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30・浮遊石
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私は肩に提げている錬金道具一式の入った収納袋を、しっかりと握りしめた。
そう、レオルと一緒にいられるからって浮ついていないで、錬金釜付属の入れ放題な収納箱を利用して、好きなだけ持ち帰る使命を忘れないようにしないと。
「私、採るわ」
「リシアが言うと、本当に採ってくれる感じがするな」
「もちろん。基本は有言実行よ」
そう宣言して、私はレオルにオルドー様の好き嫌いを教えてもらいながら、一緒に薬草や木の実、果実などを見つけて摘んでいく。
酔い止めになりそうなものも探した。
今日の馬車移動程度なら距離も短いし道も割と整っているけれど、オルドー様は色々な地域に移動するので、悪路を通るしかない時など、馬車酔いに苦しんでいるとレオルは言った。
「これでオルドーが携帯食を食べるようになれば、周囲はほっとするよ。あいつ、生真面目に働きたがるくせに、好き嫌いに関しては子どもみたいに開き直るから」
「そのことは、ヘリン様も心配していたわ」
「ああ、だけどリシアと話すようになってから、ヘリンも少し気が紛れるようになったって喜んでいたよ。イライナも懐いているみたいだし。リシアはここに来てから不自由ないか?」
「ずっと楽しいわ。ディノに頼まれて食べ物を作ったり、ヘリン様はこの国の……というか、この時代のことを色々教えてくれるし、イライナ様もかわいいし。それに、レオルが会いに来てくれるもの」
それにこれからも、一緒にいてもいいのよね?
先ほどの絶望が勘違いだったため、私は嬉しくてつい頬を緩めると、レオルが笑い返してくれる。
幸せ過ぎるけど、いいのかしら。
千年前とのギャップに戸惑いつつも、私は肩に下げていた袋から錬金釜付属の収納箱を出して、採った物をしまい終えた。
顔を上げると、野原のそばでそびえる岩山の、険しい迫力に目を奪われる。
「山の方に行けば、この野原とは違うものが採取できそうね」
「うーん……あの山間には浮遊石があるくらいか」
「浮遊石……石が浮いているの?」
「そう。石が浮いてるだけ」
「おもしろそうね。見に行かない?」
「いや。浮遊石自体が危険なわけではないけれど、あちこち浮いている物が強風でぶつかり合うと、連鎖的に無数の石が飛び回って、巻き込まれる可能性があるから」
「危ないのね。それなら、人はあまり近づかないの?」
「山間の奥に炭鉱跡があるから、冒険者が採取へ向かうのに通る程度だな。浮遊石は加工が難しいし、欲しがる人なんてほとんどいないんだ。隣国では岩を破壊したり戦争や魔獣討伐用の爆薬にする技術があったはずだけれど、使い道なんてその程度だろうだな」
「おもしろそうね。浮遊石を加工すれば爆薬が作れるの?」
「待て。最高品質の爆薬はいらないからな」
「ダメかしら? 危険なものはまだ作ったことがないけれど、いずれ挑戦してみたいわ」
「作ってどうする。リシア、そんな期待に満ちた目をしても、俺は山間に連れて行かないからな。一人で行くのもやめてくれよ」
浮遊石、見てみたかったけれど。
レオルがいつもの心配性を発揮しているし、行くのはやっぱり無理なのかしら。
思い悩む私の視界の端を、何かの影がレオルに向かって素早く横切った。
そう、レオルと一緒にいられるからって浮ついていないで、錬金釜付属の入れ放題な収納箱を利用して、好きなだけ持ち帰る使命を忘れないようにしないと。
「私、採るわ」
「リシアが言うと、本当に採ってくれる感じがするな」
「もちろん。基本は有言実行よ」
そう宣言して、私はレオルにオルドー様の好き嫌いを教えてもらいながら、一緒に薬草や木の実、果実などを見つけて摘んでいく。
酔い止めになりそうなものも探した。
今日の馬車移動程度なら距離も短いし道も割と整っているけれど、オルドー様は色々な地域に移動するので、悪路を通るしかない時など、馬車酔いに苦しんでいるとレオルは言った。
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「ああ、だけどリシアと話すようになってから、ヘリンも少し気が紛れるようになったって喜んでいたよ。イライナも懐いているみたいだし。リシアはここに来てから不自由ないか?」
「ずっと楽しいわ。ディノに頼まれて食べ物を作ったり、ヘリン様はこの国の……というか、この時代のことを色々教えてくれるし、イライナ様もかわいいし。それに、レオルが会いに来てくれるもの」
それにこれからも、一緒にいてもいいのよね?
先ほどの絶望が勘違いだったため、私は嬉しくてつい頬を緩めると、レオルが笑い返してくれる。
幸せ過ぎるけど、いいのかしら。
千年前とのギャップに戸惑いつつも、私は肩に下げていた袋から錬金釜付属の収納箱を出して、採った物をしまい終えた。
顔を上げると、野原のそばでそびえる岩山の、険しい迫力に目を奪われる。
「山の方に行けば、この野原とは違うものが採取できそうね」
「うーん……あの山間には浮遊石があるくらいか」
「浮遊石……石が浮いているの?」
「そう。石が浮いてるだけ」
「おもしろそうね。見に行かない?」
「いや。浮遊石自体が危険なわけではないけれど、あちこち浮いている物が強風でぶつかり合うと、連鎖的に無数の石が飛び回って、巻き込まれる可能性があるから」
「危ないのね。それなら、人はあまり近づかないの?」
「山間の奥に炭鉱跡があるから、冒険者が採取へ向かうのに通る程度だな。浮遊石は加工が難しいし、欲しがる人なんてほとんどいないんだ。隣国では岩を破壊したり戦争や魔獣討伐用の爆薬にする技術があったはずだけれど、使い道なんてその程度だろうだな」
「おもしろそうね。浮遊石を加工すれば爆薬が作れるの?」
「待て。最高品質の爆薬はいらないからな」
「ダメかしら? 危険なものはまだ作ったことがないけれど、いずれ挑戦してみたいわ」
「作ってどうする。リシア、そんな期待に満ちた目をしても、俺は山間に連れて行かないからな。一人で行くのもやめてくれよ」
浮遊石、見てみたかったけれど。
レオルがいつもの心配性を発揮しているし、行くのはやっぱり無理なのかしら。
思い悩む私の視界の端を、何かの影がレオルに向かって素早く横切った。
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