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22・従僕の正体
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「ディルベルト陛下、お待ちしておりました。今回はお帰りが遅れていたので、心配しておりました」
ん、陛下?
「ハーロルト、突然行方をくらませてすまなかった」
ハーロルトと呼ばれた男性は忙しいのか疲れた顔だったけど、ディルを見つめるその表情はほっとしていた。
「いえ。陛下の特異体質については理解しております」
「すまないな」
「とんでもない。敬愛する陛下が……私の命の恩人であるディルベルト様がご無事に帰還されたことは、私にとって望外の喜びですから。さぁ、こちらへどうぞ」
ハーロルトさんは颯爽と立ち上がると、ディルを執務机のそばにある応接用の席に案内する。
私も長椅子に腰かけたディルの膝の上に、お行儀よく座ることとなった。
陛下って、あの魔帝と恐れられるラグガレド帝国の皇帝だと思うんだけど……。
つまり、ディルは世界中から怖がられているあの魔帝陛下ってこと?
色々聞きたいことがあるけれど、ハーロルトさんがいるので声は出さずに、ディルに視線で訴える。
ディルは「わかった」というように頷いてから、私の好きな首回りを撫でてくれた。
伝わってない。
「ハーロルトも予想しているだろうが、また意識を失っていた。今回は戻るのにも時間がかかった。悪かったな」
「ご安心ください。ご存じの通り今も影武者が複数待機して、あなたの代わりを務めています。陛下のためですから、誰もが最高の働きをしております。不在の間に問題もありません」
「ああ、助かっている。ハーロルトの人物選定は的確で、帝国は優れた人物を導入できている」
「私には身に余るお言葉です。陛下こそ不調を抱える中、無理を承知で魔帝として君臨してくださっているのです。それだけでなく自身が不在でも国の運営が滞らない仕組みまで考えられて……あなたは素晴らしい賢帝です」
ハーロルトさんは心から敬意を示すように、しみじみとした様子で胸に手を当てて一呼吸置いた。
「ところで陛下、その白猫は?」
先ほどから私を気にしていたハーロルトさんから話題を振られると、反射的に返事をしてしまった。
「に、にゃーん」
「ほぉ。聞いたことがないほどユニークな鳴き方をする猫ですね。喉の調子が悪いのですか?」
「いや、普段通りだ」
「そうでしたか。こんなに愛らしい個性の鳴き方をする猫なんて、はじめて見ましたよ。……おや。不思議と体が楽になった気がします」
「ああ。つい仕事を増やしたがる誰かのことを放っておけず、癒してくれたのだろう」
私が祈力を使ったことに、ディルは気づいていたらしい。
ハーロルトさんも体調が整ったことを実感したのか、驚いた様子で私を見た。
「なんと、そんな力を持っているのですか? その猫はやさしさと神秘性の感じられる美しい容姿だと思っていましたが……おかげですっかり癒されたようです」
明るい口ぶりのハーロルトさんは、顔色もよくなっている。
「しかし陛下は猫が嫌いでしたね。どうぞこちらへ」
いい笑顔をしたハーロルトさんが、両手を差し伸べてきた。
「ハーロルト、手を下ろすといい。その必要は万が一にもない」
「そんな、少しくらい……。おや、こっちを見ましたよ! これは『ハーさんなら、だっこしていいにゃん!』の合図では?」
「ネコ科を抱きたいのなら、ハーロルトの領地に生息しているラグガレドタイガーがいただろう」
「あれは陛下の強さがあるからこそ、遭遇した猛獣もおとなしくしていただけです! 私だけでしたら、いいおもちゃにされるところでしたよ。ほら、白猫ちゃんも『怖がりなハーさんには私がちょうどいいにゃん!』と言ってそうな、なんともかわいい顔ではありませんか!」
「誤解しているようだが、この白猫は魔帝すら恐れるほどの力量だぞ」
「……え?」
「なによりこの白猫は俺の主だ。従僕として、主を軽々しく扱われるつもりはない」
ん、陛下?
「ハーロルト、突然行方をくらませてすまなかった」
ハーロルトと呼ばれた男性は忙しいのか疲れた顔だったけど、ディルを見つめるその表情はほっとしていた。
「いえ。陛下の特異体質については理解しております」
「すまないな」
「とんでもない。敬愛する陛下が……私の命の恩人であるディルベルト様がご無事に帰還されたことは、私にとって望外の喜びですから。さぁ、こちらへどうぞ」
ハーロルトさんは颯爽と立ち上がると、ディルを執務机のそばにある応接用の席に案内する。
私も長椅子に腰かけたディルの膝の上に、お行儀よく座ることとなった。
陛下って、あの魔帝と恐れられるラグガレド帝国の皇帝だと思うんだけど……。
つまり、ディルは世界中から怖がられているあの魔帝陛下ってこと?
色々聞きたいことがあるけれど、ハーロルトさんがいるので声は出さずに、ディルに視線で訴える。
ディルは「わかった」というように頷いてから、私の好きな首回りを撫でてくれた。
伝わってない。
「ハーロルトも予想しているだろうが、また意識を失っていた。今回は戻るのにも時間がかかった。悪かったな」
「ご安心ください。ご存じの通り今も影武者が複数待機して、あなたの代わりを務めています。陛下のためですから、誰もが最高の働きをしております。不在の間に問題もありません」
「ああ、助かっている。ハーロルトの人物選定は的確で、帝国は優れた人物を導入できている」
「私には身に余るお言葉です。陛下こそ不調を抱える中、無理を承知で魔帝として君臨してくださっているのです。それだけでなく自身が不在でも国の運営が滞らない仕組みまで考えられて……あなたは素晴らしい賢帝です」
ハーロルトさんは心から敬意を示すように、しみじみとした様子で胸に手を当てて一呼吸置いた。
「ところで陛下、その白猫は?」
先ほどから私を気にしていたハーロルトさんから話題を振られると、反射的に返事をしてしまった。
「に、にゃーん」
「ほぉ。聞いたことがないほどユニークな鳴き方をする猫ですね。喉の調子が悪いのですか?」
「いや、普段通りだ」
「そうでしたか。こんなに愛らしい個性の鳴き方をする猫なんて、はじめて見ましたよ。……おや。不思議と体が楽になった気がします」
「ああ。つい仕事を増やしたがる誰かのことを放っておけず、癒してくれたのだろう」
私が祈力を使ったことに、ディルは気づいていたらしい。
ハーロルトさんも体調が整ったことを実感したのか、驚いた様子で私を見た。
「なんと、そんな力を持っているのですか? その猫はやさしさと神秘性の感じられる美しい容姿だと思っていましたが……おかげですっかり癒されたようです」
明るい口ぶりのハーロルトさんは、顔色もよくなっている。
「しかし陛下は猫が嫌いでしたね。どうぞこちらへ」
いい笑顔をしたハーロルトさんが、両手を差し伸べてきた。
「ハーロルト、手を下ろすといい。その必要は万が一にもない」
「そんな、少しくらい……。おや、こっちを見ましたよ! これは『ハーさんなら、だっこしていいにゃん!』の合図では?」
「ネコ科を抱きたいのなら、ハーロルトの領地に生息しているラグガレドタイガーがいただろう」
「あれは陛下の強さがあるからこそ、遭遇した猛獣もおとなしくしていただけです! 私だけでしたら、いいおもちゃにされるところでしたよ。ほら、白猫ちゃんも『怖がりなハーさんには私がちょうどいいにゃん!』と言ってそうな、なんともかわいい顔ではありませんか!」
「誤解しているようだが、この白猫は魔帝すら恐れるほどの力量だぞ」
「……え?」
「なによりこの白猫は俺の主だ。従僕として、主を軽々しく扱われるつもりはない」
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