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義彦の政界進出
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「……何故だ?」
自分の希望、政界進出の第一歩として出ようとしていた県知事選挙出馬を止められた義彦は忠弥を睨み付けた。
確かに、普通なら市町村議会を経て、市町村長か県議会の議員を経てようやく県知事に出馬出来る。しかし当選出来るかどうかは微妙だ。
だが忠弥が人類初の有人動力飛行を成功させた今、そのスポンサーである島津の名が轟いている今なら県知事に当選できる可能性は十分にある。
なのに忠弥は止めようとしている。
いつか皇国の未来をその双肩に担いたいと義彦は熱望していた。
だが、一平民である義彦には、政治に関わるだけの人脈も身分もなかった。
平等を謳っている政府だったが、ようやく最近になって普通選挙が行われる状況であり、以前ならば出馬さえ不可能だった。
特に開国時期は武士などの特権階級しか参加できなかった。
平民は排除されており、義彦が商売の道を選んだのも、主要ポストを旧武士階級によって独占されている政府に入るより商売人の方が自由に動き、立身出世のチャンスが多いと判断したからだ。
結果、島津は新興財閥としては、大きな力を得ている。
忠弥と出会う前にそこまでの財閥を作り上げた義彦の手腕はそれで証明されている。
そして、財閥を立ち上げたのはいずれ、財閥と国への助力をバックに政界に進出するためであり、いずれ政治家になろうとしていた。
だから義彦は止めてきた忠弥を睨み付けた。
出馬の機会を与えてくれた恩人でも、自分の夢を阻むなら許せない。
しかし忠弥は義彦の視線に臆することなく淡々と理由を述べた。
「今以上に飛行機を発達させるには、世界規模で考えないと行けません。そのためには社長には世界的な政治家になって欲しいのです。その第一歩として今度の国会議員選挙に出て当選し、それを足がかりに大臣になって下さい」
県知事選の後に皇国議会選挙が予定されていた。
忠弥はそれに義彦が出ろというのだ。
一地方ではなく中央政界へ。それも序章に過ぎず、航空産業を世界展開するために内閣に入るために議会選挙に出ろというのだ。
「……私は自分を野心家だと思っていたが、君の方が遥かに上だな」
忠弥の希有壮大な提言を聞いて義彦はさすがに呆れた。
「まさか。僕は世界中の空に飛行機を飛ばしたい、というささやかな夢を叶えたいだけです」
「全然、ささやかじゃ無いぞ」
忠弥の言葉に突っ込むが義彦は悪い気はしなかった。
事実上自分の夢のために手駒になれと忠弥に言われているようなものだが、そこまで大きな夢であるならば助力したいと思ってしまった義彦だ。
「しかし、選挙に勝てる見込みはあるのかな」
猿は木から落ちても猿だが、議員は落選したらただの人。
そんな言葉がある通り、選挙に落選したらお終いだ。
全国的な知名度がまだ忠弥の初飛行の余波で通っているだけ、自動二輪とスクーターの販売だけの義彦に知名度はなんとか及第点だったが、支持を受け、投票してもらえるかは未知数だった。
「大丈夫ですよ。普通選挙が今回から実施されますから」
開国して暫く後に皇国は議会を開設した。各地域から優れた人材を集め、国政で活用するためである。
だが、初期の議会は一定の納税額を納めた者、高額納税者しか投票できない制限選挙で殆どの国民は有権者の投票を投票所で見ているだけだった。
だが中産階級が増えて余裕が出来るに従い不満は高まり、普通選挙を求める運動は激しくなった。
特に数年前に起きた旧大陸との戦争では、戦費調達の為多額の国債と増税が行われ国民は今でも苦しんでいる。
そのため皇国政府は民衆の不満を和らげるために普通選挙の実施を決定。
二院制の議会の内、衆民院が男性のみに二五才以上から選挙権が、三〇才以上で被選挙権が無条件で与えられる事になった。
もう一方の貴族院は各貴族階級や学士院から推薦或いは選挙、勅令で議員を選ぶことになっているが、こちらは選挙が無いので関係ない。
「今回の選挙は初めての普通選挙でこれまで投票したことの無い人が大半です。今まで選挙に投票したことが無く誰に投票して良いのか分からない人が多いです。しかし社長には先日の初飛行での知名度がありますから選挙戦で優位は確実です。一気に出て行きましょう」
「確かに会社のようにやれば良いのか」
先発優位性を使って勝利を収めてきた義彦である。
選挙も同じと考えて飛び込むことにした。
しかも初飛行とバイクの事を連日報道されて有名になっている。他の候補者よりも圧倒的に優位な立場に立っている。
立候補しない手は無かった。
「よし、立候補しよう! いっそ政党も作ってやる! 国会を制覇するぞ!」
意気揚々と義彦は拳を握りしめ大声で宣言した。
忠弥の意見によって国政に進出する事を決めた義彦は<秋津飛翔党>という政党を作り上げ出馬表明を出した。
党名は初飛行を成し遂げた義彦の会社をイメージさせるため、更に秋津の国威を飛翔させるというスローガンを掲げたためだ。政策も各種産業を育成し飛翔するが如く発展させるというもので、特に航空産業を育成すると書いていた。
発表当初は義彦一人しかおらず各選挙区への立候補者を探すことになったが、各地の販売点などから推薦と情報収集を行い、優秀な人材を集めて公認した。
しかし、問題となったのはこの後だった。
自分の希望、政界進出の第一歩として出ようとしていた県知事選挙出馬を止められた義彦は忠弥を睨み付けた。
確かに、普通なら市町村議会を経て、市町村長か県議会の議員を経てようやく県知事に出馬出来る。しかし当選出来るかどうかは微妙だ。
だが忠弥が人類初の有人動力飛行を成功させた今、そのスポンサーである島津の名が轟いている今なら県知事に当選できる可能性は十分にある。
なのに忠弥は止めようとしている。
いつか皇国の未来をその双肩に担いたいと義彦は熱望していた。
だが、一平民である義彦には、政治に関わるだけの人脈も身分もなかった。
平等を謳っている政府だったが、ようやく最近になって普通選挙が行われる状況であり、以前ならば出馬さえ不可能だった。
特に開国時期は武士などの特権階級しか参加できなかった。
平民は排除されており、義彦が商売の道を選んだのも、主要ポストを旧武士階級によって独占されている政府に入るより商売人の方が自由に動き、立身出世のチャンスが多いと判断したからだ。
結果、島津は新興財閥としては、大きな力を得ている。
忠弥と出会う前にそこまでの財閥を作り上げた義彦の手腕はそれで証明されている。
そして、財閥を立ち上げたのはいずれ、財閥と国への助力をバックに政界に進出するためであり、いずれ政治家になろうとしていた。
だから義彦は止めてきた忠弥を睨み付けた。
出馬の機会を与えてくれた恩人でも、自分の夢を阻むなら許せない。
しかし忠弥は義彦の視線に臆することなく淡々と理由を述べた。
「今以上に飛行機を発達させるには、世界規模で考えないと行けません。そのためには社長には世界的な政治家になって欲しいのです。その第一歩として今度の国会議員選挙に出て当選し、それを足がかりに大臣になって下さい」
県知事選の後に皇国議会選挙が予定されていた。
忠弥はそれに義彦が出ろというのだ。
一地方ではなく中央政界へ。それも序章に過ぎず、航空産業を世界展開するために内閣に入るために議会選挙に出ろというのだ。
「……私は自分を野心家だと思っていたが、君の方が遥かに上だな」
忠弥の希有壮大な提言を聞いて義彦はさすがに呆れた。
「まさか。僕は世界中の空に飛行機を飛ばしたい、というささやかな夢を叶えたいだけです」
「全然、ささやかじゃ無いぞ」
忠弥の言葉に突っ込むが義彦は悪い気はしなかった。
事実上自分の夢のために手駒になれと忠弥に言われているようなものだが、そこまで大きな夢であるならば助力したいと思ってしまった義彦だ。
「しかし、選挙に勝てる見込みはあるのかな」
猿は木から落ちても猿だが、議員は落選したらただの人。
そんな言葉がある通り、選挙に落選したらお終いだ。
全国的な知名度がまだ忠弥の初飛行の余波で通っているだけ、自動二輪とスクーターの販売だけの義彦に知名度はなんとか及第点だったが、支持を受け、投票してもらえるかは未知数だった。
「大丈夫ですよ。普通選挙が今回から実施されますから」
開国して暫く後に皇国は議会を開設した。各地域から優れた人材を集め、国政で活用するためである。
だが、初期の議会は一定の納税額を納めた者、高額納税者しか投票できない制限選挙で殆どの国民は有権者の投票を投票所で見ているだけだった。
だが中産階級が増えて余裕が出来るに従い不満は高まり、普通選挙を求める運動は激しくなった。
特に数年前に起きた旧大陸との戦争では、戦費調達の為多額の国債と増税が行われ国民は今でも苦しんでいる。
そのため皇国政府は民衆の不満を和らげるために普通選挙の実施を決定。
二院制の議会の内、衆民院が男性のみに二五才以上から選挙権が、三〇才以上で被選挙権が無条件で与えられる事になった。
もう一方の貴族院は各貴族階級や学士院から推薦或いは選挙、勅令で議員を選ぶことになっているが、こちらは選挙が無いので関係ない。
「今回の選挙は初めての普通選挙でこれまで投票したことの無い人が大半です。今まで選挙に投票したことが無く誰に投票して良いのか分からない人が多いです。しかし社長には先日の初飛行での知名度がありますから選挙戦で優位は確実です。一気に出て行きましょう」
「確かに会社のようにやれば良いのか」
先発優位性を使って勝利を収めてきた義彦である。
選挙も同じと考えて飛び込むことにした。
しかも初飛行とバイクの事を連日報道されて有名になっている。他の候補者よりも圧倒的に優位な立場に立っている。
立候補しない手は無かった。
「よし、立候補しよう! いっそ政党も作ってやる! 国会を制覇するぞ!」
意気揚々と義彦は拳を握りしめ大声で宣言した。
忠弥の意見によって国政に進出する事を決めた義彦は<秋津飛翔党>という政党を作り上げ出馬表明を出した。
党名は初飛行を成し遂げた義彦の会社をイメージさせるため、更に秋津の国威を飛翔させるというスローガンを掲げたためだ。政策も各種産業を育成し飛翔するが如く発展させるというもので、特に航空産業を育成すると書いていた。
発表当初は義彦一人しかおらず各選挙区への立候補者を探すことになったが、各地の販売点などから推薦と情報収集を行い、優秀な人材を集めて公認した。
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