魔王の子

烏帽子 博

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第二章

マオの城

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タマラが旅だった頃、私は焦土となった、かつての森の中を歩いていた。

何もかもつまらない。
戦いでは私に勝てる者などいない。
お金がいっぱい有ったって、欲しい物がない。
私を見て寄ってきたりする人間は鬱陶しい。金目当てか興味本位だ。
私がどこで食事をしようと、誰と会おうといちいち追いかけて来る記者もいた。
私が買った洋服や私の髪型は流行りとなって似たような女の子が町で溢れていた。

私は小さい頃 タマラと会う前そうまだ魔人だった頃の記憶を取り戻そうとした。

私は、自分の城に住んで居たんだ。
自分の魔力と記憶を探ると城はすぐにわかった。
「リンク」は使わずに空を飛んで三日後にたどり着いた。

家主の居なかった城は、荒れていた。
かつての暮しを思い出すとそこには手下たちがいた。
自分の中の魔力を探ると、それはイメージとして湧いてきた。

イメージを元に土魔法で形を作り魔力を注ぎ込んだ

玄武・白虎・朱雀・青龍

かつての四魔将が蘇った。

彼らには城の維持管理と、外敵の排除を命じた。

城の有る場所は非常に魔素が濃い場所で、私は常に魔力に満ち食事を必要としなかった。

このまま座して老いて、朽ちるのを待とう。
そして滅びの時にまた子孫を残せばいい。
何代か後の者が、生きる意味を解き明かすまで、こうしていよう。


私は玉座に坐り目を閉じた。
そして玉座の間に結界を張り外部と遮断した。

自分の呼吸も心音もじゃまに思える

魔力だけでいい
後は無になるのだ

マオは呼吸をやめ、心臓は停止した。

普通の人間なら死んだ状態なのだろう。
しかしマオは、魔力と意識の世界で存在していた。

その姿は周りから見れば、玉座に坐り寝ているように見えただろう。
しかし、四魔将を始め誰も結界を前にして、王の間に入ることは出来なかった。

四魔将の朱雀は「俺は王の間の前でマオ様がお目覚めになるまで、ここでお守りする」と宣言した。

玄武が「俺はこの城を守る、俺は土魔法で城に成れるしな」

青龍は「俺は天翔ける龍だ、この城に近づく者は全て焼き払ってやる」

白虎は「俺はマオ様が目覚めた時には、ここを魔族の国に、いやこの世界を、魔族の世界にするんだ」



タマラは、その探知能力でマオがその魔力を消すようにした場所を特定していた。
そして、その場で新たな魔族が四体出現したことも感じてた。

でも、マオが再び私の所に来てくれるのを待つと決めたんだ。
だから自分からそこに行ったりはしないつもりだ。

それでも、この異変に関しては嫌な胸騒ぎを覚えた

タマラは、自分の感じたことをフウリンとジンそれにマリアに伝えた。

みんな何度かマオに念話を試みてみたが、誰も連絡をつけることは出来なかった。

みんなで相談した結果、マオ自らが連絡をしてくるまでは静観しようと言うことになった。

白虎はその間、ちゃくちゃくと配下の魔物を増やして行った。


それから2年後


タマラは、キャロ、ラディッシュを連れてマリウポの町に来ていた。
タマラは、マオのことを何でもいいから知りたくて、魔王城の近くの町に情報を求めてやってきたのだ。


「ラディッシュ!早くベッドに行って!」

「キャロ まだ早いよ~ぼくはまだ眠く無いし、子ども扱いするなよ。」

「いいから、行くの!
今夜は星がたくさん降ってくるわ。」


キャロはラディッシュの手を引いて
「先に休みます。タマラおやすみなさい」と行って部屋に行った。

キャロは女の子でラディッシュは男の子だが二人一緒の部屋がいいと言うので、いつもそうしている。
幼なじみで、どちらも両親は既に他界しているそうだ。
二人共に冒険者登録していて、雑用をこなして日銭を稼ぎ、夜は酒場でキャロが歌い、ラディッシュが踊ってチップをもらったり、食事をおごってもらっていたそうだ。

そういえば、今夜のようにたまにキャロがラディッシュに早く寝るように言う時がこれまでも何度かあった。
何かあるのかもしれないが、二人から言ってくるまでは、聞かないでおくつもりだ。

二人が部屋に行ってからしばらくして

カーン カーン カーン

町中に警報の鐘が鳴っている。

タマラは、それが何を意味するか即座に理解した。
元々マオが居るであろう魔王城とその周りの森にはたくさんの魔物が居るのは知っていた。

森の中では、魔物同士が潰し合い。魔物が森の外に出て来ることは稀だ。

だが 今 魔物たちはまるで共通の目的が有るかのように、一直線にこの町に次々と向かって来ているのを感じる。

おそらく数万の魔物がこの町に向かっている。

この町の警備兵や、冒険者だけでは、抑えられないだろう。

ー マオの城の森からスタンピード 数万の魔物が来るわ 応援お願い! ー

タマラは、フウリン始め、ジンやマリアに念話を送った。

キャロ達の部屋に行くと、ドアには鍵がかかっていた。

私はドアを叩きながら、叫んだ。
「わたしは町を守りに行くから。あなたたちは、部屋から出ないで!」

ドカン バリバリバリ

凄い地響きがあって、私は外に飛び出した。
さっき迄有った建物が瓦礫となり火の手があがっている。
家々の窓は爆風で破れ、もうこと切れている人や、かろうじて生き残った人などが辺りに倒れている。

私はまだ助かりそうな人に駆けつけ回復魔法をかけていく。

瓦礫の中で再度爆発が起きて、家の中に居て無事だった人も外に飛び出して来ている。
無事とはいえ誰しもがどこかしら怪我をしていて血を流していたり、足を引きずっている。

爆発の有った所はクレーターになってて、クレーターの底に変った形の物が見える。
そしてその脇には人影が見える。
彼(なんとなく男性に思えた)は、見たことの無い服を着ている。
探知魔法でチェックしても、彼から魔力は感じない。

彼はぐるっと周りを見渡してから、町を攻めたてる魔物の方に飛んで向った。

なぜ魔力も無い人が飛べるのか不思議に思ったが、キャロとラディッシュが心配になり部屋に戻った。

「ヤツが来たから、もうこの星も終わりね。ベースに戻るわよ」

キャロの声が聞こえたが、そこには、顔も手足も青い人が二人居た。

「もしかしてあなたはキャロ?そしてあなたは………」

「ぼくはラディッシュだよ。ごめんタマラ、今まで言えなくて。
僕たち本当は、こことは別の星の人間なんだよ。
アイツら『ソーレン星人』に僕らの『ウクラ星』は征服されて、滅んだんだ。
僕らのように他の星に逃げ出した人以外は、みんな殺されたと思う。」

にわかには信じ難い話を青い皮膚をしたラディッシュがした。

「タマラ、私たちと一緒に逃げない?『ソーレン星人』は戦闘が大好きだから、魔族が町を襲うのを感じて、やって来たんだと思うわ。
ヤツが魔族との戦いを楽しんでる今が、逃げるチャンスなの。」

「彼からは全く魔力を感じなかったけど、そんなに強いの?」

「タマラなら、今どんなスピードで魔族が倒されていってるかわかるでしょう」

タマラは、スタンピードが起きている森に意識を向けてみた。
そこでは、魔物が蹂躪されていた。
彼が通り過ぎる跡がありありと分かる。
魔物もいない木々も無い道がどんどん出来てゆく。

蟻の行列の上をローラーで潰してるみたいな、一方的な蹂躪だ

タマラが、呆気にとられているところに、フウリンとセーラ、ジンとポコ、少し遅れて露出度の高い服を着た女性が部屋に現れた。

「私はリタ、フウリン師匠の一番弟子よ。」

「こ この方たちは?」キャロが口を開いた

「みんな私たちの味方よ、安心して。すっごく強いのよ」

「所でタマ、この状況は?魔物がどんどん減ってるみたいだが、何が起きてるんだ」

「それは私がお話しします。」
キャロが話し始めた。
「私はキャロ、そして彼がラディッシュ、私たちは、私たちはウクラ星人で、この星の人間ではありません。
ウクラ星は、今魔物を倒し回っているソーレン星人により征服されウクラ星人は滅亡しました。
彼が来た以上もうこの星も終わりです。
私たちは、別の星に避難します。
ソーレン星人の意識が魔王城の方に向いている今のうちに一緒に逃げませんか?」

「キャロ、ラディッシュ
私は逃げないわよ。
魔王城の中には、私の親友のマオがいるの。
私は、彼女を助ける。」

「決まりね。タマラを置いて逃げる人はここには居ないわ。
そのソーレン星人がどんなに強くてもね。
あなた達は、遠慮せず逃げていいわよ」

ウクラ星人の二人は、少し申し訳なさげだったが、タマラに挨拶して、姿を消した。

私たちは、魔力を消したまま、しばらく様子を見ることにした。


※※※※※※※※※※※※
ここから第2章がスタートです。
マオが悩みながらどう成長してゆくか楽しみにしてください。
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