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6・森の異変
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フェアルは頷いて、肩にのる意外と重いもの──ふっくらとした体格のアドバーグの針に気を付けながら、顔を向けた。
「アドバーグ様。どうして森で倒れていたのか、事情を教えていただけませんか」
『そうか、ワシの話が聞きたいか……さて、どこから話せばよいか』
アドバーグは愛くるしい見た目に似合わず、年長者のように渋くうなる。
『ワシはこの地域の森に住むハリネズミの王子で、なかなかの美食通でもある。お気に入りの木から実をもらう交渉をするため、木の言語を習得するほど勉強熱心なのだぞ。だからおまえとも……木の精霊言語を操る、ドライアドのフェアルとも話せるのだ」
「そうなのですか」
『そうなのだ』
フェアルは人の言葉で相槌を打ったが、ドライアドの力のためか、ハリネズミであるアドバーグにも、問題なく言葉が通じている。
『ワシはあの日も、巣穴から少し離れた穴場に行き、お気に入りの木の実を100個ほど食べた』
「100個! とってもおいしい木の実だったのですね」
『いいや、いつもよりずっと不味かったから、腹に入る八割ほどしか食べられなかったのだ。それなのにめまいがして、霧の中のように目がかすみ、腹が猛烈に痛くなって……』
「腹八分目で、おなかを壊されたのですか」
『いやいや。ワシくらいのレベルになると、常に限界に挑戦して食べているからな、不味かった時もまあまあ腹はいっぱいだった』
「どちらにせよ、食べ過ぎなのですね」
『そう感心するでない。しかし、腹痛に関しては、今までに経験したことのないような、尋常ではない痛みに見舞われて気を失っていたが、そこの若造がワシを見つけて介抱してくれたのでな。本来ならば、かわいい女の子でなければ断るところだが、今回は特別に世話係にしてやることにした』
「……私、アドバーク様のことが少しわかってきた気がします」
『惚れるなよ、フェアル』
フェアル側の言葉しかわからないカームは、アドバーグとフェアルのやり取りを不思議そうに眺めている。
「フェアル、そのハリネズミはなんて言っているんだ」
「えっ、ええと……」
フェアルはカームが知りたいであろう部分だけを伝えようと、頭の中で整理する。
それに、聞こえないほうが平和なこともある。
「アドバーグ様はいつもの木の実を食べていたけれど、なぜかおいしくなくて、そのあと霧の中みたいに目がかすんで、お腹が痛くなったところを、カームに助けてもらって、喜んでいるみたい」
「ふぅん……その不味くなっている木の実が気になるな。食べた場所まで、案内してもらうことはできるか?」
フェアルが伝えると、アドバーグは駄々をこね始めた。
『あんな場所、わざわざ身体を動かして移動する価値などない! 木の実も不味くなったというのに、腹を壊して本当に痛かったし、怖い! 嫌だ! 行きたくない! おまえたちはワシを無事に、森にあるハリネズミの集落に送り届ければいい!』
「ですがアドバーク様、このままだと森のすべてが、お腹を壊す不味い木の実だらけになってしまいそうなのです」
フェアルがもっともらしく適当なことを言うと、アドバーグは意外と簡単に誘導された。
『そ、それは……』
「カームはアドバーグ様のために、またおいしい木の実が食べられるように、協力したいと申しております」
『う、うむ……』
「うまく行けば、またおいしい木の実が食べられます。原因を突き止めれば、今まで以上においしい木の実がなることだって、あると思いませんか?」
アドバーグは耳をピクリと動かすと、大きな黒目を光らせた。
腹が減ってきたのか、口元によだれがにじんでいる。
『世話係であるお前たちに、そこまで頼まれては仕方がない。あの美味なる木の実を再び食べるためにも、ワシについてくるがよい!』
「アドバーグ様。どうして森で倒れていたのか、事情を教えていただけませんか」
『そうか、ワシの話が聞きたいか……さて、どこから話せばよいか』
アドバーグは愛くるしい見た目に似合わず、年長者のように渋くうなる。
『ワシはこの地域の森に住むハリネズミの王子で、なかなかの美食通でもある。お気に入りの木から実をもらう交渉をするため、木の言語を習得するほど勉強熱心なのだぞ。だからおまえとも……木の精霊言語を操る、ドライアドのフェアルとも話せるのだ」
「そうなのですか」
『そうなのだ』
フェアルは人の言葉で相槌を打ったが、ドライアドの力のためか、ハリネズミであるアドバーグにも、問題なく言葉が通じている。
『ワシはあの日も、巣穴から少し離れた穴場に行き、お気に入りの木の実を100個ほど食べた』
「100個! とってもおいしい木の実だったのですね」
『いいや、いつもよりずっと不味かったから、腹に入る八割ほどしか食べられなかったのだ。それなのにめまいがして、霧の中のように目がかすみ、腹が猛烈に痛くなって……』
「腹八分目で、おなかを壊されたのですか」
『いやいや。ワシくらいのレベルになると、常に限界に挑戦して食べているからな、不味かった時もまあまあ腹はいっぱいだった』
「どちらにせよ、食べ過ぎなのですね」
『そう感心するでない。しかし、腹痛に関しては、今までに経験したことのないような、尋常ではない痛みに見舞われて気を失っていたが、そこの若造がワシを見つけて介抱してくれたのでな。本来ならば、かわいい女の子でなければ断るところだが、今回は特別に世話係にしてやることにした』
「……私、アドバーク様のことが少しわかってきた気がします」
『惚れるなよ、フェアル』
フェアル側の言葉しかわからないカームは、アドバーグとフェアルのやり取りを不思議そうに眺めている。
「フェアル、そのハリネズミはなんて言っているんだ」
「えっ、ええと……」
フェアルはカームが知りたいであろう部分だけを伝えようと、頭の中で整理する。
それに、聞こえないほうが平和なこともある。
「アドバーグ様はいつもの木の実を食べていたけれど、なぜかおいしくなくて、そのあと霧の中みたいに目がかすんで、お腹が痛くなったところを、カームに助けてもらって、喜んでいるみたい」
「ふぅん……その不味くなっている木の実が気になるな。食べた場所まで、案内してもらうことはできるか?」
フェアルが伝えると、アドバーグは駄々をこね始めた。
『あんな場所、わざわざ身体を動かして移動する価値などない! 木の実も不味くなったというのに、腹を壊して本当に痛かったし、怖い! 嫌だ! 行きたくない! おまえたちはワシを無事に、森にあるハリネズミの集落に送り届ければいい!』
「ですがアドバーク様、このままだと森のすべてが、お腹を壊す不味い木の実だらけになってしまいそうなのです」
フェアルがもっともらしく適当なことを言うと、アドバーグは意外と簡単に誘導された。
『そ、それは……』
「カームはアドバーグ様のために、またおいしい木の実が食べられるように、協力したいと申しております」
『う、うむ……』
「うまく行けば、またおいしい木の実が食べられます。原因を突き止めれば、今まで以上においしい木の実がなることだって、あると思いませんか?」
アドバーグは耳をピクリと動かすと、大きな黒目を光らせた。
腹が減ってきたのか、口元によだれがにじんでいる。
『世話係であるお前たちに、そこまで頼まれては仕方がない。あの美味なる木の実を再び食べるためにも、ワシについてくるがよい!』
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