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思い出の山の話(R18)
しおりを挟む「もういいんですか?」
夫が声を立てて笑った時にきゃあ、と声が上がったのは聞かないようにして手を洗いに行って戻った私の手を引いて、夫は帰り支度を始めた。
「うん、また後日警察署にいかないといけないけど、今日は帰っていいって。
シャワー浴びてくるけど車に乗って待っとく?ここで待つ?」
「あ、じゃあ車で。」
怪我をしている夫を気遣うよりも下らないやきもちが顔を出してしまいそうで自分が嫌になった。
簡単に案内されて地下駐車場に出ると、天気予報が外れて明け方には上がった雨の残りで湿度高めのひんやりとした空気に少しだけ胸が落ち着いた。ロックを解除して助手席に乗り込むと、夫の香りのその密室はとんでもなく居心地が良くて、座席に沈み込んでゆるりと目を閉じた。
初めて人を叩いた。自分にこんな過激な面があったことにまだ驚いている。
早く家に帰って、あの二人だけの部屋で夫にだきしめてもらいたかった。
夫が待ち遠しくて、つい周りをきょろきょろと見回してしまう。
車を探している男性と目が合って、相手がにこやかに手を振ったので、困惑して頭を下げた瞬間、運転席のドアが開いて夫が勢いよく乗り込んで運転席に座る。
心臓が止まるほど驚いて、私に覆い被さる夫に更に驚いた。
「あ・・・・・・シートベルト・・・・・・。」
「ごめんね、びっくりした?」
かち、とシートベルトをロックする音が、私の手のひらに重ねた夫の手の中で鈍く響いて、私の平気です、
と返した声は掠れていた。
「もう出していい?」
「はい。修司さん大丈夫ですか、運転。」
「うん、もう痛みもほとんどないし、早くここから出たいんだ。」
そう言われると止めようがなくて、地下駐車場から滑り出す車の中で、ただ一瞬お付き合いをした学生時代の元彼の頬を打った右手をぎゅっと握りしめていた。
その手を運転中の夫の左手が優しく包んでくれて、
あたたかくて鼻の奥がつんと痛んだ。
「修司さん、どこか寄るんですか?」
家とは違う方向に流れていく景色に気がついて、夫を伺う。
「うん、少し付き合ってくれる?疲れたら寝ちゃっていいから。
今日は夕飯ももうテイクアウトにしよう。」
夫の提案は魅力的だったので、黙って頷いた。
「香織。」
私は本当に眠ってしまったようで、もう辺りは薄暗く、どこかの駐車場に車は停まっていた。
前方は景色が開けていて、自分たちが高いところにいるというのは理解できた。
「ごめんねこんなところに連れてきちゃって。」
「ごめんなさい私本当に眠ってしまって、ここは・・・・・・?」
「隣町の山の上なんだけど、叔母が母と来たことがあるらしくて、一度つれてこられたことがあったんだよね。」
私がまだぼんやりとしている頭を振って夫を見上げると、夫は優しくこちらを見下ろして、体をこちらに向けて、右手の指で髪をよけてくれた。
「俺の名前を呼んでた、寝てる時。」
「ほんとうに?やだ、他に何か言ってました?」
運転席の夫はとろけるように甘い顔をしてこちらを見ている。
でも、私は夫を放って眠りこけ、寝言まで言っていたことが恥ずかしくてそれどころじゃなかった。
「なんの夢をみてたの?」
正直にいうと何も覚えていなかった。
夫のことで頭がいっぱいなのはいつものことなので、夢なんか見なくてもつい名前を呼ぶことは当然のことのような気もする。
「わからない。覚えてないです。」
本当に?と夫は覗き込むように私の目を見て、体をかがめ、そっと唇を合わせた。
「後ろに行かない?」
そう後部座席に促されて、一度車を降りて後部座席に乗り込んだ。
他には2台の車がいて、それぞれ距離を取って停められている。
公衆トイレの脇にぽつんとある自動販売機が、やけに明るく光っている。
「意外と人がいるんですね。」
「うん、でもじっと見たらだめだよ。」
「なんで?」
横に座った私の肩を抱いて、聞き返した私の唇を人差し指で抑えて、夫は悪戯っぽく笑った。
「えっちなことしてるから。」
「えっ!?」
「デートスポットなんだよね、こんな田舎の山が。ほら、意外と夜景が綺麗でしょう。」
促されて運転席と助手席のシート越しに見るその景色は美しく、確かに恋人たちが暇潰しに訪れるにはぴったりなのかもしれない。
肩を抱く手のひらに力がこもって、夫の唇が私のそれに重なって舌が滑り込んでくる。
あのメッセージが来るまで悶々と過ごしていた体は、それをものすごく喜んで、思わず手が夫の首筋に伸びた。
唾液をまとった自分のより大きな舌を口いっぱいに含まされて、溺れそうになる。
「悲しい思い出の場所だったんだ。叔母が子どもだった俺を朝方連れて来てきて、母を想って泣いてた。」
唇をずれて耳の下に口をつけて、首筋に顔を埋めた夫が、そうぽつりと零した。
両親を亡くして寂しかった男の子が、同じく家族を亡くした叔母と二人で過ごす日々は、どんなに辛いものだっただろう、私に覆い被さる夫の後頭部を撫でると、夫はそのまま私を後部座席のシートに押し倒した。
「君が可愛いって、ジムで。ずっと誰にも秘密にしてたのに、ばれちゃった。」
ぐりぐりと肩口に顔を埋める夫の頭を撫で続けている。
「なんですか?」
「君すごく可愛いでしょう。だから心配。
他の男に見せたくない。」
「な、なに・・・・・・。」
夫の手がセーターの裾から滑り込んでくる。
「めちゃくちゃ聞かれた。君がいくつだとかどこかで働いてるのかとか名前とか。」
夫の手は、セーターの中で下着の上からごそごそと胸を覆っている。
「若くて可愛くておっぱいの大きい奥さんがいるってばれちゃった。」
「バレない方が女の子にモテてた?」
私の尖らせた唇を夫がぺろりと舐める。
「修司さんのこと話してる若くて綺麗な女の子、たくさんいましたよ。」
「別に若い子が好きなんじゃないよ。
香織が好きなの。やきもちやいてるの?嬉しいなあ。」
嬉しくて、ほら、と私の手を引いて夫が触れさせた夫の中心は、スラックスを硬く押し上げている。
それに触れた瞬間、昨日直接触ったそれが思い出されて、下着が濡れるのがわかった。
「あっ」
夫の指が、下着をずらして先端を摘んだ。
そのまま離れて、セーターをずりあげられて、むき出しになったそれを口の中に含まれて転がされると、さらに大きく声が漏れた。
「ん、修司さん、こんなところで、あ。」
ちゅう、と何度も吸われながら、デニムの釦を外されて、ジッパーも下ろされた。夫の長い指が滑り込んでくる。
今日何度も自分で触れたそこに、昨日何度も触ってくれた夫の指が触れる。
「あ、ああっ。」
「すごく濡れてる。」
「は、はあっ、今日、ずっとじんじんして、早く帰ってきてくれないかな、ってずっと思ってたの。」
「自分で触った?」
「えっ、わかるんですか?」
夫が驚いた顔をしたことで、自分の失言に気がついた。
「やだ、もう意地悪。」
「はは、たまらないな、本当に可愛い。」
「ごめんなさい、修司さんの部屋に入っちゃった。」
「俺の部屋でしたの?本当に可愛いんだけど。爆発しそう。」
浅く入ってきている夫の指が、わざと音を立てるように入り口をくちゃくちゃとかき回す。
「あ、あん、あ、もっと、もっと触って・・・・・・」
「下脱ぐ?」
「大丈夫なんですか、外なのに。」
「暗くなってきたから外からは見えないし、外に向けて停めてるから誰も見えないよ。俺も脱いでくっつけていい?興奮しすぎてきつい。」
助手席の後ろに隠れるように靴とデニムを脱いでしまうと、夫も横で同じように下を脱いで、ワイシャツの釦を上から緩めていた。
「シート、汚しちゃうかも・・・・・・」
「そんなに濡れてるの?待ってね、タオル敷く?」
夫がジム用のバックからタオルを出して下に敷いてくれて、そこに座ると、剥き出しになった足を広げられて、夫がそこに顔を埋めた。
「あ、ああ、ひや、あ。」
「すごく硬くなってる。可哀想なくらい腫れてるよ。
「んっ!」
広げられたそこからはたらたらと蜜が溢れる感覚がする。
夫に敏感なそれを優しく舌で撫でられて、その量はいっそう増えていく気がした。
夫が体を起こして、流れる蜜を夫のそれで掬うようにして、熱いそれが私の敏感に膨れている部分に擦り付けられる。
「あっ、修司さん、あん、あ、や、だめ、声が、ああ。」
熱くて硬い修司さんが、そこをぬるぬると何度も往復していく。
「は、香織、すぐ出そう。可愛いよ。かけていい?香織のここに。」
「あ、イク、修司さん、かけて、ああ、あっ。」
私の瞼の裏で白く光が弾けたのと同時に、私の何度も痙攣しているそこに熱いものがかけられた。
「はあ、早く抱きたいな。週末中離せないかも。」
下に敷いていたタオルで、夫が汚れたそこを拭ってくれる。
「離さないで。私も明日が待ち遠しいです。修司さんとしたい。」
まだ太ももに触れているだらりとなったそれがまた膨らんで、夫は窮屈そうにそれをスラックスにしまい、運転席へ移動した。
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