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51・夜のピクニック
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とうとう、私がどうしても欲しくて作っていた物が完成した。
「フィリシア、長い道のりだったけど、おめでとう! 僕も完成するの、とっても楽しみにしていたんだ!」
知っているわ。
なかなか上手くいかなくて投げ出したくなっていたディノのやる気を持ち上げるために、完成したら彼の好きなショートケーキをホールで作る約束をしたのだから。
「ふふふ、見ていて心がわし掴みにされる、本当に素晴らしい出来だなぁ」
「そ、そうかしら……」
はしゃいでいるディノの側には、彼の顔とは似ても似つかない作り立てのケーキが、ゾンビ猫スペシャルな見た目で異彩を放っている。
もう二度と道を踏み外さないと、固く誓っていたはずなのに……。
欲しかったものがようやく完成したという高揚感があって、ディノにねだられるままつい、禁じていた芸術に手を出してしまった。
「こんな僕にまた会えるなんて……うううっ! 食べるのが惜しい、惜しいけど食べる! だって今日はお祝いなんだ!」
伝説の錬金術師の趣味満載な魔法士の衣装を着てはしゃぐディノはかわいいけれど、私の生み出したケーキの姿がおぞましくて素直に喜べない。
「ディノ、出来ればそのゾンビ猫……いえ、ディノの顔をしたはずのケーキを私の視界に入らないところにしまってくれるかしら」
「ふふ、わかってるよぉ。今日は完成記念とお披露目の夜のピクニックだもん、フィリシアも早く行きたいよね!」
都合良く勘違いしてくれたディノは、うきうきしながら錬金釜付属の収納箱にあの物体をしまってくれた。
さらに収納袋に錬金釜や収納箱を片付けたり、しっぽを振りながら出かける準備もし始める。
「ところで完成したあれ、ぶっ放すのはフィリシアがするの?」
「そうね、上手く行くかしら。楽しみだわ」
「だけどレオルが知ったら、危ないって心配しそうだなぁ……そうだ! レオルにやってもらえばいいよぉ」
「私が危ないのならレオルも危ないわ。そうよ、ディノは本体の錬金釜が壊れなければ、身体を真っ二つにしても平気なのよね?」
「僕? 僕はケーキを堪能するのに忙しいからなぁ」
「忙しいのは構わないけれど、あのゾンビ猫……ケーキはレオルに見せないで欲しいわ」
「ふふふ、つまり僕がひとり占めしていいってことだよね? ああ、早く食べたいなぁ……後はレオルを待つだけだけど、いつ来るんだろう?」
「夜には帰って来るって言ってたから、そろそろのはずだけど」
レオルは珍しく、久々に話したい人がいるからと、王都の方へ出かけると言っていた。
それと関係あるのかはわからないけれど、レオルはコシマさんの家でフロイデンという名の青年と会い、アドレと呼ばれたあの日から、考え事が増えていた。
それに私の携帯ビスケットのレシピ簡略化も完成して、あとは契約を交わすだけになったのに、その話になるたび、何か言いたそうにしてやめるのも気にかかる。
レオルは昔のことはあまり話さないし、もしかしたらそのことを隠していて悩んでいるのかもしれない。
私に何か出来ることがあればいいのだけど……。
玄関から呼び鈴の音がして振り返ると、ディノが鋭く呟く。
「フィリシア、長い道のりだったけど、おめでとう! 僕も完成するの、とっても楽しみにしていたんだ!」
知っているわ。
なかなか上手くいかなくて投げ出したくなっていたディノのやる気を持ち上げるために、完成したら彼の好きなショートケーキをホールで作る約束をしたのだから。
「ふふふ、見ていて心がわし掴みにされる、本当に素晴らしい出来だなぁ」
「そ、そうかしら……」
はしゃいでいるディノの側には、彼の顔とは似ても似つかない作り立てのケーキが、ゾンビ猫スペシャルな見た目で異彩を放っている。
もう二度と道を踏み外さないと、固く誓っていたはずなのに……。
欲しかったものがようやく完成したという高揚感があって、ディノにねだられるままつい、禁じていた芸術に手を出してしまった。
「こんな僕にまた会えるなんて……うううっ! 食べるのが惜しい、惜しいけど食べる! だって今日はお祝いなんだ!」
伝説の錬金術師の趣味満載な魔法士の衣装を着てはしゃぐディノはかわいいけれど、私の生み出したケーキの姿がおぞましくて素直に喜べない。
「ディノ、出来ればそのゾンビ猫……いえ、ディノの顔をしたはずのケーキを私の視界に入らないところにしまってくれるかしら」
「ふふ、わかってるよぉ。今日は完成記念とお披露目の夜のピクニックだもん、フィリシアも早く行きたいよね!」
都合良く勘違いしてくれたディノは、うきうきしながら錬金釜付属の収納箱にあの物体をしまってくれた。
さらに収納袋に錬金釜や収納箱を片付けたり、しっぽを振りながら出かける準備もし始める。
「ところで完成したあれ、ぶっ放すのはフィリシアがするの?」
「そうね、上手く行くかしら。楽しみだわ」
「だけどレオルが知ったら、危ないって心配しそうだなぁ……そうだ! レオルにやってもらえばいいよぉ」
「私が危ないのならレオルも危ないわ。そうよ、ディノは本体の錬金釜が壊れなければ、身体を真っ二つにしても平気なのよね?」
「僕? 僕はケーキを堪能するのに忙しいからなぁ」
「忙しいのは構わないけれど、あのゾンビ猫……ケーキはレオルに見せないで欲しいわ」
「ふふふ、つまり僕がひとり占めしていいってことだよね? ああ、早く食べたいなぁ……後はレオルを待つだけだけど、いつ来るんだろう?」
「夜には帰って来るって言ってたから、そろそろのはずだけど」
レオルは珍しく、久々に話したい人がいるからと、王都の方へ出かけると言っていた。
それと関係あるのかはわからないけれど、レオルはコシマさんの家でフロイデンという名の青年と会い、アドレと呼ばれたあの日から、考え事が増えていた。
それに私の携帯ビスケットのレシピ簡略化も完成して、あとは契約を交わすだけになったのに、その話になるたび、何か言いたそうにしてやめるのも気にかかる。
レオルは昔のことはあまり話さないし、もしかしたらそのことを隠していて悩んでいるのかもしれない。
私に何か出来ることがあればいいのだけど……。
玄関から呼び鈴の音がして振り返ると、ディノが鋭く呟く。
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