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10・遺物探し
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「エドランが始めた錬金術は瞬く間に普及して、五百年ほど前は魔法より錬金が栄えるくらいだった。だけど魔力をかなり消費するから、暴発するほど強い魔力を持っている彼でなければ潤沢には錬金できなかったようだな。それに時代が進むにつれて人間の魔力は弱まったから、錬金術は自然と廃れてしまった」
ワクワクして聞いていた私は、結末にため息をついた。
「目覚めるの、五百年くらい遅かったわ。もしその時代だったら、私は千年も語り継がれる厄災の王女じゃなくて、色々作って楽しそうな錬金術師になれたかもしれないのに……」
「そうか。錬金釜があればいいよな」
「えっ! もしかして、今も作られているの?」
「あるにはあるけど、魔力の強い人がほとんどいないから、一般向けの錬金釜の製造はされていないんだ。もし手に入っても、リシアほどの魔力だと釜自体が耐えられなくて破壊されるだろうな」
「私の魔力、結局破壊に行き着くのね……」
「探すか」
「探す?」
「次は錬金時代の遺跡を狙って、錬金釜の遺物探しをすればいい。だからそんな顔するなよ」
「簡単に言うけど、すぐ見つかるものなの?」
「まさか。でもリシアには必要なんだろ? それなら見つけるだけだろ」
レオルは当然のように言うので、私は言葉に詰まる。
だって私が今までプレゼントされた物といえば、元婚約者からの最先端の毛虫のぬいぐるみや、考案されたばかりらしい処刑用の毒で、魔法を使いたくて習得に没頭していた時も、周囲は冷ややかだった。
そのせいか、レオルが次々と私の望みを叶えようとしてくれることが、とにかく不思議に思える。
以前ならルネ以外は気に留めなかった私の手だって、先ほどレオルがずっとマジックハーブで包んでくれていたおかげで、赤く擦り切れていた傷も綺麗になっていた。
親切なのかいじわるなのか、よくわからないけれど。
だけどやっぱり、嬉しいわ。
「レオル、ありがとう」
「まだ見つかってないだろ」
「見つかるわ。あなたがいるもの」
自信を持って言うと、レオルは機嫌よさそうに微笑んだ。
「マジックハーブ、結構採ったな」
私は青々としたハーブをレオルに渡しながら、ふと彼の背後に目を留めた。
草地の中にぽつんと、私の腕では抱えきれないほどの大きさもある、硬質な塊が横たわっていた。
岩というより人工物に思えるそれに近づいてみると、高さは私の腰の辺りまであって、絵本で見た魔女の釜によく似ている。
口を上にして起こすと、鉱物なのか粘土なのか、しっとりと不思議な手触りだった。
「レオル、これ何かしら」
その時、私の触れている所を中心に白い光の紋様が浮かび上がり、それは釜全体に巡っていく。
すると泥だらけだった釜の汚れが溶け落ち、磨かれたように綺麗になった。
釜はなおも光を放ち続け、その紋様からまばゆい粒子が舞い上がって集まると、見覚えのある半透明の猫が形作られた。
私を助けようとしてくれた、あの金色の猫。
「……ディノ?」
ワクワクして聞いていた私は、結末にため息をついた。
「目覚めるの、五百年くらい遅かったわ。もしその時代だったら、私は千年も語り継がれる厄災の王女じゃなくて、色々作って楽しそうな錬金術師になれたかもしれないのに……」
「そうか。錬金釜があればいいよな」
「えっ! もしかして、今も作られているの?」
「あるにはあるけど、魔力の強い人がほとんどいないから、一般向けの錬金釜の製造はされていないんだ。もし手に入っても、リシアほどの魔力だと釜自体が耐えられなくて破壊されるだろうな」
「私の魔力、結局破壊に行き着くのね……」
「探すか」
「探す?」
「次は錬金時代の遺跡を狙って、錬金釜の遺物探しをすればいい。だからそんな顔するなよ」
「簡単に言うけど、すぐ見つかるものなの?」
「まさか。でもリシアには必要なんだろ? それなら見つけるだけだろ」
レオルは当然のように言うので、私は言葉に詰まる。
だって私が今までプレゼントされた物といえば、元婚約者からの最先端の毛虫のぬいぐるみや、考案されたばかりらしい処刑用の毒で、魔法を使いたくて習得に没頭していた時も、周囲は冷ややかだった。
そのせいか、レオルが次々と私の望みを叶えようとしてくれることが、とにかく不思議に思える。
以前ならルネ以外は気に留めなかった私の手だって、先ほどレオルがずっとマジックハーブで包んでくれていたおかげで、赤く擦り切れていた傷も綺麗になっていた。
親切なのかいじわるなのか、よくわからないけれど。
だけどやっぱり、嬉しいわ。
「レオル、ありがとう」
「まだ見つかってないだろ」
「見つかるわ。あなたがいるもの」
自信を持って言うと、レオルは機嫌よさそうに微笑んだ。
「マジックハーブ、結構採ったな」
私は青々としたハーブをレオルに渡しながら、ふと彼の背後に目を留めた。
草地の中にぽつんと、私の腕では抱えきれないほどの大きさもある、硬質な塊が横たわっていた。
岩というより人工物に思えるそれに近づいてみると、高さは私の腰の辺りまであって、絵本で見た魔女の釜によく似ている。
口を上にして起こすと、鉱物なのか粘土なのか、しっとりと不思議な手触りだった。
「レオル、これ何かしら」
その時、私の触れている所を中心に白い光の紋様が浮かび上がり、それは釜全体に巡っていく。
すると泥だらけだった釜の汚れが溶け落ち、磨かれたように綺麗になった。
釜はなおも光を放ち続け、その紋様からまばゆい粒子が舞い上がって集まると、見覚えのある半透明の猫が形作られた。
私を助けようとしてくれた、あの金色の猫。
「……ディノ?」
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