魔探偵探偵事務所

カクカラ

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1章4節 幸せの居場所

3-11 (106話)

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伝えきれたすべての事を依頼者に伝えた。
ヒュプノスはおばあさんの優しさに救われたのかうっすらと消えて、数分後にはいなくなっていた。
そして、おばあさんは笑みを浮かべて亡くなっていた。
美沙はゆっくりと立ち上がり、おばあさんの姿を見ていた。
ありがとうと想いを伝えるように手を握りしめた。
冷たい手が一生残る。
体温が伝わるように、温もりを忘れないように。
美沙はずっとその手を握りしめていた。
心の奥底おくそこで忘れないようにと引き出しにしまいながら。

「もういいですか・・・」

シンは両目を閉じて左目にコンタクトを入れた。
もう魔道の姿はどこにもない。
揺らぐ風もなくなった。
岩城はライトを消してゆっくりと下ろした。
悲しさのつのる部屋をゆっくりと後にし、職員に伝えた。
依頼者は親に連絡をして事情を説明した。
それ以外は見守るかのように依頼者を見つめていた。
数分後、依頼者の親がやってきて葬儀そうぎをした。
もうここには来ることもない。
優しさと悲しさが募る場所。
失ってはいけない。居場所も温もりも。
そして、家族という大切な繋がりを。
切り離してはいけないと。
葬儀を見ていたシン達は一仕事終えたという実感と悲しみが残った。
救えなかった命をただただ見守るだけだった。
そんな中、ふと何かが思い浮かんだ。
火の海の中に2人の人影と暗い部屋に1人の男。
あの火の海の中には男の子が2人。
右目を傷つけられた少年の膝にいるのは小さな男の子。
服は血まみれの子供を抱えながら叫んでいた。
血まみれの男の子の名前は「裕太」。
抱えていた少年は誰なのかはわからなかった。
でも、見覚えがあった。そして、暗い部屋には1人の男。
シンと同い年ぐらいに見えるが、何かが違っていた。
口元には血のような赤いものが付着していた。
肉を頬張ほおばるかのような姿をしていたが、名前が思い出せずにいた。
あんな金髪でオーバーヘッドをしているような男なら覚えていてもおかしくなかったはずなのに。
そんな事を考えながら葬式そうしきをしていた。
すると、誰かが頭を叩いてきた。

「なーに考えてやがる?」
「何も考えてないですよ。そういう風に見えましたか?」
「いや。今回ばかりは救えずにいたからな。お前が少し悲しい顔してたからさ」

茶化したように西崎がシンに問いかけるが、そんな簡単に答えてくれそうにはない。
隠したところでいつかはばれていくのがオチ。
でも、シンはばれないように平常心を保っている。
何を考えているのかさえわからない人物でもあるのだ。

「彼女、これからどうするつもりなんだろうな」
「わかりません。でも、あのストーカー女が導き出すんじゃないですか?何かしらの答えというものを一緒に探して」

どんなに近くにいる猪野糸でさえもこればかりはわからない。
どっちに転がってもやがては諦めがつくことだってある。
それをお互いに考えていくのが友達というものなのではないか。
今答えを聞いたところで何が帰ってくるかなんてわかりもしない。
時間が必ず答えを導き出してくれるのだと。
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