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迎撃強化の効果
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三日後の夜、帝国の飛行船部隊は再び出撃してきた。
間に二日ほど空いたのは、翌日だと警戒が厳しいと考えた為と飛行船の準備が整わなかったためである。
この日は五隻の飛行船が別方向から攻撃を仕掛ける計画であった。
しかし、一隻は機関故障で基地に引き返し、一隻は針路を誤って帰投。
王国本土に侵入できたのは三隻だけだった。
だが、エンジン音を抑えたことでニワトリ艦隊に見つかること無く本土に侵入できた。
本土への侵入に成功した飛行船は作戦成功を確信し全速で向かおうとしていた。
しかし、彼らは侵入を探知されていた。
「エンジン音探知!」
防空監視所で女性監視員が報告した。
だが彼女は空を見ていない、巨大なヘッドフォンを付けたまま、ハンドルを操作していた。
「方位156」
「仰角13」
反対側に居る監視員もハンドルを回して報告する。
二人が取り付いているのは巨大なホルンのような代物だった。
だが、人間が持てるような大きさではない。
全長二メートルはあろうかという大きさで、正面には四つのラッパのような口が開いており、奥へ行く程細くなりながら二人の耳のヘッドフォンに繋がっていた。
空中聴音機。
レーダー発明前に使用された、エンジン音を探知して敵機を見つける機材である。
航空管制のためにもレーダー開発を進めていた忠弥だったが、実戦投入できる程の機材がないため、次善策として中継ぎとして投入された。
海岸線沿いに設置され、飛行船のエンジン音を探知して報告するようになっていた。
このときの情報も防空司令部に報告された。
「飛行船を探知しました。位置はD31地点。全力迎撃命令です」
「来たわね」
待機していた昴は舌なめずりをして言う。
迎撃待機のため、ずっと起きていた。
起きがけでミスを起こさないよう寝るのを禁止されていたため、眠気が少しある。
だが飛行船の侵入で吹っ飛んだ。
「全機出撃! 撃破する!」
直ちに指揮所を出て愛機に駆け寄り発進させようとする。
「エンジン始動良し準備できました」
近寄ると整備兵が報告した。
「あなた」
「王国女子国防軍大尉メアリ・ウィンザーであります。整備兵として配属されました」
先日会ったばかりのメアリ王女だった。
王族は何らかの役職を得ても肩書きだけで、お飾りの存在なのだが偽名まで使って訓練を受けて従軍するとは、恐れ入った。
だが、あの晩餐会以前からメアリは断固として従軍を主張し、訓練を受けていた。
今は整備兵だったが、後に飛行免許を取り、パイロットになっている。前線へ行くことhあ無かったが航法で航空機の輸送や訓練指導を行う。
「ええ、ありがとう」
戸惑いつつも、昴は機体を確認するとメアリに合図を送り、車輪止めを外させ飛行機を発進させる。
誘導員の誘導に従い、滑走路へ進入し、離陸すると目標へ向かう。
翼端灯を点けて、編隊を組み進撃していく。
「暗いわね」
月明かりのない夜は闇夜だ。
地上も灯火管制を行っており、真っ暗で見えない。
いや、別の光が伸びていった。
「サーチライトね」
飛行船を探すために、探照灯が地上から点灯された。
炭素棒を電極にアーク放電――小さな雷を連続で放つ強力な光は闇夜でも十数キロキロ先の新聞紙さえ読める程の明るさになる。
すぐさま飛行船を捕捉し、照らし出す。
「見つけた!」
飛行船の巨大な船体が闇夜に浮き上がり、昴達に目標を与えた。
「全機続け!」
昴は先頭に立って攻撃に向かう。
途中で灯火を消して闇に隠れ飛行船から見えないようにする。
排気炎が見えないようスロットルも絞りつつも上昇。
優位な位置取りをしようとする。
飛行船は探照灯の光から逃れようとするが、鈍重で巨大な船体は動きが遅く逃れることが出来なかった。
おかげで昴達は見失わずに見つける事が出来た。
「行くわよっ!」
すぐに忠弥直伝の後方上空から攻撃を行う。
後ろからの方がほぼ同じ速度で動くため狙いやすい。
サーチライトに照らされて目が眩んでいるのか、昴達の接近に飛行船は気が付かず、対空砲火はない。
「貰った!」
一発の反撃も受ける事無く必中距離に近づくと昴は翼に搭載したロケット弾を全弾撃ち込んだ。
そこでようやく飛行船が気が付き、対空砲火を上げてくる。
しかし昴は右手で持った操縦桿を左に倒し、機体を左に回して離脱する。
左に逃げるのは、右手で操縦桿を操作するため左へ倒しやすいのと、プロペラがパイロット席から見て右回りのため反作用で機体が左へ回転する力が加わっているので、左旋回がしやすいからだ。
俊敏な動きが要求され空中戦では、素早く動ける左旋回を忠弥は多用するように命じていた。状況に応じてだが、皇国空軍戦闘機隊は、機体特性を生かして戦い勝利を収めていた。
このときも、飛行船の対空砲火から逃れ一機も被弾しなかった。
逆に接近を許した飛行船はロケット弾多数を受けて炎上した。
後ろの気室を破壊されて、何とか空を飛ぼうとするが、残りの戦闘機から追撃が加えられる。
今度は前の気室を破壊され、船体全体に火の手が回った。
飛行船は行動を落とし、地上へ墜落していった。
「やった!」
昴は喜んでいると、遠くで空が光っていた。
「もう一隻、やってきていたようね」
燃料計を確認した。
まだ十分な燃料はあるし、下の標識を見て現在位置は分かっており飛行場は近い。
「攻撃を続行する」
ロケット弾を打ち尽くした昴達は飛行船に執拗に食いつき、機銃を当てていった。
多数の命中弾を受けた飛行船は高度を維持できず、爆弾を投下すると引き返していった。
「やったあ!」
機銃弾を打ち尽くして止めはさせなかった。
しかし、一隻を撃墜、もう一隻を撃破して追い返した。
一隻が王都に侵入し爆撃したが、他の飛行隊が、帰還中の飛行船を発見し撃墜していた。
翌日、戦果が確認され、発表されると昴達は喜んだ。
「やったわね!」
被害は出たが、守り切った事に昴は喜んだ。
「帝国軍、来るなら来てみろ!」
間に二日ほど空いたのは、翌日だと警戒が厳しいと考えた為と飛行船の準備が整わなかったためである。
この日は五隻の飛行船が別方向から攻撃を仕掛ける計画であった。
しかし、一隻は機関故障で基地に引き返し、一隻は針路を誤って帰投。
王国本土に侵入できたのは三隻だけだった。
だが、エンジン音を抑えたことでニワトリ艦隊に見つかること無く本土に侵入できた。
本土への侵入に成功した飛行船は作戦成功を確信し全速で向かおうとしていた。
しかし、彼らは侵入を探知されていた。
「エンジン音探知!」
防空監視所で女性監視員が報告した。
だが彼女は空を見ていない、巨大なヘッドフォンを付けたまま、ハンドルを操作していた。
「方位156」
「仰角13」
反対側に居る監視員もハンドルを回して報告する。
二人が取り付いているのは巨大なホルンのような代物だった。
だが、人間が持てるような大きさではない。
全長二メートルはあろうかという大きさで、正面には四つのラッパのような口が開いており、奥へ行く程細くなりながら二人の耳のヘッドフォンに繋がっていた。
空中聴音機。
レーダー発明前に使用された、エンジン音を探知して敵機を見つける機材である。
航空管制のためにもレーダー開発を進めていた忠弥だったが、実戦投入できる程の機材がないため、次善策として中継ぎとして投入された。
海岸線沿いに設置され、飛行船のエンジン音を探知して報告するようになっていた。
このときの情報も防空司令部に報告された。
「飛行船を探知しました。位置はD31地点。全力迎撃命令です」
「来たわね」
待機していた昴は舌なめずりをして言う。
迎撃待機のため、ずっと起きていた。
起きがけでミスを起こさないよう寝るのを禁止されていたため、眠気が少しある。
だが飛行船の侵入で吹っ飛んだ。
「全機出撃! 撃破する!」
直ちに指揮所を出て愛機に駆け寄り発進させようとする。
「エンジン始動良し準備できました」
近寄ると整備兵が報告した。
「あなた」
「王国女子国防軍大尉メアリ・ウィンザーであります。整備兵として配属されました」
先日会ったばかりのメアリ王女だった。
王族は何らかの役職を得ても肩書きだけで、お飾りの存在なのだが偽名まで使って訓練を受けて従軍するとは、恐れ入った。
だが、あの晩餐会以前からメアリは断固として従軍を主張し、訓練を受けていた。
今は整備兵だったが、後に飛行免許を取り、パイロットになっている。前線へ行くことhあ無かったが航法で航空機の輸送や訓練指導を行う。
「ええ、ありがとう」
戸惑いつつも、昴は機体を確認するとメアリに合図を送り、車輪止めを外させ飛行機を発進させる。
誘導員の誘導に従い、滑走路へ進入し、離陸すると目標へ向かう。
翼端灯を点けて、編隊を組み進撃していく。
「暗いわね」
月明かりのない夜は闇夜だ。
地上も灯火管制を行っており、真っ暗で見えない。
いや、別の光が伸びていった。
「サーチライトね」
飛行船を探すために、探照灯が地上から点灯された。
炭素棒を電極にアーク放電――小さな雷を連続で放つ強力な光は闇夜でも十数キロキロ先の新聞紙さえ読める程の明るさになる。
すぐさま飛行船を捕捉し、照らし出す。
「見つけた!」
飛行船の巨大な船体が闇夜に浮き上がり、昴達に目標を与えた。
「全機続け!」
昴は先頭に立って攻撃に向かう。
途中で灯火を消して闇に隠れ飛行船から見えないようにする。
排気炎が見えないようスロットルも絞りつつも上昇。
優位な位置取りをしようとする。
飛行船は探照灯の光から逃れようとするが、鈍重で巨大な船体は動きが遅く逃れることが出来なかった。
おかげで昴達は見失わずに見つける事が出来た。
「行くわよっ!」
すぐに忠弥直伝の後方上空から攻撃を行う。
後ろからの方がほぼ同じ速度で動くため狙いやすい。
サーチライトに照らされて目が眩んでいるのか、昴達の接近に飛行船は気が付かず、対空砲火はない。
「貰った!」
一発の反撃も受ける事無く必中距離に近づくと昴は翼に搭載したロケット弾を全弾撃ち込んだ。
そこでようやく飛行船が気が付き、対空砲火を上げてくる。
しかし昴は右手で持った操縦桿を左に倒し、機体を左に回して離脱する。
左に逃げるのは、右手で操縦桿を操作するため左へ倒しやすいのと、プロペラがパイロット席から見て右回りのため反作用で機体が左へ回転する力が加わっているので、左旋回がしやすいからだ。
俊敏な動きが要求され空中戦では、素早く動ける左旋回を忠弥は多用するように命じていた。状況に応じてだが、皇国空軍戦闘機隊は、機体特性を生かして戦い勝利を収めていた。
このときも、飛行船の対空砲火から逃れ一機も被弾しなかった。
逆に接近を許した飛行船はロケット弾多数を受けて炎上した。
後ろの気室を破壊されて、何とか空を飛ぼうとするが、残りの戦闘機から追撃が加えられる。
今度は前の気室を破壊され、船体全体に火の手が回った。
飛行船は行動を落とし、地上へ墜落していった。
「やった!」
昴は喜んでいると、遠くで空が光っていた。
「もう一隻、やってきていたようね」
燃料計を確認した。
まだ十分な燃料はあるし、下の標識を見て現在位置は分かっており飛行場は近い。
「攻撃を続行する」
ロケット弾を打ち尽くした昴達は飛行船に執拗に食いつき、機銃を当てていった。
多数の命中弾を受けた飛行船は高度を維持できず、爆弾を投下すると引き返していった。
「やったあ!」
機銃弾を打ち尽くして止めはさせなかった。
しかし、一隻を撃墜、もう一隻を撃破して追い返した。
一隻が王都に侵入し爆撃したが、他の飛行隊が、帰還中の飛行船を発見し撃墜していた。
翌日、戦果が確認され、発表されると昴達は喜んだ。
「やったわね!」
被害は出たが、守り切った事に昴は喜んだ。
「帝国軍、来るなら来てみろ!」
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