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男
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初めまして、僕は健太っていいます。
これは偽名です。本名とはなんの関係もありません。
僕は舞台役者をしています。
まだまだ駆け出しの舞台役者です。
この前は初めて映画のメインキャストに選ばれました。もう…なんていうか、嬉しくて嬉しくて、家に帰ってすぐさま僕の彼女に報告しました。
いやぁ…嬉しかったなぁ……嬉しかったなぁ…………。
僕の彼女ですか?…そうですね、とても明るくて笑顔の絶えない素敵な彼女でした。
去年の春に婚約指輪を渡して、今でもずっとそばに置いてあります。
彼女の職業も舞台役者でした。
彼女の夢は舞台役者だけじゃなく、映画にも出て、いつかは大きくハリウッドに出ることでした。
彼女はとても若かった。僕の3歳下なんです。
身長も僕より15cmも小さくて、いつも僕を見つけるとトコトコ走って寄ってきてくれて、ほんとに子犬みたいに可愛くて、
生えてない耳と尻尾がブンブン振られているのがよく見えてました。
…あれはいつだったかなぁ、僕は彼女と同棲してちょうど2年目で…確か夏でした。
セミが鳴いてて、風鈴の音がしていたので夏です。
彼女のご両親が不慮の事故で亡くなってしまって、彼女は一人っ子で、親戚にも会ったことがなくて、身内がいなくなってしまいまして、僕がなんとか彼女を支えようって決意して、
でも、その2ヶ月後、彼女は僕を呼び出してこう言ったんです。
「健太くん。私ね、夢叶えられないかもしれないの。」
僕は、どうして?と何度も聞いたんです。
でも、
「ごめんね、ごめんね。」そう何度も呟くだけでした。
その頃彼女は僕との子供をお腹に宿していました。
それからしばらくして、秋も通り過ぎて冬になって、あたりはクリスマスシーズンで、みんなマフラーして綺麗なイルミネーション見てとても輝いていました。
その時彼女は痩せほそって病室で寝ているだけになってしまっていました。
彼女はとても前向きでした。
いつも前向きで、ひたむきで、
僕が落ち込んでいると、彼女はいつも励ましてくれました。
「大丈夫だよ、まだまだ私元気だから。」
って、力のない笑顔で微笑んでくれました。
病は気からとはよく言ったもので、彼女は医者が驚くほど回復したんです。
「もう治ったようなもんだね」
そう、医者は言ったんです。
僕と彼女は退院してから何しようかって話をたくさんしました。
旅行に行って、
もっといっぱい世間のことを知って、
もっといっぱい演技勉強して、
いつか、ハリウッド作品に出てやるんだって笑顔で話して、
クリスマスのイルミネーションが街から消えた頃に彼女は眠りから醒めなくなって、
彼女は夢を叶えることなく人生に幕を下ろしました。
彼女の冷たい体が徐々に固くなっていくのを感じて、
僕は怖くなりました。
怖くて怖くて仕方なかった…
彼女はまるで人形のようで、
これから起こりうる物語に興味がないと言わんばかりに目の光なんか失われてしまっていて、
そうして僕は、役者の道を進むことにしたんです。
彼女の見れなかった世界を、代わりに僕が見てやるんです。
子供に見せられなかった母親の大きな景色を
僕が代わりに作り上げていくんです。
彼女よ。今笑っていますか?
彼女よ。生まれ変わる準備はできてますか?
彼女よ。もう一度会いにきませんか?
僕にも見える姿で会いにきませんか。
彼女よ。悔しいだろう。
君の見れなかった大きな世界を
僕は今つかもうとしている。
君から始まるこの大作を…見せてやれないのはとても残念だけど…出してやれないのも…とても残念だけど、
僕から君へ、君と僕の娘への愛がたっぷり詰まった話なんだ。
どうか…どうにかして…届くといいなぁ…僕の気持ちが…
君よ!…
君と娘よ!…
すまない!本当にすまないっ…どうにも君の夢、全部は叶えられそうにない!
僕は…ハリウッドまで行きたかったけど…
どうも僕の分まで時間はないみたいなんだ!
僕の分まで世界は時間を作ってはくれないみたいなんだ…
ごめん…この作品が僕にとっての最後の作品になるみたいです。
君は言うんだろうね
「なぁに一丁前に謝ってんだ!」って
君は言うんだろうね
「しゃきっと前向いて最後までやりぬきなさい」って。
かっこいいところ見せて終わりたいんで、
このまま、物語に幕を閉じたいと思います。
それではまた来世でお待ちしております。
これは偽名です。本名とはなんの関係もありません。
僕は舞台役者をしています。
まだまだ駆け出しの舞台役者です。
この前は初めて映画のメインキャストに選ばれました。もう…なんていうか、嬉しくて嬉しくて、家に帰ってすぐさま僕の彼女に報告しました。
いやぁ…嬉しかったなぁ……嬉しかったなぁ…………。
僕の彼女ですか?…そうですね、とても明るくて笑顔の絶えない素敵な彼女でした。
去年の春に婚約指輪を渡して、今でもずっとそばに置いてあります。
彼女の職業も舞台役者でした。
彼女の夢は舞台役者だけじゃなく、映画にも出て、いつかは大きくハリウッドに出ることでした。
彼女はとても若かった。僕の3歳下なんです。
身長も僕より15cmも小さくて、いつも僕を見つけるとトコトコ走って寄ってきてくれて、ほんとに子犬みたいに可愛くて、
生えてない耳と尻尾がブンブン振られているのがよく見えてました。
…あれはいつだったかなぁ、僕は彼女と同棲してちょうど2年目で…確か夏でした。
セミが鳴いてて、風鈴の音がしていたので夏です。
彼女のご両親が不慮の事故で亡くなってしまって、彼女は一人っ子で、親戚にも会ったことがなくて、身内がいなくなってしまいまして、僕がなんとか彼女を支えようって決意して、
でも、その2ヶ月後、彼女は僕を呼び出してこう言ったんです。
「健太くん。私ね、夢叶えられないかもしれないの。」
僕は、どうして?と何度も聞いたんです。
でも、
「ごめんね、ごめんね。」そう何度も呟くだけでした。
その頃彼女は僕との子供をお腹に宿していました。
それからしばらくして、秋も通り過ぎて冬になって、あたりはクリスマスシーズンで、みんなマフラーして綺麗なイルミネーション見てとても輝いていました。
その時彼女は痩せほそって病室で寝ているだけになってしまっていました。
彼女はとても前向きでした。
いつも前向きで、ひたむきで、
僕が落ち込んでいると、彼女はいつも励ましてくれました。
「大丈夫だよ、まだまだ私元気だから。」
って、力のない笑顔で微笑んでくれました。
病は気からとはよく言ったもので、彼女は医者が驚くほど回復したんです。
「もう治ったようなもんだね」
そう、医者は言ったんです。
僕と彼女は退院してから何しようかって話をたくさんしました。
旅行に行って、
もっといっぱい世間のことを知って、
もっといっぱい演技勉強して、
いつか、ハリウッド作品に出てやるんだって笑顔で話して、
クリスマスのイルミネーションが街から消えた頃に彼女は眠りから醒めなくなって、
彼女は夢を叶えることなく人生に幕を下ろしました。
彼女の冷たい体が徐々に固くなっていくのを感じて、
僕は怖くなりました。
怖くて怖くて仕方なかった…
彼女はまるで人形のようで、
これから起こりうる物語に興味がないと言わんばかりに目の光なんか失われてしまっていて、
そうして僕は、役者の道を進むことにしたんです。
彼女の見れなかった世界を、代わりに僕が見てやるんです。
子供に見せられなかった母親の大きな景色を
僕が代わりに作り上げていくんです。
彼女よ。今笑っていますか?
彼女よ。生まれ変わる準備はできてますか?
彼女よ。もう一度会いにきませんか?
僕にも見える姿で会いにきませんか。
彼女よ。悔しいだろう。
君の見れなかった大きな世界を
僕は今つかもうとしている。
君から始まるこの大作を…見せてやれないのはとても残念だけど…出してやれないのも…とても残念だけど、
僕から君へ、君と僕の娘への愛がたっぷり詰まった話なんだ。
どうか…どうにかして…届くといいなぁ…僕の気持ちが…
君よ!…
君と娘よ!…
すまない!本当にすまないっ…どうにも君の夢、全部は叶えられそうにない!
僕は…ハリウッドまで行きたかったけど…
どうも僕の分まで時間はないみたいなんだ!
僕の分まで世界は時間を作ってはくれないみたいなんだ…
ごめん…この作品が僕にとっての最後の作品になるみたいです。
君は言うんだろうね
「なぁに一丁前に謝ってんだ!」って
君は言うんだろうね
「しゃきっと前向いて最後までやりぬきなさい」って。
かっこいいところ見せて終わりたいんで、
このまま、物語に幕を閉じたいと思います。
それではまた来世でお待ちしております。
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