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ep3

ゴブリン退治2

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パールの抱擁から解放されたあと、ちょっとオカンムリのシンディに

「シンディ、機嫌直してよ」

「だったら私も抱きしめて」

パックがシンディを抱き寄せるとシンディがギュっと胸を押し付けてきた。
柔らかなシンディの胸の感触が伝わりパックが少しニヤケ顔になった。

「パック、私のときもそんな顔してたのかな。
そりゃあ、シンディが苛つくわけよね。」

「パール これは自然現象だからぼくにはどうしようも」

「パック 私と抱き合いながら他の人と話をしないでよ。もう」

シンディに足を踏まれた。

「イテテ」

「もういいわ」

シンディが離れようとするが、パックが離さない。

「シンディのこと大好きだから」

「なによ急に」

シンディの顔がみるみる赤くなってくる。
シンディがパックから目線をそらしてうつむいた。
シンディのうなじがパックの目に入り、パックも鼓動が早くなった。

「はい、ストップストップ
そこまでにして、離れなさいよ。」

パックは仁王立ちのパールに睨まれた。

グレートグリズリーの解体を済ませたミューラーとメーリールーがやってきた

「パール、またあいつをマジックバッグに入れてくれる」

メーリールーの言葉に反応してパールはパンツァーアルマジロをまずそのまましまってから、グレートグリズリーの所へかけて行った。

「みんな、ちょっと集って」

パックが集合をかけた。
パールが戻ってくるとパックが話し始めた。

「ぼくらは敵の策に踊らされてる。これはたぶん間違いない。
ゴブリンもパンツァーアルマジロもグレートグリズリーにも命令を下せる何かが居て、操ってるんだと思う。」

「全部やっつければいいだろう」

「ミューラー 今みたいにDランク以下の魔物なら挟み打ちになっても問題無いかも知れないけど、それ以上が来るかも知れない。
ぼくらが魔力を抑えて行動してたから、敵が舐めてかかってたとしたら」

「次は、もっと上位ランクの魔物が攻撃してくる。」

「シンディ その通り。
だとすると」

「どんどん厳しい戦いになるわね」
パールが口を挟んだ。

「じゃあ、どうしたらいいんだよ」

「ミューラー あんたはバカね~全く。一度引くのよ。」

「えっ 逃げ出すの」

「メーリールーの言う通り。一度引き返すのが正解だと思う。
幸い表に出れば、ぼくのアイアンスパイダーもキラービーも居るからこっちは大幅に戦力アップするからね。」

その時通路の奥からファイアーバードが現れ、いきなり火の球を撃ってきた。

「そんなもん俺には効かねぇよ」

いつぞやパックがやったようにミューラーは剣に炎の魔力を纏わせて、火の球を叩き切った。

「熱い熱い、何してくれんのよミューラー。みんなそばに居るのに火を飛び散らかして、バカじゃ無いの」

メーリールーがそう言いながら前に出て、土壁を築いた。
シンディが全員を『聖なる風』で包んだ。

メーリールーは、ミューラーの手を掴んだ。

「逃げるわよ。」

「えっ あ うん」

既に入口の方に向って走り出した仲間の背中を二人は追った。

パックはアイアンスパイダーとキラービーに念話を送った。

〈アイアンスパイダーは、入口の封鎖を解いて、これからぼくたち戻るから。
体が無理せず入れる所まで迎えに来て欲しい。〉

〈パパ、わかった。
戻るの待ってる。〉

〈キラービーたち、ぼくらの所迄、護衛に飛んできてくれ〉

〈♥〉

キラービーも了解してくれたようだ。
意思疎通はできてるが、アイアンスパイダーのように念話までは、キラービーレベルでは難しいようだ。

キラービーやアイアンスパイダーが倒した魔物を横目に見ながら、無事にパックたち『☆五芒星』パーティーは、巣の中から脱出した。


「ああ、ご無事でしたか。ゴブリンは退治できましたか。」

トンガ村の男が話しかけてきた。
パックは、少しこの男に違和感を感じた。
村人にしては、異様に高い魔力を感じる。
もしかしてと思っていると、パールがその男に

「あんたさぁ、ここで眺めてただけでしょ。依頼主気取りなの。
私たちはゴブリン退治って聞いて行ったのよ。
それなのにグレートグリズリーやパンツァーアルマジロとかもでてきたのよ。
契約と違い過ぎるわよ。
契約条項違反で、訴えてもいいんだけど、後はあなたたち村人の態度いかんよ」

「冒険者様申し訳ございません。そんな魔物まで出たんですか。
事情も知らずに軽口をたたいて失礼しました。
おっしゃる通りです。
訴えは、ご勘弁を」

「いいわよ
 訴えたりしない、その代り」

パールはいきなりその男に向けて短槍を投げつけた。

男はヒョイとパールの槍をかわした。

「な なにをされるんですか」

「しらばっくれるんじゃ無いわよ。あんたトンガ村の村人じゃないわね。」

「なぜそんなことを。わたしはトンガ村の住人ですよ。」

「ただの村人が、私の槍を避けられる訳ないわ。
それにあなたから感じる魔力からして、ゴブリン集落程度あなただけでも対処できたでしょ」

「ああ やはりバレましたか。
仕方ない。ここは一旦引くとしましょう。」

男がバックステップで距離を取ろうとした所、アイアンスパイダーのクモの巣に引っ掛かった。

「うわっ なんだこれは」

「アイアンスパイダーの巣だよ。魔物に命令出来るのは、君だけじゃないんだよ」

「くっ 殺せ」

「死なせないよ、話してもらおうか。」

男は、口の中に仕込んだ毒でも飲んだようだが、シンディの『聖なる風』が、それの効果を打ち消した。

男が、尚も舌を噛み切ろうとしたので、口も縛った。

「これじゃあ、何も聞き出せないな」ミューラーがそう言うと

〈ぼくなら心の声が聞けるよ〉

アイアンスパイダーが、提案してきた。

〈わかった、やってみて〉

パックが許可すると、アイアンスパイダーは、男の頭に何本もの鉄線(蜘蛛の糸)を突き刺した。


「うわっ グロ」シンディが目をそむけた。

〈パパ 準備出来た。何を聞くの〉

アイアンスパイダーの調べによると、男の目的は「パールの殺害」だった。
そしてこの男は、暗殺を得意とする「天の黒刃」の一員で、依頼主のことは知らなかった。
「天の黒刃」には、キリカスミモヤという3人のトップがいる。
男は、その中の靄に呼び出され指示を受けていた。
呼び出される場所は、毎回別々の場所で、そこに行くと必ず靄がかっている。
そして相手の声のみが聞こえ姿は見えない。
指示が伝えられると、靄はじょじょに薄れるが、相手の姿はやはりどこにもないそうだ。

「学院での試験の時にオーガに襲わせたのもお前か」

答えはイエスだった。

「ぼくらを常に監視してる人が居るのか」

〈それは自分には知らされていないが、我々の仲間は国中にいる〉

「ここのゴブリンの巣がある鍾乳洞内で、お前が操る最上位種は何だ」

〈オーガ2体とマッドパペット1体〉

「ここで、ぼくたちを待ち構えていたのは、お前だけか。他に仲間はいないか」

〈ここでは、俺だけだ〉

パックは、逐一アイアンスパイダーから届く念話をみんなに話して聞かせた。

「誰か他にこの男に聞きたいことある」

パールが手をあげた。
「天の黒刃では、あなたは強い方なの。」

〈王女殺害を下っ端にやらせる分けないだろう。
俺より強いのは、トップの3人だけのはずだ。〉

他に質問は誰からも出そうも無くなった。
さて、こいつをどうするか。
パックがそう思った時

〈パパ ぼく、この人間食べたい。そしたらもっと強くなれる。この人の記憶もぼくのものになる。
あとパパの魔力の入った私の仲間の卵も3つ欲しい〉

〈仲間の卵をなぜ〉
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