称号がすべてのこの世界で少年は、世界最強を目指す!

フィンガー

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プロローグ

泣き虫ラルク

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称号がすべての世界『タトル』。
僕は、その世界でも世界五大国と言われる国『リーヴァル王国』の、端にある町『ネース』の、近くにある村『ナーノル村』に住んでいる。
こんなに回りくどく言っているが、まぁ用はど田舎に住んでいるということだ。
何故回りくどく言うかと言うと、少し大きな町で出身をナーノル村だなんて言うと、「何処だよそこ!ど田舎すぎんだろ!ワハハハハハ!」と絶対にバカにされるので絶対に出身地はネースだと言う。
出身がど田舎でさえなければこんなことに悩まされることもないのに。
まぁ、僕の悩みはこれではないんだけどね。しかも、僕の悩みは二つある。

「おい!泣き虫ラルク!朝はちゃんと起きれたようだな!決闘をするからいつもの場所に早く来いよ!まぁ、怖くなって家に逃げてママのおっぱいをしゃぶっているってのでもいいけどな!ギャハハハハハハ!」

「「「ギャハハハハハハ!」」」

こいつらだ。僕の悩みはこの悪ガキ達だ。まぁ、自分もガキだけどね。
この、悪ガキ達は『餓鬼大将』というサブ称号を持ったドンマと、『舎弟』というサブ称号を持った取り巻き達で出来上がっている、この村一の悪ガキ達だ。まぁ、この村の悪ガキ達はこの悪ガキ達で全員なんだけどね。
今日も決闘ごっこイコールほとんど僕と木の棒で決闘という名目でボコって遊ぶために木の棒を剣に見立てたものを持って僕を呼びに来た。村にはする事がほとんど無く、ほぼ毎日これなので、いつもの日課の様になって来ている。そう、これが一つ目の悩みだ。
ちなみに、さっき呼ばれた泣き虫ラルクというのが僕だ。分かってるとは思うけど、泣き虫は名前に入らないからね。薄々勘付いてるだろうけど、僕は『いじめられっ子』というサブ称号を持っている。

「わ、分かったよ。直ぐに行くよ」

「言ったな?ちゃんと来いよ!来なかったらどうなるか分かってるよな?」

「あ、あぁ。分かってるよ」

ドンマ達が、「絶対だぞ!」と言っていつもの場所に行った。僕は、憂鬱な気分になりながらも無理矢理作らされた自分お手製の木の剣を手に取りいつもの場所に向かった。



いつもの場所に到着した時には、ドンマ達はすでに決闘ごっこを始めていた。だが、今回のメンツがいつものメンツ以外にもう1人増えている事に、僕は直ぐに気づいた。何故なら、そいつの周りには村の女子達が集まっているからだ。

「うわっ、シュウがいる。今日は最悪の1日になるな」

僕は女子達に囲まれたシュウを見て小さくそう呟いたあと視線をシュウから逸らす。
何故なら、あいつが僕の二つ目の悩みだからだ。
シュウは、この村唯一の守護兵士をしているエストさんの息子だ。この村ではそれだけでも良いステータスなのにイケメンなんだ。金髪に透き通った青い目をしたクールビューティー。まさに絵に描いたようなイケメンなのだ。僕は黒髪黒目のパッとしない顔なのに。その上あいつは天才肌とくる。本当に心が劣等感に押しつぶされそうになるよ。神様は不公平だ。
僕が優っているところは物覚えの良さだけだ。だけど、僕は運動神経が悪い。天才になるには物覚えの良さと運動神経二つとも揃ってないといけない。
だって考えても見てくれ、顔は普通、頭は一番良いが運動神経は悪い奴。顔は超イケメン、頭も運動神経も一番ではないがかなり良い奴。どっちがモテる?
絶対的に後者だろう。本当に嫌になるよ。ドンマ達も嫌な顔をしているし。
だが、悩みと嫌いな理由は違う。悩みと嫌いな理由あいつの性格にあるんだ。
あいつはドンマ達に呼ばれてもいないのにたまにわざわざ来て、ドンマも含めて全員をボコって行くんだ。しかも、女子達のいる前で。本当に屈辱的だ。しかもあいつは、それを面白がってやっているんだ。あいつは、あまり喋らないからクールでかっこいいと女子達に絶大な人気を誇っているが。あいつは、クールを装っているだけで実際は人の心を抉るのが大好きな最低人間なのだ。何故わかるのかと言うと、あいつは決闘ごっこをする時いつも周りにいる女子達に聞こえないくらいの声で、馬鹿にしながらじわじわと辱めながらボコるんだ。これが、僕の二つ目の悩み。
二つある悩みを同時に相手しなきゃいけないこの状況。誰でもいいからどうにかしてください。
だって絶対あいつ、『モテ男』とか『イケメン』ていうサブ称号持ってるもん。いや、見たことはないけどさ。

「おっ、あいつやっと来やがった。遅かったから今日はフルコースだな」

さっきまで嫌な顔をしてたドンマ達が僕を見つけるとニヤニヤしながらそう言って近づいて来た。てかフルコースって何?僕そんなの知らないんだけど⁈



「おい!そんなもんなのかよ!もうちょっと頑張れよ泣き虫ラルク!ギャハハハハハハ!」

「..........っ!」

只今ドンマにボコられ中です。僕はうずくまってできるだけ安全な体勢でボコられている。いつもの日課みたいになって来ているのが悲しい。

「おらおらおらおら!どうした?泣けよ!」

嫌だよ!泣くわけないじゃん。今日は女子達もいるんだよ!ボコられてるのを見られてるのでさえきついのに、泣いてるところまで見られたら恥ずかしくてもう絶対家から出られなくなるよ。それに、もしかしたら『泣き虫』とかいうサブ称号手に入れるかもしれないだろ!僕はそれが嫌だから今日まで泣かないで頑張ってきたんだ!こんな所で諦めて泣くもんか!

「チッ!また反応無しかよ。面白くねー。もういい、これでトドメだ!」

ドンマはそう言って木の剣を大きく振り振り下ろす。

「ぐっ!」

背中に激痛が走って思わず呻き声が出る。今日はいつもより酷いボコられ方だった。これも全部シュウのせいだ。

「今度は僕と決闘をしてくれるかな?」

ドンマにボコられるのが終わるのを見計らってシュウがボコりに来た。

「う、うん。いいよ」

僕は初めから選択肢は一つしかないので了承する。

「それは良かったよ。それじゃあ、始めようか」

そう言ってシュウは木の剣を構える。

「「「キャー‼︎シュウ様かっこいい‼︎」」」

女子達から黄色い声援が聞こえる。そして、それは僕が今日聞いた最後の言葉だった。



「はっ!うぐっ!~っ!」

目覚めると僕は自分のベッドの上にいた。窓から強い朝日が照って半日気絶していたことを教えてくる。身体中が痛い。まあ、それ以上に半日も時間を無駄にした事が残念だけど..........。多分、気絶してからみんなに放ったらかしにされた後、幼馴染のミントが渋々家の前までひこずって運んだんだろう。恥ずかしい。穴があったら潜りたい。

「ラルク!またイジメにあったみたいね!しかもその後ミントちゃんにわざわざ家の前まで運ばれて来て!心配以上に恥ずかしいわよ!」

母さんが目を覚ました俺に気づいてそう怒って来た。「さっきまで気絶してた息子に起きてすぐの一言がそれかよ!」って言いたいが、これは僕が気絶した後のお決まりなので僕は黙って怒られる。

「もう!なんとか言ったらどうなの!」

「ごめんなさい」

「もう!いっつもごめんなさいばっかり言って!もういいわ!買い物に行って来るわ!」

母さんはそう言って買い物に行った。母さんこの会話もいっつもだよ。



「あ、あのずっと前から好きでした!こんな、ダメダメな僕だけど良かったら付き合って下さい!」

あれから3年後13歳になった僕は幼馴染のミントにありきたりな言葉を並べて告白をしている。すごく恥ずかしい。
まぁ、村のみんなが幼馴染だけど、ミントは親同士が仲が良く本当に小さい頃から一緒に遊んだりしていた、村一番の幼馴染だ。まぁ、最近は全然遊んでないけど。まぁ、女子だし歳をとったら趣味も違ってくるだろうし..........当たり前だよね?周りのみんなが僕を笑い者にしている時もミントだけは笑わないでいてくれる優しい子だ。昔から一番の幼馴染でしかも異性なので昔から僕は好きだったけど、そんな優しいミントに余計にひかれていった。
だけど僕は、この告白が成功しないだろうと思っている。何故なら、彼女が僕のことをどう思っているかはわからないが多分、彼女は僕のことを弟みたいに思っているだろうからだ。それにミントは村で一番可愛い子だ。多分『アイドル』とか『モテ女』とかいうサブ称号を持っているだろう。まさに、高嶺の花だ。
でも、僕は一度だけでいいから自分の気持ちを伝えたかったのだ。

「ごめん無理」

彼女が頭を下げる。ほらやっぱり。

「いや、いいよ。分かってた事だから。気にしーー」

「ーーいや、てゆうか昔からあんたのことは苦手だったんだよね」

ミントは僕が全部を言い切る前にそう言ってきた。
え?なんか口調変わってませんか?じゃなくて、あの優しかったミントは?え?

「いや、だってあんた女々しいじゃん。女子としてはかなりなりないのよね。第一人称僕だし。それに、ひょろひょろしてて弱っちいし。しかも、サブ称号に『アイドル』と『モテ女』を持ってる私とは釣り合わないでしょ」

今までの優しかったミントは幻だったかのような豹変ぶりだ。僕の中でのミントのイメージが崩れていく。
こんなはずじゃなかったのに..........嘘だと言ってよ。
ミントはそんな僕の心境も知らずに罵倒を続ける。

「親が仲良いからあまり笑ったりしないように気をつけたり優しくしてたけど..........まさかそれで勘違いしちゃった?アレ?図星?ごめーん!アハハハハハハ!」

「...............」

僕はショックのあまり驚いた顔のまま硬直している。
もう、言わないでくれ。

「まあ、という事で私はあんたのこと好きどころかむしろ嫌いだから。ほんと、あんたと遊ぶの疲れるから嫌だわーって思ってたら最近段々遊ぶ機会がなくなってきたからラッキーと思ってたら、今度は姉みたいに面倒見なきゃいけなくなってきてイライラしてたんだよね。あー、スッキリした!それじゃ!」

「....................」

そう言ってミントが背を向ける。僕はその背を黙って見ている。

「あっ!そうそう、知らないだろうから教えてあげるけど、私シュウと付き合ってるからそれ以前の問題なんだよね。私に釣り合うのはこの村じゃシュウくらいでしょ。まあ、そういう事だからじゃあね。アハハハハハハ!」

去り際にミントが振り向いて思い出したかのようにその言葉だけ残して帰って行った。
もういいや。
もう、誰も信じないようにしよう。
それに、女々しいのもめやめよう。
あと、体も鍛えよう。
というか、一番最初に第一人称僕って言うのやめよう。
こうして、この日から僕の人格は豹変した。
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