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3・夕暮れと逢瀬
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優美な白レンガで形作られた王都の街並みが、斜陽でかげりゆく。
アロンはそれを、淡い水色のドレスで着飾った色白の姫と並んで眺めていた。
「わたくし、侍女からこの橋で恋人と夕日を眺めたという話を聞いて……。それからずっと、好きになった方と一緒に、ここに来てみたいと、切に願っていましたの」
都を見下ろせる小高い橋の上から、姫は楽しそうに微笑む。
背後には、アロンと姫の視界に入らないように、紺を基調とした詰襟にマントをまとった数名の近衛兵たちが控えていた。
「わたくしね、最近、アロンのことばかり考えて、食事も喉を通らなくなってしまって……城の侍女たちからはもともと、羨ましがられるくらい細いのに……これ以上は心配なの。だってアロンが細身の女性を嫌いだったら、どうしようって。笑われるかもしれないけれど、本当に、真剣に悩んでいるの」
アロンは、ふんわりとしたドレスをぴたりと着こなした姫から目をそらし、夕日を眺めた。
「そんなことは、些細なことです。私はどちらでも、あなたはあなたのままが、一番美しいと思っています」
「優しいのね、アロン。でも本当は、どちらが好みなの?」
「姫は私のことをよく知っているから、当ててしまうと思います」
「もしかして……細身の方かしら」
「やっぱり気が付かれていましたか。リュシャーヌ姫は、なんでもお見通しですね」
「もう、アロンったら。まだ、冷たい言い方するのね。リュシーで呼んで?」
「リュシー」
姫は幸せそうに微笑んだ。
夕暮れの都を見つめながら、アロンは感傷的な気分になる。
姫は首をかしげて、アロンの肩にしなだれかかる。
「トレブ砂漠で見ることのできる、砂泉のバラを一目見たくて、お供を連れて行ってみたけれど……サンドワームと言ったかしら。あんな恐ろしい生き物、はじめてみたわ。アロンのお父様も、魔物討伐をしていた戦士様だったのでしょう? 英雄の血筋なのね、あなたは本当に強くて素敵だった」
「……私よりも、あなたについていた騎士たちが活躍してくれましたから。それに、炎術師の援護もありましたし」
「そんな人、いなかったわ。それに騎士たちはみんな役に立たなかったし、あの時、迫りくるあの魔物を前に、わたくしは恐ろしさのあまり動けなかった。アロンがいなかったら私、どうなっていたか……!」
姫は感情的な様子で、アロンに抱きついた。
そのずっしりとした重みを受け止めると、アロンの腕の中で姫は幸せそうに笑う。
「でも、わたくしを助けた褒美に、『姫を妻にしたい』以外はいらないなんて……お父様も、驚いていたわね」
「……そのことは、失礼しました」
「いいの。わたくしもびっくりしたけれど、嬉しかったわ。でもね、本当は会った時から、そんな予感もあった気がするの。きっと運命って、こういうことなのね」
アロンはそれを、淡い水色のドレスで着飾った色白の姫と並んで眺めていた。
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都を見下ろせる小高い橋の上から、姫は楽しそうに微笑む。
背後には、アロンと姫の視界に入らないように、紺を基調とした詰襟にマントをまとった数名の近衛兵たちが控えていた。
「わたくしね、最近、アロンのことばかり考えて、食事も喉を通らなくなってしまって……城の侍女たちからはもともと、羨ましがられるくらい細いのに……これ以上は心配なの。だってアロンが細身の女性を嫌いだったら、どうしようって。笑われるかもしれないけれど、本当に、真剣に悩んでいるの」
アロンは、ふんわりとしたドレスをぴたりと着こなした姫から目をそらし、夕日を眺めた。
「そんなことは、些細なことです。私はどちらでも、あなたはあなたのままが、一番美しいと思っています」
「優しいのね、アロン。でも本当は、どちらが好みなの?」
「姫は私のことをよく知っているから、当ててしまうと思います」
「もしかして……細身の方かしら」
「やっぱり気が付かれていましたか。リュシャーヌ姫は、なんでもお見通しですね」
「もう、アロンったら。まだ、冷たい言い方するのね。リュシーで呼んで?」
「リュシー」
姫は幸せそうに微笑んだ。
夕暮れの都を見つめながら、アロンは感傷的な気分になる。
姫は首をかしげて、アロンの肩にしなだれかかる。
「トレブ砂漠で見ることのできる、砂泉のバラを一目見たくて、お供を連れて行ってみたけれど……サンドワームと言ったかしら。あんな恐ろしい生き物、はじめてみたわ。アロンのお父様も、魔物討伐をしていた戦士様だったのでしょう? 英雄の血筋なのね、あなたは本当に強くて素敵だった」
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「そんな人、いなかったわ。それに騎士たちはみんな役に立たなかったし、あの時、迫りくるあの魔物を前に、わたくしは恐ろしさのあまり動けなかった。アロンがいなかったら私、どうなっていたか……!」
姫は感情的な様子で、アロンに抱きついた。
そのずっしりとした重みを受け止めると、アロンの腕の中で姫は幸せそうに笑う。
「でも、わたくしを助けた褒美に、『姫を妻にしたい』以外はいらないなんて……お父様も、驚いていたわね」
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