称号がすべてのこの世界で少年は、世界最強を目指す！

第1章

やり過ぎた

「っ！お、俺のパンチをたまたま止められたからって、ち、調子に乗ってんじゃねー！」

男はもう片方の手を振り上げる。

やっぱり遅い。

「いや、一回一回動きが遅すぎるから」

待ってやる義理もないので、俺は、そう忠告をすると同時にガラ空きになっている腹に軽く一発入れる。
だが、軽くやったつもりだったのだが、ドムッ！と鈍い音がする。

「ぶっ！」

男は血を吐きながら前のめりになって後ろに吹き飛ばされそうになるが、俺が手を握っていたせいで腹にパンチがめり込む結果になった。
そして、男はそのまま崩れ落ちるようにその場に倒れこむ。

「あー、もしかしてやり過ぎたかな？」

そう思った俺は確かめる為に周りを見渡す。すると、案の定周りは笑った顔のまま石化したように固まっていた。

「やっぱり、やり過ぎたな」

俺は苦笑いしながら頬をかく。そして視線をさっき接客してもらった受付嬢の方に向ける。
すると、固まっていた表情がみるみる青くなりそして、青を通り越して白くなる。

「キ」

「キ？」

「キャー！」

そして、カウンターの奥に向かって全速力で逃げて行った。

えー、そんなに怖かった？あっ！これ連鎖していくやつだわ。やばくね？

俺は慌てて「落ち着いて下さい！」と、言おうとするが、時すでに遅し。

「に、逃げろー！」

「まだ、死にたくない！助けてくれー！」

「キャー！」

受付嬢の悲鳴が連鎖となって周りに移って行き一瞬にしてギルド内が混乱に陥った。
ギルド職員はカウンターの奥に、椅子に座って煽っていた冒険者達は入り口に向かって我先にと一目散で逃げ始める。
俺は呆気にとられて、その光景を見ながらポーカーンと突っ立っていた。

スゲー。初めて見たこんな光景。

俺が呑気にそう考えているうちにギルド内はすっからかんになった。
もうギルド内にいるのは俺の他に俺に殴られて気絶して倒れている男と、失神して逃げそびれてしまった椅子から転げ落ちるように倒れている奴らが４人居るだけだ。

あー、これって、町来て早々にやっちったよな俺？

俺は今更になって焦り始める。

「ま、まずはめんどくさいことから逃れる為にこの場から逃げよう」

だが、俺がこの場から離れようとした瞬間。

「おい！お前ら！でかい声や悲鳴が聞こえてきたが何が起こってるんだ？それに、下が大騒ぎになってるのに、なんで誰も呼びに来ないんだ？俺呼ばれるの待ってたんだぞ！」

二階から男の声が聞こえてきた。
そして、階段を降りてくる音がする。

ヤバイ！逃げーー

「ーーなんで誰も返事しないんだ？」

「はい！」

逃げようと思った瞬間それを遮るように男の声が聞こえてきたせいで、余計に焦った俺は思わず返事をしてしまった。

し、しまったー！

「？誰の声.........................」

背後から男の声が聞こえてきた瞬間。
階段を降りきったところで足音と声がぴたりと止また。

い、嫌な予感しかしない。完全にこの光景俺が悪いみたいだよな。振り向きたくないー！でも振り向かないといけないよなー。このまま逃げたら完全に悪者扱いされて捕まって牢獄送りにされるパターンだよなこれー。嫌すぎるー！

俺は嫌々ながらも後ろん振り向く。
するとそこには、階段を降りきったまま、呆けた顔をして固まっている見た目二十代後半くらいの茶髪に金色の目をした、どこにでもいそうな顔立ちの男がいた。

「.........................」

「.........................」

「.........................」

「.........................」

お互いに何も言わずに見つめ合うだけの時間が流れ続ける。

ええい！ままよ！

それに痺れを切らした俺は1番単純でわかりやすく言いたい事を言う。

「こんな状況になったのは俺のせいじゃないんです！こいつのせいなんです！」

俺は倒れて気絶している男を指差す。
茶髪の男は俺と倒れて気絶している男を交互に見た後。

「どう見てもお前のせいにしか見えないだろーが！苦し紛れの言い訳にしか聞こえんわ！しんじられるわけねーだろーが！てか、お前は誰だ‼︎」

この状況なら、誰もが絶対に言うであろう言葉を言い放った。