二度目の人生は魔法使い

烏帽子 博

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命の重さ

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「怖かった。口から血を吐いて、目がどろーんとした顔が、頭から離れないよ。
モニカは平気なの?
盗賊なら、平気で殺せるの?」


「平気なわけないでしょ。
人を殺すことに、慣れるなんて無いわ。
慣れてもいけないの。」

それからは、しばらく二人とも黙って歩き続けた。


景色を見ながら歩くと
さっきあった事が嘘のようだ、
何事もなかったように、空には雲が流れている。
鳥や虫が鳴いている。
花が咲き、蝶も舞っている。

「ピシュシュピー」
「チチチチー」
小鳥の鳴き声を口真似してみた

セミが飛んで来て、足元に墜ちた。
腹を上にして、足や羽をばたつかせている。

「みんな生きている、でもみんないつか死ぬのよ。
セミは幼虫時代を何年も土の中で暮らして、地上に出て成虫になると二週間くらいで寿命が尽きるって聞いたわ
大人になると、すぐに死んじゃうのよ、でもいつまでも子どものままじゃあ居られないのよ」

「    」

ヨシヒコは、相変わらず黙りこくっている。

その日は、街道から少し入った所で野宿することにした。

霧のベールと風魔法で結界を作り出し。ヨシヒコに集めさせた小枝に火魔法で着火した。

干し肉を小枝に刺して、焚き火で炙って食べた。

食べ終わってからも、ヨシヒコは何もしゃべらなかった。

たまに小枝を焚き火にくべながら、ずっと火を眺めている。

「私はもう寝るから。お休み」

「そっちに行ってもいい?」

私は微笑んで
「いらっしゃい」と言った

こいつ、母性をくすぐるのがうまい。でも、悪い気はしない。

ヨシヒコは、そばに来て、毛布を広げて横になった

精神的にも肉体的にも疲れたんだろう、私が話しかけようと思った時には、既に寝息をたてて寝ていた。

翌朝、まだ日が昇る前、辺りが薄明かるくなる頃から小鳥が鳴き始め、その声で目が覚めた。

隣に寝てるはずのヨシヒコがいない。
私はあわてて飛び起きた。

「ヨシヒコ! ヨシヒコ!」

すると、すぐに木の陰からヨシヒコが出てきた。

「心配するじゃない!
どこ言ってたのよ!」

「ちょっと用足してただけだよ
モニカ 気持ちよさそうに寝てたから、声かけなかったんだ」

「ヨシヒコ、本当は私も人が殺されて死ぬのは、初めて見たの。
でも、もし、あなたが殺されそうになったら、躊躇なく相手を殺すつもりよ」

「嘘だね!昨日だってモニカは相手の足を狙ったじゃないか。
僕は、それで良かったと思ってるよ。
相手が盗賊でも、ぼくはモニカに人殺しになって欲しくない!」

「そんなきれいごと、どこまで通用するかしら?
紙一重の戦いになったら、躊躇したら負けよ。
死にたくなかったら、やるしかないときも、きっとあるわ」

私は、自分で言いながら、自分に
も言い聞かせていた。

「今日は狩りをします。
あなたも王子なら、剣や弓を習っているでしょ。
鳥でも、獣でもいいから、捕まえてちょうだい。今夜の食事用よ。」

コンパウンドで作った、名品レベルの弓と矢を渡した。

ヨシヒコに試し撃ちをさせると、50メートル以内ならほぼ100発100中だ。

最初に見つけたのは、ウサギだ。
ヨシヒコは、素早く矢をつがえて放った。
惜しくも矢は外れ、ウサギは逃げて行った。

「惜しかったわね。的が動くと難しいわね。次頑張りましょう」

気を取り直して獲物を探して、池のそばにでた。
そこで鴨の親子を見つけた。
親鴨の後ろに子鴨が5羽ちょろちょろついて歩いている。

「可愛いなぁ」

「可愛いなぁ~じゃないわよ
獲物よ!獲物!
ちゃんと狙って、捕まえて!」

「モニカが大きい声出すから、逃げちゃったじゃないか」

そのあとも、ウサギやイノシンが現れたが、全て取り逃がしてしまった。

「今日は、夜ご飯は無しね」

「干し肉は?」

「非常食は、困った時にとっておくの」

「今、お腹がペコペコで困ってるよ」

「成長期のあなたには、辛いでしょうね。
これまで、食事抜きの日なんて、なかったんじゃない?
庶民は、冬を越すための食糧がなくて、死ぬ人もいるのよ
起きてると、余計お腹が減るから、寝るわよ」

ヨシヒコが、わざと狙いを外しているのは、わかっていた。
あの腕で、あの道具で、そんなに外すはずはない。
明日は、我慢比べだ。

「お早うヨシヒコ!今日は昼間は行軍、午後は狩りよ。
今日の狩りは私もやる。でも私の狩った獲物は、私が食べる
あなたの獲物は、あなたが食べる
以上よ」

「それじゃあ、ぼくは今日も何も食べられないじゃないか」

「獲物を捕まえれば、いいだけよ。人は昔からそうして生き抜いてきたの。あなたにできないはずはないわ」

午後になってすぐに、私はウサギを捕まえた。
皮を剥いで、内蔵を処理し、血抜きをした。
魔法で結界を作り、ほかの動物に取られたりしないようにして、ヨシヒコの様子を見に行った。

「ごめんね ごめんね」ヨシヒコの足下にイノシンが倒れている。
まだ息をしている。

「なにをしているの!
苦しみを長引かせちゃいけないわ、祟られるわよ。
早く止めを!」

ヨシヒコは、ハッとした表情をしてから、短剣をイノシンの心臓めがけて突き刺した。

「このイノシンのために祈りましょう
私たちの糧になってくれるのよ
感謝して祈るの」

「私たちの?ぼくが捕ったのは、僕だけの獲物じゃなかったか?」

「誰が料理すると思ってるの?
あなたちゃんと処理できるの?
感謝をもってなるべく余すところなく利用するのよ。
あなたには、まだできないでしょう。
あなたの獲物は、私のもの
私の獲物も、私のもの
わかった!」

「ずり~よ 祟られろ!」

「夕食は、ぼたん鍋にしようかなぁ、山菜やキノコにハーブも使って、お肉が柔らかくなる迄煮込むのよ」

「食べたい。食べさせて下さい。」

「ごめんね、私も言い過ぎたわ。後で仲良く食べましょう。
美味して、ほっぺたが落ちるわよ(笑)」

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