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24・後押し(オルドー視点)
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「随分大切にしているようだけど、安心しない方が良いぞ」
「なんだよ急に」
「考えてみろよ。あんなに綺麗で、才能があって、人と距離を置いているヘリンやイライナに慕われるような人なんだぞ。彼女の噂も広まっているし。あちこちから男が寄って来るかもな」
レオルは何か考えた様子で顎に手を当てる。
「確かにそれは、その男たちの首が吹っ飛ばされないか心配だな……」
「首? さっきからどういう意味だ? まさかあんな細身でリシアは武闘派なのか?」
「そうではないけれど、リシアは目的のためなら何でもやる女だと思っていてくれればいいよ」
「待て。撃退とは限らないだろ? 独り身の彼女を真剣に口説く男が出てきてもいいのか? それでリシアに恋心が芽生えたとしても自然だろ」
レオルの眉間にしわが寄った。
俺は馬車酔いに耐えて、かわいい弟分のために詰めておく。
「どうなんだ、レオル。いつもの涼しい顔して、おめでとうって言ってやれるのか?」
「それは……ものすごく嫌だな」
ものすごく嫌なのか。
女嫌いのくせに、悩ましげな表情でかわいいこと言いやがって。
俺たちが子どもだった頃、木に留まっていた甲虫を採り逃した時に見せた、レオルの悲しげな顔を思い出したじゃないか。
かわいい時代の思い出に気分がのってきたので、もう少し押してやることにする。
もちろん俺が楽しいからというわけではなく、レオルへの思いやりからだ。
「リシアもレオルのことを信頼しているからここまで来てくれたんだ。きちんと関係を作っておいた方が、彼女だって安心だと思うぞ」
「それはどうかな……」
「歯切れ悪いな。自信がないのか」
「ない」
「ない? 彼女、他に相手がいるとか?」
「いや。さっき言っただろ。リシアは色々あって、思うように生きることが出来なかったんだ。俺があれこれ制限するのは気が進まないし。それにリシアも、俺とは少し距離を置きたいはずだから」
「リシアが? 俺にはそんな風には全く見えなかったが」
「見えるだろ」
レオルはやけに後ろめたいような顔をしている。
妙だな。
だけど俺は、レオルがリシアを連れて来た時、聞かなくても恋人同士だと疑いもしなかったのに。
リシアに対しての思いが強すぎて、臆病になっているのかもしれないな。
その悩んでいる姿がいつもの三割増しでかわいいし、珍しくレオルが気を許している女性のようだし。
別に、俺が楽しいからというわけではないが、どうにか後押ししてやりたくなる。
「レオル、大丈夫だ。彼女はお前を信じてこんな異国の地まで来てくれたんだ。きっとうまくいくよ。過ごす期間が長くなるうちに、気持ちも芽生えてくるしさ。俺とヘリンみたいに」
「お前みたいな優しい奴だったら、そうかもしれないけど……」
「ん? なんだレオル。リシアにいじわるでもしてるのか」
レオルが気まずそうに黙ってるので、俺も少し呆れる。
「何してるんだよ」
「癖、直らなくて……」
ん?
レオルになにか悪癖あったか?
「なんだよ急に」
「考えてみろよ。あんなに綺麗で、才能があって、人と距離を置いているヘリンやイライナに慕われるような人なんだぞ。彼女の噂も広まっているし。あちこちから男が寄って来るかもな」
レオルは何か考えた様子で顎に手を当てる。
「確かにそれは、その男たちの首が吹っ飛ばされないか心配だな……」
「首? さっきからどういう意味だ? まさかあんな細身でリシアは武闘派なのか?」
「そうではないけれど、リシアは目的のためなら何でもやる女だと思っていてくれればいいよ」
「待て。撃退とは限らないだろ? 独り身の彼女を真剣に口説く男が出てきてもいいのか? それでリシアに恋心が芽生えたとしても自然だろ」
レオルの眉間にしわが寄った。
俺は馬車酔いに耐えて、かわいい弟分のために詰めておく。
「どうなんだ、レオル。いつもの涼しい顔して、おめでとうって言ってやれるのか?」
「それは……ものすごく嫌だな」
ものすごく嫌なのか。
女嫌いのくせに、悩ましげな表情でかわいいこと言いやがって。
俺たちが子どもだった頃、木に留まっていた甲虫を採り逃した時に見せた、レオルの悲しげな顔を思い出したじゃないか。
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もちろん俺が楽しいからというわけではなく、レオルへの思いやりからだ。
「リシアもレオルのことを信頼しているからここまで来てくれたんだ。きちんと関係を作っておいた方が、彼女だって安心だと思うぞ」
「それはどうかな……」
「歯切れ悪いな。自信がないのか」
「ない」
「ない? 彼女、他に相手がいるとか?」
「いや。さっき言っただろ。リシアは色々あって、思うように生きることが出来なかったんだ。俺があれこれ制限するのは気が進まないし。それにリシアも、俺とは少し距離を置きたいはずだから」
「リシアが? 俺にはそんな風には全く見えなかったが」
「見えるだろ」
レオルはやけに後ろめたいような顔をしている。
妙だな。
だけど俺は、レオルがリシアを連れて来た時、聞かなくても恋人同士だと疑いもしなかったのに。
リシアに対しての思いが強すぎて、臆病になっているのかもしれないな。
その悩んでいる姿がいつもの三割増しでかわいいし、珍しくレオルが気を許している女性のようだし。
別に、俺が楽しいからというわけではないが、どうにか後押ししてやりたくなる。
「レオル、大丈夫だ。彼女はお前を信じてこんな異国の地まで来てくれたんだ。きっとうまくいくよ。過ごす期間が長くなるうちに、気持ちも芽生えてくるしさ。俺とヘリンみたいに」
「お前みたいな優しい奴だったら、そうかもしれないけど……」
「ん? なんだレオル。リシアにいじわるでもしてるのか」
レオルが気まずそうに黙ってるので、俺も少し呆れる。
「何してるんだよ」
「癖、直らなくて……」
ん?
レオルになにか悪癖あったか?
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