアス、何やって……ッ」

 リンガルの鼻先から指一本先にソニアスのそれがある、口づけ寸前の距離だった。

 ソニアスは透かさず両腕をリンガルの脇から背中に回し頭を持ち上げ唇を奪う。

 リンガルは驚きに目を瞠り鍛えられた背筋で起き上がったが、ソニアスは離れまいとギュッと腕に力を込め、さらに寝台を蹴り押し倒した。

 腰を跨ぎ乗り上げたソニアスは両手で今度はリンガルの頬を挟んで唇を押し付けた。

 逃げるな、俺を見ろ。

 はしたなくも密着しているそこを揺らし、己の状態を知らせる。

 獣のような唸り声が聞こえたと思ったら、ひっくり返され力づくで両肩を寝台に押し付けられた。

「タチの悪い酔い方しやがって、俺の理性にも限界がある。こんなに煽って、どうなるかわかっているのか」

 責めているが息遣い荒く、もはや欲情を隠せなくなっているリンガルにソニアスは最後の後押しをする。

「わかっている、抱いてくれ」

 一度だけだ、今夜だけお前のものになりたい。

 厚くて暖かい唇に己のそれを塞がれ、歓喜に震えた。

 口腔が分厚い舌でいっぱいになって溺れそうだ。

 武骨な奴だと思っていたが、器用に服を脱がせていくあたり筋肉だけの男ではなかったようだ。

 ジュストコールは寝台の下に落とされ、シャツのボタンは全て外してウエストからも引き出され完全に開かれてしまっている。

 晒された白い肌には桃色の飾りがふたつ、リンガルの目を奪っている。

 剣だこのある大きな手がそっと胸に置かれ、その飾りを絶妙に避けて滑っていく。

「うんっ……」

 何とも言えない初めての感覚がソニアスを襲い震える。

 ゴクッと唾を飲み込む音が聞こえて、首筋に熱い息とぬるりとしたものが這うとズクンと腰に衝撃が走った。

「あっ、ああ……」

 勝手にビクッと反応する己の体に羞恥を覚えるが、恥ずかしがる暇は与えてもらえない。

 リンガルの唇はどんどん下へ移動し、胸の頂に到着すると突起には触れず周囲をぐるりと舐められた。何をするのか気になり目線を向けると赤茶色の瞳と目が合う。

「や、見るな」

 観察されている、恥ずかしすぎる無理だ。

 両腕をクロスして顔を隠そうとしたが、リンガルに外されてしまう。

「見せてくれ、感じているソニアスが見たい」

 そのまま両手首を寝台に縫い付けられ、先端を口に含まれ舌先で舐られる。

「なっ、あっ……」

 自分であえて触ることのないそこは快感をもたらしてはいないが、この男が吸い付いていると思うだけで心が震えるのだ。

 その反応に気を良くしたのか、拘束されていた両腕は外された。

 代わりに片方をクリクリと捏ねていく。

「んんっ」

 空いた手は脇腹から腰にかけて撫で下ろされ、そこにある衣服を脱がせにかかった。

 リンガルは一度体を起こすと、一気に下着ごと引き抜いた。

 秘された部分が露わになり慌てて両手で隠すが、やはりリンガルに外される。

 ソニアスは今シャツを半端に残しただけで、白く滑らかな痩身を晒し、その中心はゆるく立ち上がろうとしていてリンガルの視線を釘付けにしていた。

「綺麗だ」

 その言葉に全身がカッと熱くなる。

 リンガルは自分のクラバットを勢い良く取り、素早く衣服を脱いでいった。

 上半身が裸になった男の体躯は屈強で、綺麗な筋肉に覆われ男らしい体つきをしている。

 嫉妬しそうになるくらい格好いい体をしている。

 しばし見惚れていたが、これからこの男に抱かれるのかと思うと興奮と共に恐れを感じる。

 そんな機微を解したのか耳元で艶のある低音が囁いた。

「優しくする」

 小さく頷くと口づけされどんどん深くなった。

「ん……んんっ……んう」

 全身をまさぐられ、中心を握られた。

「ううっ、んんっ」

 そのままゆっくり数回扱かれるとそこは完全に固く勃ち上がり、やがてぬめりを帯びる。

 卑猥な音が鳴り始め、また羞恥に震えた。

「あっ、や……」

 手を引かれ起き上がると、リンガルの足の間に背を向けて座る体勢に誘導され、背中が密着するように引き寄せられた。

 温かくてしっとりした相手の肌が直に触れ、それだけでゾクゾクする。

「ん」

 背中でクスッと笑った気配がして首だけで振り返るとチュッと啄むような口づけをされ、そのまま耳を喰まれる。

「あっ」

 耳たぶをねっとり舐められ内側まで舌が入り、身を捩り逃げようとしたが、その間ずっと乳首と完全に勃起したそこを攻められ、快感で体が言うことを聞かなかった。

 こんなに気持ちがいいなんて。

「ああっ、んんっ……あん……あっ」

 扱かれていたものの先端を親指の腹で撫でられると一気に射精感が高まり、思わず腕を掴み止めようとするがビクともせず、逃げようとしても逃げられない。

「あっ、だめだ。離せっっ……もうッ」

 出る、と口に出す前に己を包む男の手に白濁を放っていた。

「あああっ……はっ……はあ……はあっ」

 脱力して逞しい胸に体重を預けると、透かさず唇を奪われ優しく頭を撫でられた。

 頬から首、肩から腕をあやすように撫でられると気持ちよくて、どっぷり浸りたくなる。

 目を閉じて余韻に浸っていると、背中から温もりが唐突に遠ざかった。

「え」

 寝台から降りようとするリンガルの手を掴んで止める。

「どこに?」

「体を拭いてやるから待っていろ」

「どうして、これから……するんだろう?」

 先程ずっと尻に固いものが当たっていたのだ、リンガルもその気になっていたはず。

 酔いも覚めてきて素面で言うのははばかられるが、羞恥を押し殺して言ってみるとリンガルは少し困ったような顔をした。

 それは拒絶という意味なのか?

 ソニアスの顔色が変わったのを見て、勘違いするなと言う。

「お前が気持ち良くなってくれたらそれで満足なんだ」

「でもお前のそれ」

 リンガルの前は衣服を押し上げ昂っているのが丸わかりだった。

 それはどこで発散するつもりだ。

「あー、何だ。無理はさせたくねえんだ」

「無理じゃない」

「あっ、おいっ」

 手を伸ばし、窮屈そうなそれを衣服をずらし取り出す。

 思った通り自分のものより大きくずっしりしている、そしてとても熱い。

 それを目の当たりにするとゴクリと喉が鳴った。

「ソニアス、無理は……」

 一瞬動きが止まったのを躊躇いと受け取ったリンガルは制止しようとしたが、ソニアスは
これが最後のチャンスだと覚悟を決め、両手を添えてゆっくり撫でた。

「おいっ、……ッ」

 血液が巡るのが指先に伝わり、さらに硬度を増してゆくそれを順調に育てていく。

「俺の理性を試すなっ」

「そんなもの今はいらない!」

 ええいままよと口を開け迎え入れる。

 が、やはり大きすぎて含みきれない。

「うっ……ッ」

 上からうめき声が聞こえて嬉しくなった。

 舌を一生懸命に動かし先端を丁寧に舐めてみると、じゅわっと苦さが口に広がる。

「お前どこでそんな事覚えてきたんだっ、うう……くっ」

 どんな顔をしているのかと目線を向けると、堪えるように眉をひそめ上気した顔をしている。

 さっきリンガルが顔を見せろと言った意味がわかった、とても興奮する。見られるのは嫌だが、見るのは存外いいものだ。

 視線が絡まったその時、咥えていたものを強引に外され、あっという間に足を開いた状態で押し倒されていた。

 口を拭う間もなかったので唾液がいやらしく端から流れる。

「もう止めてやれねえぞ。ここを使うんだ、嫌なら今言え」

 と言われ、尻の間に太い指が滑り込んで窄まりに触れられた。あらぬところをスリスリと撫でられて軽く衝撃を受ける。

「あっ」

 今世では得られなかったが、前世での知識でそこに入れることは知っていた。しかし、実際に触れられると決意が揺らぎそうになる、先程口でも持て余した太いものが入るとは思えない。

 しかし、ソニアスは今しかないと思い込んでいた為、それでもいいと答えた。

 その後はもう何も考えられず翻弄されるだけだった。

「あっ……ああっ……んっ……あっあっ」

 どこからか取り出した香油でソニアスの中を丹念に解し、もう一度イかされ、四つん這いなったところで背後からゆっくりと質量のあるものが挿入され少しずつ揺さぶられる。

「いっ、ああっ……」

「ソニアス、ソニアスッ……ニア」

 最後は性急に攻め立てられて、中でリンガルが爆ぜたところで意識が白く飛び、闇に落ちた。
 
 
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