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1章4節 幸せの居場所
3-12 (107話)
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あれから数日。あの一件からひと段落していた。
イスに座りながら窓から射してくる光を浴びていた。
目をつぶりながら考え事もせず有意義な時間を過ごしていた。
静かな事務所に浸り始めていく。
しかし、ふとしたことであの記憶が蘇る。
あの金髪の男の姿が。
思い出したくないものを思い出す。
嫌な時間を過ごしてしまうハメになった。
ため息交じりになりながらも目をつぶる。
秘書も今日は休みで1人での時間が長くなる。
仕事のことなんか考えたくなかった。
そんなことを思っていたらあのうるさい人達がやってくる。
「来てやったぞーっ!」
大声で来たという台詞をかましてくる西崎。
慌てるように岩城は止めに入る。
「そんなうるさくせんでもええやないですか・・・」
「何言ってんだよ!こういう時こそうるさくするのがいいんじゃねーか、なぁ!っていねーし・・・」
うるさいのが部屋中に充満してくる。
有意義な雰囲気が一瞬にして潰れた。
あの男はどんな神経をしているんだと飽き飽きしていた。
シンはイスを西崎達の方にクルッと回した。
「いますよ。どこに目をつけてるんです?」
「俺をバカにしてるだろ」
西崎はドカドカと歩いて依頼者が座る席にドッカリと座った。
岩城はペコペコとシンに頭を下げながら西崎の隣に座った。
「あれからあの子どうしてるんだ?」
「依頼者ならちゃんと学校に通ってますよ。あのストーカー女と一緒にね。休んでられないなんて言うもんだから困ったもんだと親も嘆いてましたよ」
「無理してんじゃねーの?少しぐらい休めばいいのによ、勉強の事も学校の事もさ。楽にするが一番なのに」
「西崎さんみたいにここを休憩所にして仕事をさぼるようなことはしませんから」
高笑いしながら西崎は笑っていたが、さぼるっていうワードだけで顔が怒ったような顔をした。
休憩所って。本当に仕事をさぼってるみたいじゃないか。
警察をなめているのかとシンを睨みつけた。
苦笑いをする岩城を見た西崎はグーパンチで脳天に1発浴びせた。
「でも、ホンマに大丈夫なんですか?これからどうするかなんて聞いてないんやないですか?」
「それは直接言いに来ますよ。ちゃんとした報酬をもらうために」
ちゃんとした報酬というのはどういう意味なのだろうか。
あれだけじゃなかったと言いたいのか。
そんな時コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
どうぞとシンが言うと中に入ってきたのは依頼者である黛本人だった。
「んだ嬢ちゃんじゃねーか。いらっしゃい」
「ここはあなたの家じゃないですよ」
一言余計な事を付け加えていく。
イライラさせるようなことを毎回言ってくる。
本当に可愛くない奴だな。
「あの・・・報酬を渡しに来ました。今回はありがとうございます。叔母もきっと天国で私の事を楽しそうに見てると思います」
「報酬なんていりませんよ」
その言葉にシンを見つめた西崎と岩城。
報酬を断るなんてどういうつもりなのだ。
頭でも打ったのではないかと心配をする。
「報酬はいらない?」
「どういうことなんですか?報酬をいらないなんてシン君らしくないやないですか」
「報酬なら既に貰ってるからですよ。依頼者である人の叔母からね」
いつ貰ったというのだろうか。
こんな場で堂々と言えるなんて何か怪しい。
あの葬式の時に貰ったのなら西崎と岩城が見ているはずなのに、何も貰っていなかった。
ではどこで貰ったのだろうか。
「いつだよ?貰ってる所なんて見てないぞ」
「つい2・3日前です。直接会いに来たんですよ、本人が」
直接会いに来たということは幽霊となってシンの所に来たということになる。
でも、何を伝えていったのだろうか。
疑問が残るが依頼者がいるのなら言っても構わない。
西崎と岩城はズシッとした姿で話に耳を傾ける。
「あなたを、美沙さんをうちの探偵事務所に入れてほしいという伝言を」
事務所に入れてほしいなんていうのをシンに直接言いに行くなんてどうかしている。
でも、何でそんなことを言ったのだろうか。
何かちゃんとした理由があるのか。
「どういう事だよ」
「何でも昔、あなたは引きこもりになっていたそうですね。学校に行くのも嫌になっただとか。何故だったのかは聞きません。そんな人達を1人でも多く救ってほしいとの事でして。それを受け入れるのでしたらこちらとしては断る理由なんてありません。是非こちらとしては歓迎したい所存です。もし、あなたが断るのでしたらそれでも構いません。これはあなた次第。入るも入らないもそれを決めるのは私ではありません。依頼者であるあなたが決めることです」
思い出していく辛い過去。
引きこもりという暗い影。
そこに光が射してきた。
手を差し伸べてくれる人が今目の前にいる。
何も聞かずにただただ依頼者の目線に立っている。
シンは知っている。でも、知らないフリをしてこの場を収めようとしている。
溢れてくる涙。優しさが、温もりが、そして痛みが。
そんな心を動かしていく力を持っている。
同じ境遇の人間が今ここにいる。
そう思うだけで涙がこぼれていく。
居場所が、安心できる居場所ができたという事を改めて感じていた。
イスに座りながら窓から射してくる光を浴びていた。
目をつぶりながら考え事もせず有意義な時間を過ごしていた。
静かな事務所に浸り始めていく。
しかし、ふとしたことであの記憶が蘇る。
あの金髪の男の姿が。
思い出したくないものを思い出す。
嫌な時間を過ごしてしまうハメになった。
ため息交じりになりながらも目をつぶる。
秘書も今日は休みで1人での時間が長くなる。
仕事のことなんか考えたくなかった。
そんなことを思っていたらあのうるさい人達がやってくる。
「来てやったぞーっ!」
大声で来たという台詞をかましてくる西崎。
慌てるように岩城は止めに入る。
「そんなうるさくせんでもええやないですか・・・」
「何言ってんだよ!こういう時こそうるさくするのがいいんじゃねーか、なぁ!っていねーし・・・」
うるさいのが部屋中に充満してくる。
有意義な雰囲気が一瞬にして潰れた。
あの男はどんな神経をしているんだと飽き飽きしていた。
シンはイスを西崎達の方にクルッと回した。
「いますよ。どこに目をつけてるんです?」
「俺をバカにしてるだろ」
西崎はドカドカと歩いて依頼者が座る席にドッカリと座った。
岩城はペコペコとシンに頭を下げながら西崎の隣に座った。
「あれからあの子どうしてるんだ?」
「依頼者ならちゃんと学校に通ってますよ。あのストーカー女と一緒にね。休んでられないなんて言うもんだから困ったもんだと親も嘆いてましたよ」
「無理してんじゃねーの?少しぐらい休めばいいのによ、勉強の事も学校の事もさ。楽にするが一番なのに」
「西崎さんみたいにここを休憩所にして仕事をさぼるようなことはしませんから」
高笑いしながら西崎は笑っていたが、さぼるっていうワードだけで顔が怒ったような顔をした。
休憩所って。本当に仕事をさぼってるみたいじゃないか。
警察をなめているのかとシンを睨みつけた。
苦笑いをする岩城を見た西崎はグーパンチで脳天に1発浴びせた。
「でも、ホンマに大丈夫なんですか?これからどうするかなんて聞いてないんやないですか?」
「それは直接言いに来ますよ。ちゃんとした報酬をもらうために」
ちゃんとした報酬というのはどういう意味なのだろうか。
あれだけじゃなかったと言いたいのか。
そんな時コンコンと扉をノックする音が聞こえた。
どうぞとシンが言うと中に入ってきたのは依頼者である黛本人だった。
「んだ嬢ちゃんじゃねーか。いらっしゃい」
「ここはあなたの家じゃないですよ」
一言余計な事を付け加えていく。
イライラさせるようなことを毎回言ってくる。
本当に可愛くない奴だな。
「あの・・・報酬を渡しに来ました。今回はありがとうございます。叔母もきっと天国で私の事を楽しそうに見てると思います」
「報酬なんていりませんよ」
その言葉にシンを見つめた西崎と岩城。
報酬を断るなんてどういうつもりなのだ。
頭でも打ったのではないかと心配をする。
「報酬はいらない?」
「どういうことなんですか?報酬をいらないなんてシン君らしくないやないですか」
「報酬なら既に貰ってるからですよ。依頼者である人の叔母からね」
いつ貰ったというのだろうか。
こんな場で堂々と言えるなんて何か怪しい。
あの葬式の時に貰ったのなら西崎と岩城が見ているはずなのに、何も貰っていなかった。
ではどこで貰ったのだろうか。
「いつだよ?貰ってる所なんて見てないぞ」
「つい2・3日前です。直接会いに来たんですよ、本人が」
直接会いに来たということは幽霊となってシンの所に来たということになる。
でも、何を伝えていったのだろうか。
疑問が残るが依頼者がいるのなら言っても構わない。
西崎と岩城はズシッとした姿で話に耳を傾ける。
「あなたを、美沙さんをうちの探偵事務所に入れてほしいという伝言を」
事務所に入れてほしいなんていうのをシンに直接言いに行くなんてどうかしている。
でも、何でそんなことを言ったのだろうか。
何かちゃんとした理由があるのか。
「どういう事だよ」
「何でも昔、あなたは引きこもりになっていたそうですね。学校に行くのも嫌になっただとか。何故だったのかは聞きません。そんな人達を1人でも多く救ってほしいとの事でして。それを受け入れるのでしたらこちらとしては断る理由なんてありません。是非こちらとしては歓迎したい所存です。もし、あなたが断るのでしたらそれでも構いません。これはあなた次第。入るも入らないもそれを決めるのは私ではありません。依頼者であるあなたが決めることです」
思い出していく辛い過去。
引きこもりという暗い影。
そこに光が射してきた。
手を差し伸べてくれる人が今目の前にいる。
何も聞かずにただただ依頼者の目線に立っている。
シンは知っている。でも、知らないフリをしてこの場を収めようとしている。
溢れてくる涙。優しさが、温もりが、そして痛みが。
そんな心を動かしていく力を持っている。
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