【完結】厄災王女、千年後に自分の力を知る~戸惑っているので、そんなに甘やかさないでください~

入魚ひえん@発売中◆巻き戻り冤罪令嬢◆

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44・別の手立て(ヘイグリッド視点)

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 私がレオルの出自について知っていると勘付かれて逃げられるのは惜しいので、オルドーの望み通り、レオルは煩わしい者の多い王都に近づけないまま、このハーキス領内てもとに置いておきたい。

「領民思いの君のことだ、その衝撃を緩和する石も生産するんだろ?」

「ええ、予定はしていますが、携帯食と比べても複雑な作りなので。まだ簡略化するまでには至らず、試作段階ですが」

「生産への出資は惜しまない。私に任せてくれないか?」

「いえ、これは私がやることを条件に通った話なので」

「妬けるじゃないか。その石を作った方は、ずいぶん君に惚れ込んでいるようだな。私が会うことは?」

「それは……」

「もしかすると、リシアは私のことが嫌いなのか?」

 オルドーの表情に、さっと緊張が走った。

「義父上、どうしてリシアのことを……?」

「イライナがハンドクリームを塗ってくれた時、嬉しそうに教えてくれたよ。リシアが素晴らしいものをたくさん作ってくれるとね」

 オルドーは絶句している。

 私に多少警戒を解いているとしても、その驚愕の表情は気を許し過ぎていると思うが。

 イライナがリシアのことを話し始めた時、ヘリンが慌てて連れて行ったことでも感じたが、どうやら夫婦そろって私に隠しごとをしているらしい。

「彼女はレオルの恋人なんだろう? 私にも紹介してくれよ。私もレオルの武勇には何度も世話になっているし、悪いようにはしないさ」

「ええ、その……それは、レオルが妬くから難しいと……」

「ほぅ、あのレオルが?」

 彼は言い寄って来る女を、絶対零度の眼差しで追い払う技を持っていた記憶もあるが、領民たちが喜々と話す噂話もあながち間違いではないようだ。

「義父上、これは嘘のような本当の話で。レオルはリシアを連れて来てからべた惚れでかわいい奴になりまして。彼女を本当に大切にしていて、少し寂しい気もしますが嬉しいと言いますか」

 オルドーがにやにや語りだしたのは、少し気味が悪いくらいだが。

 下手に押すと、レオルが彼女を連れて行方をくらます可能性もありそうだ。

 手放すのは得策ではない。

「私が会いたい話は二人に伝えてくれ。衝撃緩和石の生産は信頼できる君に任せるのは構わないが、私にも経過は伝えて欲しい。もちろん、私に手伝えることがあれば遠慮せず言ってくれ」

「ありがとうございます。伝えておきます」

 オルドーは形だけの礼を言うと、とりあえず避けたい話題が終わったことに胸を撫で下ろしている。

 さて、次はあのレオルのお気に入り……「リシア」を少し調べておきたいところだが。

 親としては寂しいかな、娘と婿には警戒されているようだし、別の手立てが必要かもしれない。


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