【完結】厄災王女、千年後に自分の力を知る~戸惑っているので、そんなに甘やかさないでください~

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆

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27・葛藤

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 私の試作したビスケットがディノに成功した話をすると、レオルもその作戦を気に入ってくれて、オルドー様用のビスケットの材料を探しに行く話はすぐまとまった。

 その翌日、レオルと一緒に実りの高地と呼ばれる場所へ向かう。

 私は「目立たないように」ともらった地味なローブをはおり、レオルは相変わらず冒険者らしい、そして意識的に無難な服装をしているようだった。

「目立ったら、何か問題でもあるの?」

「あるよ」

 それ以上は、微笑むだけで教えてくれない。

 道中は貸し馬車を利用して、そこへ移動するまでに少し歩いた。

 あまり人には会わなかったけれど、レオルは有名人なのか、すれ違う人の好奇の視線にさらされているのがわかる。

 注目されるような、何か理由でもあるのかしら。

 微笑みむだけで教えてくれない気がしたから、聞かなかったけれど。

 だけどその理由が気になってしまうのは、昨日のディノとの会話で、レオルに恋人がいるかもしれない……という可能性がよぎるからだと思う。

 ディノが聞くのも失礼だと言い切るほど否定していたことは覚えている。

 だけどもし、もしレオルにお相手がいる場合、私は完全に邪魔者というか、レオルはきっと「私と古代史どっちが大事なの!?」みたいな修羅場を避けるために、困っている私を見捨てることができなくて、こっそりお世話をしてくれているのかもしれない……とか、ひとりで勝手に想像してしまうのだけど。

 私は沈んだ気持ちのまま、レオルが御者を務めてくれる馬車に揺られた。

 もしそうなら、会うことはできない。

 取捨選択は慣れてるし……別に、そのくらい諦めるわ。

 レオルのためだもの。

 私は隣で手綱を操っているレオルの涼やかな横顔をちらりと見る。

 だけどそういう話って、どういうタイミングで聞くのが自然なのかしら。

 全然わからないので、すぐ聞こうとしたけれど、レオルが先に口を開いた。

「リシアと一緒に外に出るの、久々だな。うるさい奴がいるから、出かけるのはあまり気乗りしなかったけれど、やっぱりいいな」

「うるさい奴? ……それって、大丈夫なの? 私の存在がその方に相当な不快感を与えている気がするのだけど」

「気にするなって。噂好きな奴らなんて、どこに行ってもいるだろ? 今日だって少し出ただけで、じろじろ見られて嫌だっただろうけど」

 ……あ、噂話をする人たちのことだったのね。

 ちょっとだけほっとしたけれど、疑念が解消したわけではない。

 聞きたくないけれど、聞くわ。

「リシア、どうかしたのか? さっきから思いつめた顔してるけど」

「レオルに恋人はいるの?」
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