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昴のプライド
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「あら、昴さん」
「い、岩菱っ、い、いえ、寧音さん」
入ってきた岩菱寧音に昴は珍しく驚きの表情を見せた。
「お久しぶりです、ご機嫌よう」
「ご、ご機嫌よう」
寧音が丁寧に頭を下げたので、昴も同じように少しぎこちなく頭を下げて挨拶する。
「お元気そうで何よりです。最近、学校に来ないの心配していましたが」
「……ええ、飛行機の手伝いをしていまして。学校へ通う余裕などありませんでしたわ」
島津のライバル相手、岩菱財閥の孫娘である岩菱寧音に負けまいと買ったばかりのドレスの裾を踊らせ必要以上に胸を反らして言う。
「知り合いなの?」
隣にいた忠弥が尋ねた。
「え、ええ、私が通う学校の同級生です」
忠弥に尋ねられて昴はバツが悪そうに答えた。
「昴さん、こちらの方は?」
「あら、ご存じないの?」
寧音の問いかけに昴は上から目線で高笑いしながら答える。
「我が島津が支援する皇国の歴史に残る偉人、二宮忠弥ですわ」
「! 先日、人類初の有人動力飛行を成功させた」
新聞やニュース映画で名前は知っていたが実際に見たのは初めである寧音は驚いた。
目の前の同い年の少し小柄な少年が、疑義を抱かれているとはいえ、一人で空へ飛んでいったのは驚きだった。
「ええ、その二宮忠弥ですわ」
珍しく驚いた寧音の姿を見た昴は優越感に酔い忠弥の腕に自分の腕を絡めた。
「人類初の有人動力飛行を成功させるべく日夜研究していた忠弥を私が見つけ出し、島津は手を差し伸べましたの」
偶然車が故障していたところに忠弥が現れて修理したのが縁だとは言わなかった。
異性とはいえ同年代に直せるハズがないと高をくくり、使用人にしようと嵌めるべく修理を許したこと、は忘却の彼方だった。
そんな昴の態度に忠弥は苦笑する。
もし、あそこで車が故障しなければ、そして昴が修理を許してくれなければ強行して昴とは一緒に居なかったし、空を飛ぶことも出来なかった。
例え、真実を忠弥が知ったとしても昴への感謝の思いは変わらない。
むしろ、チャンスが巡ってきたことに更に感謝を強めるだろう。
そんな事はしらず、昴は鼻高々に寧音に向かって言い続ける。
「忠弥は全力を上げて飛行機製作に没頭し、先日の偉業を達成させましたの。私もそのお役に立ちたいと願い、微力ながら尽くしておりましたの」
「……成績が悪かったはずですが、そのような余裕があるのですか」
「うっ」
忠弥と違い、成績が悪い昴は寧音に指摘されて言葉に詰まる。
だが、強気に言い返す。
「そ、そんな些細な事で人類の発展のお手伝いから手を引くわけにはゆきませんわ」
「学校でお勉強をして卒業して社会の役に立つ事こそ重要では」
優等生の寧音は模範解答を言う。
日頃から成績不良で寧音から注意を受けたり、勉強を教えられる立場にある昴は、劣等感を抱いていた。
「そ、そんなのかつての事、今は空を飛ぶ時代ですわ」
しかし、ライバルである岩菱の孫娘に負けたくない、というプライドの高さから反発し、反論する。
「空を飛ぶこと、飛び方を学校で教わりますか? 今まで行われていないので教えて貰えないでしょう」
昴達の通う女子校は良妻賢母の育成を目的としており、学問や技術より家庭で役に立つ知識を教える事が多い。
そのため数学や物理などの教育は最小限しか行われておらず、飛行機など当然教えていない。
そもそも、飛行機という存在が去年まで、忠弥が作り上げるまで存在しなかった事を考えれば当然だった。
「学校で教えてもらえなければ、飛行機のある場所、空を飛べる場所へ行くべきです。それが忠弥の元だっただけです。同時に忠弥のお助けも出来るので一石二鳥です」
寧音が黙り込んだのを見て言い負かしたと昴は思った。
実際は昴の突拍子もない屁理屈に寧音は唖然呆然としただけだったのだが。
すぐに思考能力が回復すると寧音は昴に尋ね返す。
「人が生活するのは地上です。地上で生活が出来なければ、料理や掃除など生活する術を、周りの人々と共に生きていく知識と技能を体得しなければ生きていけませんよ。それを学ぶのが学校です」
「で、でも、人類は新たな領域に進む事で発展を」
忠弥が常日頃から言っていることを昴は言うが、ただ言っているだけのオウムがえしで、言葉に説得力も力強さも無かった。
そのため寧音は静かに、断固とした口調で反論する。
「家事が出来ないのに偉業に専念する人を助けることなんて出来るのですか? 昴さんはお裁縫も料理も不得意だったと思うのですが」
「ぐっ」
理路整然とした寧音の反論と飛行機作りの時、自分が作った夜食を持って行ったときの忠弥の顔を思い出したに昴は黙り込んだ。
言い返せない昴に寧音は更に尋ねる。
「そもそも、飛行機が何の役に立つのですか? ただ空を飛ぶだけで何の役にも立たないでしょう」
「いいえ、役に立ちます」
昴に代わって忠弥が話しかけた。
「い、岩菱っ、い、いえ、寧音さん」
入ってきた岩菱寧音に昴は珍しく驚きの表情を見せた。
「お久しぶりです、ご機嫌よう」
「ご、ご機嫌よう」
寧音が丁寧に頭を下げたので、昴も同じように少しぎこちなく頭を下げて挨拶する。
「お元気そうで何よりです。最近、学校に来ないの心配していましたが」
「……ええ、飛行機の手伝いをしていまして。学校へ通う余裕などありませんでしたわ」
島津のライバル相手、岩菱財閥の孫娘である岩菱寧音に負けまいと買ったばかりのドレスの裾を踊らせ必要以上に胸を反らして言う。
「知り合いなの?」
隣にいた忠弥が尋ねた。
「え、ええ、私が通う学校の同級生です」
忠弥に尋ねられて昴はバツが悪そうに答えた。
「昴さん、こちらの方は?」
「あら、ご存じないの?」
寧音の問いかけに昴は上から目線で高笑いしながら答える。
「我が島津が支援する皇国の歴史に残る偉人、二宮忠弥ですわ」
「! 先日、人類初の有人動力飛行を成功させた」
新聞やニュース映画で名前は知っていたが実際に見たのは初めである寧音は驚いた。
目の前の同い年の少し小柄な少年が、疑義を抱かれているとはいえ、一人で空へ飛んでいったのは驚きだった。
「ええ、その二宮忠弥ですわ」
珍しく驚いた寧音の姿を見た昴は優越感に酔い忠弥の腕に自分の腕を絡めた。
「人類初の有人動力飛行を成功させるべく日夜研究していた忠弥を私が見つけ出し、島津は手を差し伸べましたの」
偶然車が故障していたところに忠弥が現れて修理したのが縁だとは言わなかった。
異性とはいえ同年代に直せるハズがないと高をくくり、使用人にしようと嵌めるべく修理を許したこと、は忘却の彼方だった。
そんな昴の態度に忠弥は苦笑する。
もし、あそこで車が故障しなければ、そして昴が修理を許してくれなければ強行して昴とは一緒に居なかったし、空を飛ぶことも出来なかった。
例え、真実を忠弥が知ったとしても昴への感謝の思いは変わらない。
むしろ、チャンスが巡ってきたことに更に感謝を強めるだろう。
そんな事はしらず、昴は鼻高々に寧音に向かって言い続ける。
「忠弥は全力を上げて飛行機製作に没頭し、先日の偉業を達成させましたの。私もそのお役に立ちたいと願い、微力ながら尽くしておりましたの」
「……成績が悪かったはずですが、そのような余裕があるのですか」
「うっ」
忠弥と違い、成績が悪い昴は寧音に指摘されて言葉に詰まる。
だが、強気に言い返す。
「そ、そんな些細な事で人類の発展のお手伝いから手を引くわけにはゆきませんわ」
「学校でお勉強をして卒業して社会の役に立つ事こそ重要では」
優等生の寧音は模範解答を言う。
日頃から成績不良で寧音から注意を受けたり、勉強を教えられる立場にある昴は、劣等感を抱いていた。
「そ、そんなのかつての事、今は空を飛ぶ時代ですわ」
しかし、ライバルである岩菱の孫娘に負けたくない、というプライドの高さから反発し、反論する。
「空を飛ぶこと、飛び方を学校で教わりますか? 今まで行われていないので教えて貰えないでしょう」
昴達の通う女子校は良妻賢母の育成を目的としており、学問や技術より家庭で役に立つ知識を教える事が多い。
そのため数学や物理などの教育は最小限しか行われておらず、飛行機など当然教えていない。
そもそも、飛行機という存在が去年まで、忠弥が作り上げるまで存在しなかった事を考えれば当然だった。
「学校で教えてもらえなければ、飛行機のある場所、空を飛べる場所へ行くべきです。それが忠弥の元だっただけです。同時に忠弥のお助けも出来るので一石二鳥です」
寧音が黙り込んだのを見て言い負かしたと昴は思った。
実際は昴の突拍子もない屁理屈に寧音は唖然呆然としただけだったのだが。
すぐに思考能力が回復すると寧音は昴に尋ね返す。
「人が生活するのは地上です。地上で生活が出来なければ、料理や掃除など生活する術を、周りの人々と共に生きていく知識と技能を体得しなければ生きていけませんよ。それを学ぶのが学校です」
「で、でも、人類は新たな領域に進む事で発展を」
忠弥が常日頃から言っていることを昴は言うが、ただ言っているだけのオウムがえしで、言葉に説得力も力強さも無かった。
そのため寧音は静かに、断固とした口調で反論する。
「家事が出来ないのに偉業に専念する人を助けることなんて出来るのですか? 昴さんはお裁縫も料理も不得意だったと思うのですが」
「ぐっ」
理路整然とした寧音の反論と飛行機作りの時、自分が作った夜食を持って行ったときの忠弥の顔を思い出したに昴は黙り込んだ。
言い返せない昴に寧音は更に尋ねる。
「そもそも、飛行機が何の役に立つのですか? ただ空を飛ぶだけで何の役にも立たないでしょう」
「いいえ、役に立ちます」
昴に代わって忠弥が話しかけた。
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