21 / 38
ルークの策略
しおりを挟む
その日カインは悪夢にうなされていた。自分が殺される夢を見たのだ。
こういう日は嫌なことが起こるんだよな…
時計を見ると、出勤時間にはまだ早い。
こういう日に二度寝して寝過ごしても嫌だな。少し早いがギルドに行こう。
ギルドに着くとギルド長室にだけ電気が着いていた。
一応挨拶だけしておこうか。
扉をノックして入る
「メンゼフさん。おはようございます。」
「おお。カインか。おはよう。」
どうやら、メンゼフさんは書類を書いているみたいだ。こんな時間から働いているのはよほど忙しいのだろう。
「なにか手伝いましょうか。」
メンゼフが書類に目を落としたままカインに話しかける。
「いや大丈夫だっ。これで最後だから。」
書類を書き上げたメンゼフが背伸びしながらカインに話しかける。
「どうしたこんな時間に。まだ営業時間までかなり時間あるだろっ。」
「なんか嫌な予感がして起きちゃって。せっかくなので早く来ました。」
そうか。とメンゼフが頷く。
「カイン。おまえがギルドに来てからもう数ヶ月か。早えもんだな。」
「メンゼフさんまだ1カ月ですよ。」
「細けえ事言うんじゃねえよ。でも本当に助かってる。これからもよろしくなっ。」
オレは少し寝るぜと言いメンゼフさんがソファーに横になる。
カインはメンゼフの睡眠の邪魔をしないように部屋を出た。
その日のギルドはそこまで忙しくなかった。今日はアシスト制度の予定もない。
あの嫌な感じはどうやら気のせいだったみたいだ。
受付業務で久しぶりにエンリルの弓矢のメンバーと話をした。赤龍攻略以来だ。
今日から50階以降のダンジョン攻略を再開するらしい。エルフの疫病はどうやら落ち着いたらしく、やっと冒険に集中できると言っていた。
「帰ってきたら、また飲みましょうね。カイン。」
ウインクをしてギルドを出るミナトたち。
隣のミントさんからの視線が痛い。
「カインさんモテモテですねっ。」
一緒に冒険したから仲が良いだけですよっと言い訳をする…なんで言い訳をしてるんだろうか。
朝の冒険者ラッシュも落ち着き、裏で依頼書の作成業務に入る。
ニコラは十六夜さんに毎回怒られている。今回は書類の字が汚いと怒られていた。あまり怒りすぎても萎縮するだけだし、ランチでも誘ってニコラのサポートもしないとな。
今日はランチに行く時間も作れそうだなっ。サクッと書類やっつけよう。
帝都の鐘がなり、午前の部も終わりだ。
ニコラをランチに誘ったが断られた。
「ちょっと予定があって…ごめんなさい。」と歯切れが悪かった。
まだオレのことを嫌っているかもしれない。こういう時はそっとしておこう。
ランチをミントさんと二人で明けの明星で済ませて、午後も書類業務だ。
午後の仕事に取り掛かって1時間位経っただろうか。
―――ビィビィビィと<助け手>が鳴り出した。
十六夜さんが助け手の機械に駆け寄る。
「あら、珍しいわね。53階でエンリルの弓矢のミナトからだわ。」
エンリルの弓矢が53階で…違和感を感じる。何かがおかしい。
「十六夜さん注意したほうが良いかもしれません。エンリルの弓矢が53階の魔獣で事故が起きるなんて実力的に考えられません。なにか事件に巻き込まれた可能性が高いと思います。」
エンリルの弓矢とは共に冒険した仲だ。実力はわかっているつもりだ。
「そうね。十分に警戒するわ。50階以降は難易度もぐっと上がるからカインはメンゼフさんに報告して頂戴。ニコラ行くわよっ。」
十六夜は装備を手にとりニコラにも急ぎの準備を命じだ。
「わかりました。念のためメンゼフさんにも報告しておきますね。」
よろしく頼むわね。と言い十六夜とニコラは部屋を飛び出していった。
嫌な予感がしていたのはこれだったのか…
50階以降の魔獣は弱くはない。だが、どう考えてもエンリルの弓矢が苦戦する敵は思い当たらない。
カインは急いで、ギルマス室へ行きメンゼフさんに報告した。
「そうか。なにかあるかもしれねえ。今日はお前も忙しくないから、応援に行ける準備だけしておけ。」
わかりましたと返事をして空を見上げる。ミナトたちが無事で居ることを祈った。
◇
ルークは50階に転移してから、暇だった。50階以降に来る冒険者なんて限られている。
チッ早く来いよ。
悪態をつきながら進む。襲うポイントを探していると、53階までたどり着いていた。
(これ以上、上の階に上がりすぎても冒険者がこない。53階は広間もあるから、罠でもしかけとくか。複数人を一気に相手するのは骨が折れるからな。)
裏ギルドで買った罠を仕掛ける。
クックック。カインを地獄に落とせると思うと笑いが止まらない。
さっそく下の階から数人上がってくる音が聞こえる。
オレも一芝居うつ必要がある。
ローブを頭まで被り、倒れて待つことにした。
◇
エンリルの弓矢のミナトはシンラとユキナと今回も3人でダンジョンを攻略していた。
今日は60階のボスに挑戦はしないが、レベル上げと道中の下見を兼ねてだ。
数階歩いた感じだと、問題なくボスまで辿り着けそうだ。
道中の話はカインのことがメインだった。3人ともカインと付き合いたいという話やどんなデートをしたいかと言う話で盛り上がっていた。
63階に上がり、警戒しながら進む。この階はあまり敵がいないみたいだ。
道を進むと、目の前の広間で男が倒れている。
「ううう…」
3人は慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですかっ」とミナトが声をかけた瞬間―――
シンラとユキナに矢が当たり二人は倒れた。痺れ矢だろうか。
なっなにがあったの。ミナトは一瞬パニックになった。
倒れているはずの男が笑いながら起き上がった。
「まさかエンリルの弓矢が引っかかるとはな。これは神もオレのことを愛しているのだろうな。」
「なっ。あっあんたは。」
ルークがミナトに斬りかかる。
至近距離からでは避けられない。ミナトは斬られた傷を手で抑えながら倒れ込んだ。
「大丈夫だお前は殺しはしない。オレの奴隷になってもらうだけだっ。」
ルークが笑いながら、ミナトの首にかかっている笛を取り上げる。
「あっあんた。なにすんのよ。」
「ほう。オレの攻撃を食らって意識があるとはたいしたもんだ。これはオレとカインの物語だ。眠ってろっ! 」
ルークがミナトの頭を蹴り上げる。
ミナトはカイン助けてと思いながら、意識を失った。
◇
十六夜とニコラは救助のために50階から一気に53階に駆け上る。
十六夜はニコラの様子がおかしいことには気がついていた。それでも当たり前に犯罪に手を染めていたニコラだ。私が厳しくしないといけないと考えていたのだ。
53階に入ると、くまなく探す。
いたっ。3人が広間で倒れていて、3人とも血を流しているっ。
その先には指名手配されているルークが笑いながらこっちを見ている。
「あんた、なにしてるのか分かってるの。冒険者を襲うなんて重罪よ。」
「あ? 偉そうに言ってんじゃねえぞ。ババア。」
「話してもわかんないみたいね。捕縛させてもらうわっ。ニコラいくわよっ。」
十六夜が双剣を構えて、駆け出そうとすると、ニコラが痺れ剣で十六夜を刺した。
慌ててポーションを使おうとするが、十六夜の体は思うように動かない。
血も出ているし痺れの効果がついた剣で刺されたのだろう。
倒れながら刺したであろうニコラを見つめると口がごめんなさいと動いている様に見えた。
「よくやったな。ニコラ。上出来だっ。」
十六夜の首から笛を取った。ルークは嬉しそうだ。
「えっええ…これで後はカインさんを刺すだけですねっ。」
「そうだ。それでお前はどこにでも行っていい。」
ニコラは今自分がしたことの大きさに戸惑い下を向いているが、カインを刺すことは忠実にとやりそうだ。
ルークはカインの絶望の顔を思い浮かべ笑いながら、十六夜から奪った笛を吹いた。
◇
嫌な予感がしてから、カインはいつでも自分が動けるように準備をしていた。メンゼフさんが気を使って話しかけてくれるがどうも頭に話が入ってこない。
このまま何もなく皆帰ってきてくれ。ブローチを握りしめて祈った。
―――ビィビィビィと<助け手>が再度鳴り出す。
どうやら悪い予感は的中したようだ。
名前と階層を見ると十六夜・53階と表示されていた。
「メンゼフさん僕行きますよっ。」
「あっ…ああ。ミスって吹いたってことも考えにくい。カイン一人では厳しいかもな。オレも行こう。」
「いえっ。僕にはイブもいますから。大丈夫です。一人で行きますよ。」
「そうか…」
いつもなら快く送り出してくれるメンゼフさんだが今回は迷っているみたいだ。
「もしかするとルークなどギルドに恨みを持った人間の仕業かもしれません。付いてきてくれる代わりと言ってはなんですが、念のためメンゼフさんにやってもらいたいことがあって…。」
◇
カインは50階から慎重に進んだ。罠を仕掛けられていると思ったほうがいい。
汗が額を伝う。
51階52階と歩みを進める。
向かいからニコラがふらふらと駆け寄ってきた。傷を負っているがどうやら無事みたいだ。
「ニコラかっ。大丈夫かっ。」
「カッカインさんですか。よかった。盗賊に襲われて。十六夜さんが助けを呼べって言ったから走って戻ってきたんです。」
「…そうか。今盗賊たちは何階にいる。エンリルの弓矢たちは無事か。」
「はい。奴隷として使うって言ってたから死んではいないと思います。」
ニコラにポーションを渡す。
「ニコラすぐにポーションで回復してくれっ。途中で罠を新しく仕掛けている可能性もある。警戒しながら、すぐに進もう。」
53階に上がる。どうやら罠を仕掛けられている痕跡はない。
少し進み、広場を覗くと十六夜さんとエンリルの弓矢の面々が縄で縛られている。血が出ていて気絶しているようだが、皆息はあるようだ。
助けに飛び出そうか。いやまずは犯人の確保が先か。
悩んでいるとルークの声が響き渡った。
「カアアアアアアアアアイン逢いたかったぜぇ。」
奥の小道からルークが歩いて広間の真ん中に出てきた。
「ルーーーーーク」
カインはすべてを悟り叫ぶ。やはりルークが犯人だった。
オレの大事な仲間たちを傷つけたことは許さない。
「ビビってないで広間に出てこいよ! カイン! 」
冷静になれ。ルークのことだ正々堂々と来るわけなんてないんだ。
カインは剣を握りしめ広間に一歩だけ入り立ち止まる。
「クックク。久しぶりだなカイン。逢いたかったぜ。」
「ルークお前を倒すっ。」
「ほざいてろ。雑魚カインがっ。早く助けないとお前の大事なお仲間が死んじゃうぞっ。そんなところにいて良いのか。」
駆け出し、今にでもルークに斬りかかりたい。
観察する限り、罠は見当たらないが…念には念をニコラに指示を出す。
「ニコラ、ギルドにニコラの笛を吹いて知らせてくれっ…」
そう言いながらカインがふり返ると、
ニコラがカインの横っ腹に剣を刺した―――
クッ。やっぱりニコラもグルだったか。
すぐにニコラを蹴り飛ばし、離れて回復魔法をかける。
「おっと。卑怯なことするんじゃない。」と言い、ルークが手に持った魔法具を発動させた。
まずい…回復が使えない。血はなんとか止められたが傷は癒えていない。
「そうだカイン。これは魔法を一定時間使えなくなる魔法具だ。お前は卑怯だからなっ対策させてもらったぜ。」
カインは助けを呼ぶために笛に手をかける。
「おっと。待ってもらおうかカイン。その笛を吹いたらエンリルの弓矢を一人ずつ殺す。」
ルークはしっかりと対策してきたのだろう。
「わかった。笛は吹かない。殺すなんて言わないでくれっ。」
ルークがカインの顔を見て声を出して笑う。
「いい気味だ。どうだカイン。大事なギルドの仲間に裏切られた気分は。今回ニコラがオレと共謀して十六夜とおまえを刺してくれたんだぜっ。」
「ニコラが…」
「そうだ。おまえが大好きなギルドのメンバーがだっ。もう行っていいぞニコラ。その代わりすぐに助けを呼ばれちゃこっちも嬉しくねえ。笛は置いていけ。」
ニコラは笛をルークに投げ渡し、来た道を戻っていった。
一瞬ニコラと目があう。ニコラは俯き何も言葉を発しなかった。
「ほらっやろうぜっカイン」
そう言うとルークが駆け出しカインに斬りかかった。
こういう日は嫌なことが起こるんだよな…
時計を見ると、出勤時間にはまだ早い。
こういう日に二度寝して寝過ごしても嫌だな。少し早いがギルドに行こう。
ギルドに着くとギルド長室にだけ電気が着いていた。
一応挨拶だけしておこうか。
扉をノックして入る
「メンゼフさん。おはようございます。」
「おお。カインか。おはよう。」
どうやら、メンゼフさんは書類を書いているみたいだ。こんな時間から働いているのはよほど忙しいのだろう。
「なにか手伝いましょうか。」
メンゼフが書類に目を落としたままカインに話しかける。
「いや大丈夫だっ。これで最後だから。」
書類を書き上げたメンゼフが背伸びしながらカインに話しかける。
「どうしたこんな時間に。まだ営業時間までかなり時間あるだろっ。」
「なんか嫌な予感がして起きちゃって。せっかくなので早く来ました。」
そうか。とメンゼフが頷く。
「カイン。おまえがギルドに来てからもう数ヶ月か。早えもんだな。」
「メンゼフさんまだ1カ月ですよ。」
「細けえ事言うんじゃねえよ。でも本当に助かってる。これからもよろしくなっ。」
オレは少し寝るぜと言いメンゼフさんがソファーに横になる。
カインはメンゼフの睡眠の邪魔をしないように部屋を出た。
その日のギルドはそこまで忙しくなかった。今日はアシスト制度の予定もない。
あの嫌な感じはどうやら気のせいだったみたいだ。
受付業務で久しぶりにエンリルの弓矢のメンバーと話をした。赤龍攻略以来だ。
今日から50階以降のダンジョン攻略を再開するらしい。エルフの疫病はどうやら落ち着いたらしく、やっと冒険に集中できると言っていた。
「帰ってきたら、また飲みましょうね。カイン。」
ウインクをしてギルドを出るミナトたち。
隣のミントさんからの視線が痛い。
「カインさんモテモテですねっ。」
一緒に冒険したから仲が良いだけですよっと言い訳をする…なんで言い訳をしてるんだろうか。
朝の冒険者ラッシュも落ち着き、裏で依頼書の作成業務に入る。
ニコラは十六夜さんに毎回怒られている。今回は書類の字が汚いと怒られていた。あまり怒りすぎても萎縮するだけだし、ランチでも誘ってニコラのサポートもしないとな。
今日はランチに行く時間も作れそうだなっ。サクッと書類やっつけよう。
帝都の鐘がなり、午前の部も終わりだ。
ニコラをランチに誘ったが断られた。
「ちょっと予定があって…ごめんなさい。」と歯切れが悪かった。
まだオレのことを嫌っているかもしれない。こういう時はそっとしておこう。
ランチをミントさんと二人で明けの明星で済ませて、午後も書類業務だ。
午後の仕事に取り掛かって1時間位経っただろうか。
―――ビィビィビィと<助け手>が鳴り出した。
十六夜さんが助け手の機械に駆け寄る。
「あら、珍しいわね。53階でエンリルの弓矢のミナトからだわ。」
エンリルの弓矢が53階で…違和感を感じる。何かがおかしい。
「十六夜さん注意したほうが良いかもしれません。エンリルの弓矢が53階の魔獣で事故が起きるなんて実力的に考えられません。なにか事件に巻き込まれた可能性が高いと思います。」
エンリルの弓矢とは共に冒険した仲だ。実力はわかっているつもりだ。
「そうね。十分に警戒するわ。50階以降は難易度もぐっと上がるからカインはメンゼフさんに報告して頂戴。ニコラ行くわよっ。」
十六夜は装備を手にとりニコラにも急ぎの準備を命じだ。
「わかりました。念のためメンゼフさんにも報告しておきますね。」
よろしく頼むわね。と言い十六夜とニコラは部屋を飛び出していった。
嫌な予感がしていたのはこれだったのか…
50階以降の魔獣は弱くはない。だが、どう考えてもエンリルの弓矢が苦戦する敵は思い当たらない。
カインは急いで、ギルマス室へ行きメンゼフさんに報告した。
「そうか。なにかあるかもしれねえ。今日はお前も忙しくないから、応援に行ける準備だけしておけ。」
わかりましたと返事をして空を見上げる。ミナトたちが無事で居ることを祈った。
◇
ルークは50階に転移してから、暇だった。50階以降に来る冒険者なんて限られている。
チッ早く来いよ。
悪態をつきながら進む。襲うポイントを探していると、53階までたどり着いていた。
(これ以上、上の階に上がりすぎても冒険者がこない。53階は広間もあるから、罠でもしかけとくか。複数人を一気に相手するのは骨が折れるからな。)
裏ギルドで買った罠を仕掛ける。
クックック。カインを地獄に落とせると思うと笑いが止まらない。
さっそく下の階から数人上がってくる音が聞こえる。
オレも一芝居うつ必要がある。
ローブを頭まで被り、倒れて待つことにした。
◇
エンリルの弓矢のミナトはシンラとユキナと今回も3人でダンジョンを攻略していた。
今日は60階のボスに挑戦はしないが、レベル上げと道中の下見を兼ねてだ。
数階歩いた感じだと、問題なくボスまで辿り着けそうだ。
道中の話はカインのことがメインだった。3人ともカインと付き合いたいという話やどんなデートをしたいかと言う話で盛り上がっていた。
63階に上がり、警戒しながら進む。この階はあまり敵がいないみたいだ。
道を進むと、目の前の広間で男が倒れている。
「ううう…」
3人は慌てて駆け寄る。
「大丈夫ですかっ」とミナトが声をかけた瞬間―――
シンラとユキナに矢が当たり二人は倒れた。痺れ矢だろうか。
なっなにがあったの。ミナトは一瞬パニックになった。
倒れているはずの男が笑いながら起き上がった。
「まさかエンリルの弓矢が引っかかるとはな。これは神もオレのことを愛しているのだろうな。」
「なっ。あっあんたは。」
ルークがミナトに斬りかかる。
至近距離からでは避けられない。ミナトは斬られた傷を手で抑えながら倒れ込んだ。
「大丈夫だお前は殺しはしない。オレの奴隷になってもらうだけだっ。」
ルークが笑いながら、ミナトの首にかかっている笛を取り上げる。
「あっあんた。なにすんのよ。」
「ほう。オレの攻撃を食らって意識があるとはたいしたもんだ。これはオレとカインの物語だ。眠ってろっ! 」
ルークがミナトの頭を蹴り上げる。
ミナトはカイン助けてと思いながら、意識を失った。
◇
十六夜とニコラは救助のために50階から一気に53階に駆け上る。
十六夜はニコラの様子がおかしいことには気がついていた。それでも当たり前に犯罪に手を染めていたニコラだ。私が厳しくしないといけないと考えていたのだ。
53階に入ると、くまなく探す。
いたっ。3人が広間で倒れていて、3人とも血を流しているっ。
その先には指名手配されているルークが笑いながらこっちを見ている。
「あんた、なにしてるのか分かってるの。冒険者を襲うなんて重罪よ。」
「あ? 偉そうに言ってんじゃねえぞ。ババア。」
「話してもわかんないみたいね。捕縛させてもらうわっ。ニコラいくわよっ。」
十六夜が双剣を構えて、駆け出そうとすると、ニコラが痺れ剣で十六夜を刺した。
慌ててポーションを使おうとするが、十六夜の体は思うように動かない。
血も出ているし痺れの効果がついた剣で刺されたのだろう。
倒れながら刺したであろうニコラを見つめると口がごめんなさいと動いている様に見えた。
「よくやったな。ニコラ。上出来だっ。」
十六夜の首から笛を取った。ルークは嬉しそうだ。
「えっええ…これで後はカインさんを刺すだけですねっ。」
「そうだ。それでお前はどこにでも行っていい。」
ニコラは今自分がしたことの大きさに戸惑い下を向いているが、カインを刺すことは忠実にとやりそうだ。
ルークはカインの絶望の顔を思い浮かべ笑いながら、十六夜から奪った笛を吹いた。
◇
嫌な予感がしてから、カインはいつでも自分が動けるように準備をしていた。メンゼフさんが気を使って話しかけてくれるがどうも頭に話が入ってこない。
このまま何もなく皆帰ってきてくれ。ブローチを握りしめて祈った。
―――ビィビィビィと<助け手>が再度鳴り出す。
どうやら悪い予感は的中したようだ。
名前と階層を見ると十六夜・53階と表示されていた。
「メンゼフさん僕行きますよっ。」
「あっ…ああ。ミスって吹いたってことも考えにくい。カイン一人では厳しいかもな。オレも行こう。」
「いえっ。僕にはイブもいますから。大丈夫です。一人で行きますよ。」
「そうか…」
いつもなら快く送り出してくれるメンゼフさんだが今回は迷っているみたいだ。
「もしかするとルークなどギルドに恨みを持った人間の仕業かもしれません。付いてきてくれる代わりと言ってはなんですが、念のためメンゼフさんにやってもらいたいことがあって…。」
◇
カインは50階から慎重に進んだ。罠を仕掛けられていると思ったほうがいい。
汗が額を伝う。
51階52階と歩みを進める。
向かいからニコラがふらふらと駆け寄ってきた。傷を負っているがどうやら無事みたいだ。
「ニコラかっ。大丈夫かっ。」
「カッカインさんですか。よかった。盗賊に襲われて。十六夜さんが助けを呼べって言ったから走って戻ってきたんです。」
「…そうか。今盗賊たちは何階にいる。エンリルの弓矢たちは無事か。」
「はい。奴隷として使うって言ってたから死んではいないと思います。」
ニコラにポーションを渡す。
「ニコラすぐにポーションで回復してくれっ。途中で罠を新しく仕掛けている可能性もある。警戒しながら、すぐに進もう。」
53階に上がる。どうやら罠を仕掛けられている痕跡はない。
少し進み、広場を覗くと十六夜さんとエンリルの弓矢の面々が縄で縛られている。血が出ていて気絶しているようだが、皆息はあるようだ。
助けに飛び出そうか。いやまずは犯人の確保が先か。
悩んでいるとルークの声が響き渡った。
「カアアアアアアアアアイン逢いたかったぜぇ。」
奥の小道からルークが歩いて広間の真ん中に出てきた。
「ルーーーーーク」
カインはすべてを悟り叫ぶ。やはりルークが犯人だった。
オレの大事な仲間たちを傷つけたことは許さない。
「ビビってないで広間に出てこいよ! カイン! 」
冷静になれ。ルークのことだ正々堂々と来るわけなんてないんだ。
カインは剣を握りしめ広間に一歩だけ入り立ち止まる。
「クックク。久しぶりだなカイン。逢いたかったぜ。」
「ルークお前を倒すっ。」
「ほざいてろ。雑魚カインがっ。早く助けないとお前の大事なお仲間が死んじゃうぞっ。そんなところにいて良いのか。」
駆け出し、今にでもルークに斬りかかりたい。
観察する限り、罠は見当たらないが…念には念をニコラに指示を出す。
「ニコラ、ギルドにニコラの笛を吹いて知らせてくれっ…」
そう言いながらカインがふり返ると、
ニコラがカインの横っ腹に剣を刺した―――
クッ。やっぱりニコラもグルだったか。
すぐにニコラを蹴り飛ばし、離れて回復魔法をかける。
「おっと。卑怯なことするんじゃない。」と言い、ルークが手に持った魔法具を発動させた。
まずい…回復が使えない。血はなんとか止められたが傷は癒えていない。
「そうだカイン。これは魔法を一定時間使えなくなる魔法具だ。お前は卑怯だからなっ対策させてもらったぜ。」
カインは助けを呼ぶために笛に手をかける。
「おっと。待ってもらおうかカイン。その笛を吹いたらエンリルの弓矢を一人ずつ殺す。」
ルークはしっかりと対策してきたのだろう。
「わかった。笛は吹かない。殺すなんて言わないでくれっ。」
ルークがカインの顔を見て声を出して笑う。
「いい気味だ。どうだカイン。大事なギルドの仲間に裏切られた気分は。今回ニコラがオレと共謀して十六夜とおまえを刺してくれたんだぜっ。」
「ニコラが…」
「そうだ。おまえが大好きなギルドのメンバーがだっ。もう行っていいぞニコラ。その代わりすぐに助けを呼ばれちゃこっちも嬉しくねえ。笛は置いていけ。」
ニコラは笛をルークに投げ渡し、来た道を戻っていった。
一瞬ニコラと目があう。ニコラは俯き何も言葉を発しなかった。
「ほらっやろうぜっカイン」
そう言うとルークが駆け出しカインに斬りかかった。
63
あなたにおすすめの小説
Sランク昇進を記念して追放された俺は、追放サイドの令嬢を助けたことがきっかけで、彼女が押しかけ女房のようになって困る!
仁徳
ファンタジー
シロウ・オルダーは、Sランク昇進をきっかけに赤いバラという冒険者チームから『スキル非所持の無能』とを侮蔑され、パーティーから追放される。
しかし彼は、異世界の知識を利用して新な魔法を生み出すスキル【魔学者】を使用できるが、彼はそのスキルを隠し、無能を演じていただけだった。
そうとは知らずに、彼を追放した赤いバラは、今までシロウのサポートのお陰で強くなっていたことを知らずに、ダンジョンに挑む。だが、初めての敗北を経験したり、その後借金を背負ったり地位と名声を失っていく。
一方自由になったシロウは、新な町での冒険者活動で活躍し、一目置かれる存在となりながら、追放したマリーを助けたことで惚れられてしまう。手料理を振る舞ったり、背中を流したり、それはまるで押しかけ女房だった!
これは、チート能力を手に入れてしまったことで、無能を演じたシロウがパーティーを追放され、その後ソロとして活躍して無双すると、他のパーティーから追放されたエルフや魔族といった様々な追放少女が集まり、いつの間にかハーレムパーティーを結成している物語!
無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います
長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。
しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。
途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。
しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。
「ミストルティン。アブソープション!」
『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』
「やった! これでまた便利になるな」
これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。
~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~
元皇子の寄り道だらけの逃避行 ~幽閉されたので国を捨てて辺境でゆっくりします~
下昴しん
ファンタジー
武力で領土を拡大するベギラス帝国に二人の皇子がいた。魔法研究に腐心する兄と、武力に優れ軍を指揮する弟。
二人の父である皇帝は、軍略会議を軽んじた兄のフェアを断罪する。
帝国は武力を求めていたのだ。
フェアに一方的に告げられた罪状は、敵前逃亡。皇帝の第一継承権を持つ皇子の座から一転して、罪人になってしまう。
帝都の片隅にある独房に幽閉されるフェア。
「ここから逃げて、田舎に籠るか」
給仕しか来ないような牢獄で、フェアは脱出を考えていた。
帝都においてフェアを超える魔法使いはいない。そのことを知っているのはごく限られた人物だけだった。
鍵をあけて牢を出ると、給仕に化けた義妹のマトビアが現れる。
「私も連れて行ってください、お兄様」
「いやだ」
止めるフェアに、強引なマトビア。
なんだかんだでベギラス帝国の元皇子と皇女の、ゆるすぎる逃亡劇が始まった──。
※カクヨム様、小説家になろう様でも投稿中。
隠して忘れていたギフト『ステータスカスタム』で能力を魔改造 〜自由自在にカスタマイズしたら有り得ないほど最強になった俺〜
桜井正宗
ファンタジー
能力(スキル)を隠して、その事を忘れていた帝国出身の錬金術師スローンは、無能扱いで大手ギルド『クレセントムーン』を追放された。追放後、隠していた能力を思い出しスキルを習得すると『ステータスカスタム』が発現する。これは、自身や相手のステータスを魔改造【カスタム】できる最強の能力だった。
スローンは、偶然出会った『大聖女フィラ』と共にステータスをいじりまくって最強のステータスを手に入れる。その後、超高難易度のクエストを難なくクリア、無双しまくっていく。その噂が広がると元ギルドから戻って来いと頭を下げられるが、もう遅い。
真の仲間と共にスローンは、各地で暴れ回る。究極のスローライフを手に入れる為に。
解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る
早見羽流@3/19書籍発売!
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」
解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。
そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。
彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。
(1話2500字程度、1章まで完結保証です)
収納魔法を極めた魔術師ですが、勇者パーティを追放されました。ところで俺の追放理由って “どれ” ですか?
木塚麻弥
ファンタジー
収納魔法を活かして勇者パーティーの荷物持ちをしていたケイトはある日、パーティーを追放されてしまった。
追放される理由はよく分からなかった。
彼はパーティーを追放されても文句の言えない理由を無数に抱えていたからだ。
結局どれが本当の追放理由なのかはよく分からなかったが、勇者から追放すると強く言われたのでケイトはそれに従う。
しかし彼は、追放されてもなお仲間たちのことが好きだった。
たった四人で強大な魔王軍に立ち向かおうとするかつての仲間たち。
ケイトは彼らを失いたくなかった。
勇者たちとまた一緒に食事がしたかった。
しばらくひとりで悩んでいたケイトは気づいてしまう。
「追放されたってことは、俺の行動を制限する奴もいないってことだよな?」
これは収納魔法しか使えない魔術師が、仲間のために陰で奮闘する物語。
微妙なバフなどもういらないと追放された補助魔法使い、バフ3000倍で敵の肉体を内部から破壊して無双する
こげ丸
ファンタジー
「微妙なバフなどもういらないんだよ!」
そう言われて冒険者パーティーを追放されたフォーレスト。
だが、仲間だと思っていたパーティーメンバーからの仕打ちは、それだけに留まらなかった。
「もうちょっと抵抗頑張んないと……妹を酷い目にあわせちゃうわよ?」
窮地に追い込まれたフォーレスト。
だが、バフの新たな可能性に気付いたその時、復讐はなされた。
こいつら……壊しちゃえば良いだけじゃないか。
これは、絶望の淵からバフの新たな可能性を見いだし、高みを目指すに至った補助魔法使いフォーレストが最強に至るまでの物語。
【本編45話にて完結】『追放された荷物持ちの俺を「必要だ」と言ってくれたのは、落ちこぼれヒーラーの彼女だけだった。』
ブヒ太郎
ファンタジー
「お前はもう用済みだ」――荷物持ちとして命懸けで尽くしてきた高ランクパーティから、ゼロスは無能の烙印を押され、なんの手切れ金もなく追放された。彼のスキルは【筋力強化(微)】。誰もが最弱と嘲笑う、あまりにも地味な能力。仲間たちは彼の本当の価値に気づくことなく、その存在をゴミのように切り捨てた。
全てを失い、絶望の淵をさまよう彼に手を差し伸べたのは、一人の不遇なヒーラー、アリシアだった。彼女もまた、治癒の力が弱いと誰からも相手にされず、教会からも冒険者仲間からも居場所を奪われ、孤独に耐えてきた。だからこそ、彼女だけはゼロスの瞳の奥に宿る、静かで、しかし折れない闘志の光を見抜いていたのだ。
「私と、パーティを組んでくれませんか?」
これは、社会の評価軸から外れた二人が出会い、互いの傷を癒しながらどん底から這い上がり、やがて世界を驚かせる伝説となるまでの物語。見捨てられた最強の荷物持ちによる、静かで、しかし痛快な逆襲劇が今、幕を開ける!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる