【完結】厄災王女、千年後に自分の力を知る~戸惑っているので、そんなに甘やかさないでください~

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆

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22・レオルの変化(オルドー視点)

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 レオルは今も、主従関係は基本的に俺からの短期雇用アルバイトしか受けないし、勧誘の多い王都へも足を向けたがらない。

 実力を知る者たちから勧められている冒険者ギルドのランク申請も、人が寄ってくる理由になるのを嫌がりサボるくらいだ。

 そうして空いた日は、歴史書や古文書を読んだり、ふらりと旅に出かけたり……まぁ、周囲が呆れるほど色気のない生活を送っていたのだけど。

「良かったな、レオル」

「嫌味か? この悪路につき合わせておいて」

「そうじゃない。お前、ひと月以上行方をくらましてたんだぞ? とうとう古代遺跡の偉大な罠に仕留められたのかと諦めかけていたところに、ひょっこり戻って来たんだ、嬉しいに決まってるだろ。それにあんな綺麗な女性を連れて来てさ」

 しかも人に会う機会の多い俺でも、お目にかかったことのないような美人だ。

「いいだろ?」

 ぬけぬけと言いやがるその声は、彼女を思い出しているのかどことなく甘い。

 人を避けてばかりだったレオルにも、ようやく恋人ができたらしい。

「よかったな。レオルがのろけるの、初めて見たよ」

 帰ってきた時もそう思ったけれど。

 俺と妻のヘリンにその女性を……リシアを紹介している間も、彼女にだけは見たことのないような甘ったるい眼差しを向けていたし、彼女に貸すことになった別館にも暇さえあれば訪れているようだ。

 使用人たちも、レオルの変化と連れて来た謎の美女の噂に大盛り上がりで、とりあえず館内だけでもその日のうちに今最も勢いのある話題として好き勝手騒がれたようだし、近ごろは領内の人から「良かったですねぇ」と俺が言われるくらいに知れ渡っている。

「みんなが彼女に注目してるよ。レオルにとって、リシアは他の女性と違うようだから」

「ああ、違うな」

「そんな言い方、気になるだろ。どう違うんだ?」

「あいつは俺の首を本気で吹っ飛ばせる」

 ……それ、どんな比喩だ?

 俺が固まっているのを予想したように、レオルは涼しい笑顔を向けてくる。

 そういえば以前、レオルに「どんな女性が好みなのか」と、しつこく聞いてくる女に「歴史に残るほどの悪女」と言い放って撃退してたけど……あながち嘘でもなかったのか?

 つまり自分を豪快に吹っ飛ばせるような女に惚れてるんだろ?

 俺にはリシアが細身で武闘派に見えないんだが?

 というかレオルの好みが歪みすぎてないか?

 心配やら疑問やらが次々とわき上がってくるが、それはともかく。

「レオル、お前の女性の好みは全く意味が分からないけど。ともかく彼女は……リシアは遠い異国の地から来たんだろ? まだ言葉も不自由なようだし、お前と一緒に暮らした方がお互いに安心じゃないのか」

「いや、オルドーがこうやって俺に護衛を押し付けてきたり、突発的な仕事もあるから。リシアを一人にして数日空けると落ち着かないんだよ。だからお前の敷地内の別館を使わせてもらえて助かってる。ヘリンやイライナも話し相手になってくれるし」

「そのことは俺も助かっているけど」


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