1 / 1
入り口
しおりを挟む「かっちゃーん、遅刻するよ~?」
リビングから姉が今朝で何度目かの催促をよこした。
1分ほど前から鳴りっぱなしになっている携帯のアラームを止めて、重たい体を持ち上げる。目はまだ半開きだ。妙な寝覚の悪さを感じながら大きく伸びをする。ふと手に握っている携帯を見ると、その画面には8時7分という時刻が表示されていた。
途端に電撃が走り抜けたように脳が目を覚ました。ベッドから跳ね起き、部屋を飛び出す。食欲をそそるいい匂いが廊下の方まで漂ってきている。思い出したように腹の虫がないた。
リビングに顔を出すと
「あ、おはよ。朝ごはんどうする?」
と遅刻しそうな自分に向かって姉が呑気な顔で尋ねる。悠長に構える姉の様子に思わず腹が立ち、
「いらねーよ。てかなんで起こしてくんなかったの」
と当たった。
「はぁ?何回も呼んだっつーの。あんたが起きなかったのが悪いんでしょ、ばかっちゃん」
一つ言うと百返してくる姉に案の定何も言い返せず、今日もまた行き場のない怒りを押さえ込む。小さい頃からそうだった。克也は茜との口喧嘩で勝った試しがない。小学校四年生ほどにもなると、姉と喧嘩しても自分に勝ち目はないことを学び、なるべく衝突を避けるようにして生きてきた。
テーブルに並ぶ美味しそうな料理の面々をあまり見ないように素通りし、足早に洗面所へと向かう。顔を洗ってアイロンのかかった制服に腕を通すと、昨日帰ったまま放置されたリュックを手掴みにして「食べないの~?」と聞く姉の声を背に家を駆け出した。
自分の住むマンションから学校まではそう遠くはなかったので、今から自転車を飛ばして行けばなんとか間に合いそうだった。腕時計の時間を確認しながら、階段を二段飛ばしで駆け下りる。
しかし克也は自転車小屋につくなり、あまりの光景に呆然と立ち尽くした。帰宅した時は綺麗に並べられていたはずの自転車が、昨夜の暴風雨によって全て横倒しになっていたのだ。あまりの運の悪さに投げやりになりながらも、ここで自分の身の上を嘆いている場合ではないので、急いで今できる最善の選択を考える。足に自信のある克也は走っていくことも考えたが、今ここで自転車を引っ張り出すのにかかる時間を考えても、やはり自転車で行くのが一番早そうだ。
克也がここまで遅刻に執着するのには理由がある。勉強があまり得意ではない自分が唯一高校で達成できる目標が皆勤賞だったからだ。昔から飽きやすく物事が長続きしない克也にとって、一年間と二ヶ月続いた無遅刻無欠席を放り出すのはあまりに惜しかった。
なぎ倒された多くの自転車の中から、お尻の錆びた青い自転車を乱雑に引っ張り出して、勢いよく地面を蹴る。曲がり角を曲がって大きな下り坂にさしかかると、重力に任せてノーブレーキで走行し、先ほどから動かしっぱなしだった足を休めた。
白いガードレールに沿ってびゅんびゅんと坂を下る。いつもはゆっくり眺める街の景色も、尾をひいて後ろに流れてゆく。それを横目にますます自転車のスピードは上がっていった。
道路を挟んだ向かい側では、灰色のシャッターやコンクリートの壁面がかわるがわる現れては消えていく。しかし坂の中盤あたりに差し掛かって、何か異様なものが目の端をかすめた。横目ではあったが克也の目はしっかりとそれを捉えていた。
いつもそこにはない何かが存在した、という事実が克也の中に酷い違和感を生じさせた。黒いコンクリートブロックの壁面に、青白い光の円が浮かんでいたのだ。人一人通れるほどの大きさの光の円はコンクリートに張り付くようにして輝きを放っていた。
無意識にブレーキを固く握った。相当なスピードが出ていたため、耳障りなブレーキ音が長く響く。ギョッとした顔で振り向くが坂は緩やかなカーブになっていて、克也が止まった場所からはもう見ることができなかった。疲れているわけでもないのに呼吸が浅い。妙に体が強張っていた。しかしその日は学校に遅刻しそうな状況だったこともあり、引き返そうにも引き返せず、気持ちの悪い違和感を引きずったまま学校へと向かった。
ホームルーム中だった教室の後ろ側のドアを静かに開けて、振り向くみんなの視線を感じながら席につく。
「おい、どうしたんだよ、珍しいじゃん。」
今年同じクラスになって知り合った坂田雄大が、声を潜めて後ろから話しかける。
「いや、普通に寝坊。起きたら8時でびびったって。」
「どうせ夜中までエロ動画漁ってたんだろ」
茶化すように言ってニヤニヤしている雄大を睨み、前へ向き直る。担任は遅れてきた克也に構わず話を続けていたが、ホームルームが終わるとすぐに克也を呼び出した。
「お前珍しいな、今日はどうした?」
率直な質問に答えるべきか迷う。ここで馬鹿正直に寝坊だと答えたら、いくらホームルームが終わる前に来たからといっても、遅刻扱いになり、無遅刻無欠席という夢が早くも叶わぬものとなってしまうのではないだろうか。それはどうしても避けたい。しかし…。あれこれと思案するうちに、不自然に間が空いてしまった。ここで体調不良だったなどと言えば、その場で作った言い訳と捉えられそうだ。
「えっと…寝坊です。」
どもりながら正直に答えると、担任の岩田の返答は案外あっさりしたものだった。
「ほぅ、そうか。まあ一年の時に頑張ってたからな、今回は遅刻してないということにしとくぞ。明日はちゃんと来いよ。」
しおらしく返事をした後、正直に言っておいてよかったと内心ガッツポーズを決めて席へ戻る。
「なあなあ」
すかさず雄大が話しかけてくる。
「なに?」
「俺昨日めっちゃいいバイト見つけた。」
「え、まじで?どんな?」
いつもの調子でいる雄大に安心したのか、いつの間にか今朝の出来事が遠い過去のことのように感じられ、友達と他愛もない話を始める頃には、あの時一瞬だけ見えた変な光は気のせいだったのではないかと疑うほどになっていた。カーブミラーか何かに太陽の光が反射して、コンクリート上に大きな光の円が現れたように見えたのかもしれないと思ったりもした。とにかく、あれはそんなに気にかけるようなものではないと自分に言い聞かせた。
帰り道、雄大とゲームセンターの前で別れた後、克也はその足でバイト先の居酒屋へと向かった。
「あらかっちゃん!もう来たの?まだ開店まで一時間くらいあるわよ?」
裏口のドアを開けると、店主の奥さんである裕子さんが具材の点検を行なっていたところだった。
「あ、こんちはー。裕子さんいつも早く来て開けてるから、今日も開けてるんだろうなと思って。何か手伝います?」
「んーそうね。じゃあテーブル拭いて、床掃いてくれる?いつも私がやってたから、今日はかっちゃんに甘えちゃおっかな。」
「全然いっすよ、裕子さんのためなら」
「あら、かっちゃんったら世渡り上手になっちゃって。」
二人で笑い合っていたところ、克也に次いで店主の龍司さんが入ってきた。
「おおー今日はえらく早いな克也、さっそく裕子にこき使われてんのか。」
「やあね、これかっちゃんのボランティアなのよ!ねえ、かっちゃん?」
そう言って豪快に笑う龍司さんとつられて笑顔になる裕子さんは、もう結婚して八年目になるらしいのだが、本当に仲のいいおしどり夫婦だとつくづく思う。バイト生たちの間でも理想の夫婦の代名詞としてとおっている程だ。
この夫婦との出会いは五年ほど前、二人が克也の母の葬儀に参列していた時だった。母は神崎夫婦が経営している居酒屋扇(おうぎ)の常連客であり、母の明るくあっさりした性格が快活な裕子さんとの相性がよく、何より歳が近かったことから喋ってすぐに仲良くなったと聞かされた。裕子さんは母から二人の子供がいることを昔から聞いていて、ずっと会ってみたいと話していたという。女手一つで育てられた克也と茜は保護者がいなくなったため、遠い親戚のもとへ引っ越すことになっていたが、「転校の手続きも大変だし、うちは子供もいないから家も広いからうちに来ればいい」という神崎夫婦の提案により、親戚の仕送りはあるものの、二年ほどお世話になったことがあるのだ。裕子さんは若い頃に子宮を摘出していて子供が産めない体だったため、急に舞い込んだ二人の子供に手厚く世話を焼いた。たまに泣いている克也や茜を見かけると、一緒になって泣いて励ます事もあった。いつものご飯や茜の弁当は料理人である龍司さんが気前よく作ってくれて、二人ともひもじい思いをすることは全くなかった。当時高校三年生だった茜は扇でバイトしながら様々な資格を取得し、大学へは進学せずに就職した。そしてすぐ弟の克也を連れて、寂しがる神崎夫婦のもとをこれ以上迷惑はかけられないと飛び出した。まだ親戚の仕送りに頼っているところはあるものの、今は二人でマンションのー部屋を借りて生活している。そういう深い縁があって、克也は神崎夫婦と姉への恩返しという意味も含めて扇でバイトしているのだった。
バイトが終わる頃にはとうに9時をまわっていた。空きっ腹に懐かしい味の賄いを流し込むようにして平らげると、裕子さんと龍司さんに一声かけてすぐに店を後にした。
バイト中、酒や料理を運んでいるうちに何がきっかけとなったのかは分からないが、学校にいる間はそれほど気にならなかった今朝の光のことが無性に気になり出したのだ。どうしてもあの場所へ行って確かめたい、というより確かめなければならないというよな義務感に似た気持ちに襲われた。
外に出ると、湿気に満ちた空気が体全体をもわりと包みこんだ。湿った風を頬に受けながら、はやる気持ちでペダルを漕ぐ足に力を入れる。坂の下に差し掛かると立ち漕ぎの体制に変わり、スピードをなるべく落とさないよういっそう強く踏み込みに力を注いだ。ちょうど今朝自分が止まった辺りにくると、暗闇に浮かぶコンクリートの石垣の向こう側が自ずと想像されて、思わず鼓動が早まる。待ち切れないとでもいうように長い首を伸ばして、緩やかなカーブをもどかしく思いながらも石垣の向こうを覗き込んだ。
しかし、克也の淡い期待はすぐに打ち砕かれた。そこには所々苔の生えた、いともとなんら変わり映えのしない石壁が単調に続いているだけだった。一旦自転車を止め、荒い息を整えつつ壁面を観察する。恐る恐る触れてみるが、湿っているというだけで特に変わった様子は見られなかった。一通り確認し終えると、克也は短いため息をついて肩を竦ませた。やはり今朝自分が目にしたものは気のせい、又は何か条件が重なったら起こる現象の類なのだろうということで結論づいた。克也は事実を確かめてみて少し安堵しながらも、どこか拍子抜けするような気持ちでいた。
一ヶ月が経ち、また嵐がやってきた。朝のニュースではすでに昨夜の暴風雨によって倒された木々の映像や、氾濫しかけた河川の状態などがここぞとばかりに放映されている。アナウンサーが神妙な顔をして、茶色く濁った流れの早い川をバックに何かを訴えている。それをどこか冷めた気持ちで見ながら、姉の料理を口に運んだ。
「なんか、最近多いねぇ嵐。昔からこんなだったっけ?」
寝巻き姿の姉がニュースを見てぼやく。
「しらね。温暖化による異常気象とかじゃねーの?」
「ふーん。」
姉の気のない返事をよそに克也はさっさと朝食を終えると、ご馳走様と小さく呟いていそいそと食器を台所へさげていった。
駐輪場に来てみると、案の定自転車が横倒しになって積み重なっていた。上の方の自転車には、小さな葉や泥がそこかしことこびりついている。克也は短く舌を打つとぐるりと方向転換し、駐輪場に背を向けて歩き始めた。今朝はこの前と違って余裕があったため、わざわざ自転車を引っ張り出すような真似はしなかった。
茶色い水が勢いよく音を立てて溝を流れていく。雨上がりの独特の鈍い匂いを鼻の奥で感じながら、黒く濡れた道路の上をとぼとぼ歩いた。いつもと変わりばえのしない景色を、坂の上からなるべく新鮮な面持ちで眺めなおす。
この坂は小さな山の斜面に沿って作られていて、左を向けばガードレール越しに山の下に集まる街並みが一望できるようになっていた。南から北にかけて、徐々に住宅街からビルが立ち並ぶ商店街へと姿を変えてゆく。脇には地形に沿った形で灯呂川がなだらかに流れている。家から街へと次々に目を移し、周りを囲む山並みを視線でなぞった。
景色に気を取られているうちに、気づけばもう坂の下まで降りてきていた。すぐ目の前の信号は車が一台も来ていないのにもかかわらず、青に点灯していた。ずぼんのポケットに手を突っ込み信号が赤に変わるのを待っていた時、リュックのサイドポケットに入れておいた携帯電話が鳴った。画面には茜という文字が表示されている。
「もしもし。何?」
「何じゃない、あんた弁当忘れてるよ。」
「うわまじかー、もう坂降りたんだけど。車で持ってきてくんない?」
「そんなことしてたら私が間に合わなくなっちゃうよ。あんたまだ時間大丈夫でしょ?早く取り帰って。」
姉が一方的にぶつりと電話を切る音を聞くと、克也は心中でばか姉貴となじった。先ほど降りてきた坂を走って登っていると、やはり中程あたりに差し掛かったところで少し息が上がってきた。携帯を見て時間があることを確認すると、少しペースを緩める。
その時だった。
それはなんの前触れもなく訪れた。克也は目の前のあまりに現実味のない光景に眼を見張り、ごくりと生唾を飲み込んだ。そしてひどく狼狽し、喉元で低く唸った。
「なんだ、…これ。」
克也がゆるゆると登ってきた坂の中盤、黒く湿った石垣の壁面にそれはあった。あの時一瞬見えた青白い光が、石壁にぽっかりと大きな口を開けていたのだ。
この世のものとは思えない不気味さ、異様さに頭の芯が凍りつく。克也は金縛りにあったように、その場に立ち尽くした。そして記憶を辿り、一ヶ月前に自分が目にしたものが気のせいでも光の反射でもなかったことを、改めて思い知らされた。
近くで目にしてみるとそれは強烈な光を放ちながら、円の中は青白い霧のようなものに満たされぐねぐねと蠢いている。あまりにも現実離れした光景の気色の悪さに、全身の毛が一気に逆立つのを感じた。眩しさに眉を潜めながら、一歩後ずさる。
今、克也の意識は未知のものへの恐怖で支配され、背中にはびっしょりと嫌な脂汗をかいていた。しかしそれと同時に、恐怖に包まれた克也の意識の最も深いところで、ある種の危うい好奇心が芽を出した。それを覆い隠すように機能する理性は、即座にもこの場を離れたがっている。しかし、揺るぎない本能がこの光の正体を知りたいと叫んでいるような気がしてならない克也は、自分の矛盾した感情に板挟みになりながらも、足が地面にくっついたようにその場を動けなくなってしまった。光を凝視し硬直していると、突如坂の上の方から車のエンジン音が響いてきた。
誰かが降りてくる。この状況を見られてはまずい。直感的にそう確信した瞬間、身体中に張り巡らされた緊張の糸がふっと緩み反射的に体が前へせりでた。
克也はほぼ無意識のうちに、正体不明の光めがけて真っ直ぐに駆け出していた。その時はそうするのが一番正しい選択のように思えたからだ。そして一度走り出してしまった以上、克也はもう何振りかまっていられなくなった。徐々に克也と光との距離が縮んでゆく。
まず思い切り前へ振った右手が光に触れた。というより視覚的には触れているのだが、触っているという実感はないに等しいと言った方が正しい。
そしてもう一つ確信したことは、この光には奥行きが存在するということ。石壁が光っているのではなく、この光はどこかの空間へと繋がっているということだ。
右手が光の中へ入ると同時に、今度は光の方が克也を見えない力で引き寄せてくる。体が自然と光の中へ引っ張られ、先ほどまでの好奇心が嘘のように萎縮し、今更のように言いようのない恐怖が心を満たした。しかし克也が怖気付いても、もう手遅れだった。体は手から腕へ、腕から肩へと光に侵食されていく。克也はぎゅっと固く目を閉じた。
どさりと上から落ちたような衝撃を感じた。
「いって…」
小さく呻くと、じーんとした痛みの残る腰をさすった。克也は地面に尻餅をついていた。湿り気のあるひんやりとした地面を手のひらで感じながら、周りが妙に薄暗いことに気付く。真上を見上げると高くそびえる赤いレンガ調の建物に挟まれて、青く澄んだ空が四角く切り取られている。どうやらここは路地裏のようだ。
しかし先ほどまで家の近くにいたはずなのに、見渡す限りここに馴染み深い景色は一切見あたらなかった。する今までは感じなかった漠然とした不安が急に込み上げてきて、はるか上空を呆然と仰いだ。空を眺めるうちにあの光のことを思い出して勢いよく後ろを振り返ったが、そこにはそんな自分を嘲笑うかのように冷たい灰色のコンクリートの壁があるだけだった。
途端に先程の自分の衝動的な行動に対する後悔の念が、ふつふつと湧き起こる。なぜ一時の好奇心に身を任せてこんな大それた行動に出てしまったのだろう。なぜ自分はあの時踏み止まらなかったのだろう。正気とは思えない自分の行動に意気消沈した克也は、がっくりと首をうなだれた。
そうやって到底考えるだけ無駄な疑問を繰り返し自身にぶつけるうちに、こんなことをしていても何も始まらないとようやっと気づいた。克也は自分に喝を入れるように大きく息を吐くと、すっくと立ち上がった。同時に一瞬視界が暗く歪んだかと思うと、頭がぐらっと揺れ足元がふらつきよろよろと壁の方へ倒れる。その時足元に置いてあった瓶やゴミやらが詰め込まれた木箱に足をぶつけ、中身がひっくり返った。ひっそりとした薄暗い路地裏に瓶の割れる派手な音が響き渡る。
「£€*dha”!?:」
訳の分からない怒号のような声が表通りの方から聞こえた。数人の慌ただしい足音がこちらへ近づいてくる。突き当たりの壁に駆けつける二つの影がうっすら浮かび上がった。
角を曲がってきたのは、制服のようなものにぴったりと身を包んだ若い青年と、同じような衣服を着た同年代と思しき女だった。青地に白く縁どられ、金色の釦が施されたブレザーは、お尻の方が長く伸び、後ろからは一見コートのように見えなくもない変わったデザインだった。白いズボンに黒いブーツを誂え、制服とお揃いの黒い警官帽のような帽子を目深に被っているその姿は、どことなく正義を匂わせた。帽子の影から除く、黒く鋭い瞳が克也を捕える。
「₰₫£ªgg~i.?」
聞いたことも無い言葉で男が話しかける。
「いや、あの…えっと」
しどろもどろしになりながら身振り手振りで言葉がわからないことを伝える。いかにも真面目で堅苦しそうな青年は、先程から眉一つ動かさず克也をじっくり観察していたが、克也がどうやら言葉が話せないらしいことがわかると、そばに控えていた女に耳打ちをして、つかつかとこちらに歩みよってきた。身構える克也の目の前で立ち止まると、真っ直ぐ克也を見据えて力強く何か呟いた。
その瞬間、胴体に何かが食い込むような痛みが走り全身が動けなくなった。見てみるといつの間にか、克也の上半身は細い鎖で何重にも縛られていた。
「え、ちょ!」
困惑から生じた抗議の声は無視され、呆気なく取り押さえられる。黒髪の男が、おろおろしている付き添いの女に目で合図すると、女は慌ただしくこちらへ駆け寄ってきて、克也に申し訳なさそうな顔を向けながら男と克也の肩に手を置き何かを唱えた。すると数秒後には、克也は今まで見たことも無いような巨大なビルの前に立っていた。
0
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
魔王を倒した手柄を横取りされたけど、俺を処刑するのは無理じゃないかな
七辻ゆゆ
ファンタジー
「では罪人よ。おまえはあくまで自分が勇者であり、魔王を倒したと言うのだな?」
「そうそう」
茶番にも飽きてきた。処刑できるというのなら、ぜひやってみてほしい。
無理だと思うけど。
【完結】20年後の真実
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
公爵令息のマリウスがが婚約者タチアナに婚約破棄を言い渡した。
マリウスは子爵令嬢のゾフィーとの恋に溺れ、婚約者を蔑ろにしていた。
それから20年。
マリウスはゾフィーと結婚し、タチアナは伯爵夫人となっていた。
そして、娘の恋愛を機にマリウスは婚約破棄騒動の真実を知る。
おじさんが昔を思い出しながらもだもだするだけのお話です。
全4話書き上げ済み。
無能なので辞めさせていただきます!
サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。
マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。
えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって?
残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、
無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって?
はいはいわかりました。
辞めますよ。
退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。
自分無能なんで、なんにもわかりませんから。
カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。
聖女を追放した国は、私が祈らなくなった理由を最後まで知りませんでした
藤原遊
ファンタジー
この国では、人の悪意や欲望、嘘が積み重なると
土地を蝕む邪気となって現れる。
それを祈りによって浄化してきたのが、聖女である私だった。
派手な奇跡は起こらない。
けれど、私が祈るたびに国は荒廃を免れてきた。
――その役目を、誰一人として理解しないまま。
奇跡が少なくなった。
役に立たない聖女はいらない。
そう言われ、私は静かに国を追放された。
もう、祈る理由はない。
邪気を生み出す原因に目を向けず、
後始末だけを押し付ける国を守る理由も。
聖女がいなくなった国で、
少しずつ異変が起こり始める。
けれど彼らは、最後まで気づかなかった。
私がなぜ祈らなくなったのかを。
冤罪で辺境に幽閉された第4王子
satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。
「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。
辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる