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ベルケの奇襲
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突如現れた帝国の戦闘機を見て忠弥は、甲板に伏せた。
帝国の戦闘機は一直線に若宮へ突っ込み艦首から艦尾に掛けて機銃掃射を行い上空を通過していった。
甲板に無数の銃弾が降るが、幸い負傷者はいなかった。
機体も無事で発進可能だ。
だが、甲板は突然の奇襲に混乱していた。
「静かにしろ! 浮き足立つんじゃない! 配置に付け!」
艦長の一喝でようやく収まり、乗員は元の配置に戻る。
「二宮大佐! ご指示を!」
艦長が指示を求めるが、忠弥は通り過ぎた飛行機を見て呆然としていた。
「大佐」
整備長が尋ねてようやく忠弥は一言呟いた。
「ベルケか」
一瞬すれ違っただけだが、来襲した三機の中にベルケが乗っているのが見えた。
「昨日の偵察で襲撃を予知したのか」
一度も連合軍が襲来したことのない基地なら警戒も緩いと思っていたが、誤算だった。
まさかベルケがいるとは思わなかった。
もし、ベルケがいたら忠弥のもくろみを察知して対策を出すだろう。
丁度今のように自ら出撃することもあり得る。
それだけベルケは優秀な航空機運用者であり厄介な敵であった。
そして忠弥の予想は今、最悪の形で証明されようとしていた。
「やはり来ていましたか」
戦闘機を操って航空機を搭載した不審な船舶を攻撃したベルケは、上空を通過する時、甲板に忠弥がいるのを確認して呟いた。
昨日、基地上空を飛んでいた機体が気になり調べたところ、海軍側が飛ばした記録は無かった。
念のため、機体の形を絵にしてみたら、皇国の地上攻撃機に似ていた。
フロートが付いている事から水上機に改造して船から飛び出したと推測。
偵察だけとは思えず、攻撃を仕掛けてくると考え、襲撃は狙いを付けやすい夜明けと共に行うとベルケは推測した。
だから、ベルケは夜明け前に部下達と共に離陸し、散開して索敵を行った。
運良く、忠弥の場合は運悪くベルケの機体に見つかってしまった。
「飛び立った水上機に襲撃をかけ、撃墜する。続け」
基地を襲撃されないよう、飛んでいる機体を撃墜しようとベルケは部下に指示した。
「くっ、攻撃前なのに」
ベルケの戦闘機に襲撃された昴は機体を操り回避する。
しかし、フロートを付け、爆弾を乗せている機体は重い。
捨ててしまいたいが、爆弾を捨てたら基地への攻撃が出来ない。
必至に回避しようとする。
だが、フロートという重しのない軽快な陸上戦闘機に簡単に背後を取られた。
「やられる」
昴が思った瞬間、銃撃音がひびき巨大な爆発が起きた。
「な、なに!」
背後で起こった巨大な爆発に昴は驚いた。
疑問に答えるようにスマートな機体が昴の横を駆け抜ける。
「忠弥!」
機体に乗っていたのは忠弥だった。
発艦する前に整備員に命じてフロートを外させ――フロートと機体を結ぶ支柱をたたき壊して無理矢理取り払って胴体だけになった機体をカタパルトで打ち出し、空に飛び出たらすぐに爆弾を落として身軽になってベルケに空戦を挑んだ。
元々の地上攻撃機は戦闘機からの改造型で旋回性能が良い。
昴とサイクスを襲撃する敵機を相手にする程度は、簡単にできた。
襲いかかる敵機の横合いから殴りかかれば良い。
サイクスを狙っている一機に狙いを付けて忠弥は攻撃を仕掛ける。
しかし、今度は忠弥の横合いからベルケが襲撃してきた。
「くっ」
忠弥は機体を旋回させ、回避する。
やはりベルケ相手では一筋縄ではいかない。
その間にもう一機が忠弥の後ろを取ろうと、接近してきた。
だが、この戦闘機のパイロットは最近戦闘機に乗ったばかりで若く、経験が少なかった。
単座戦闘機が主流になる中、訓練を受けたため、単座戦闘機相手の訓練が多くなった。
複座機の場合、後席に旋回機銃がある事を若い帝国のパイロットは忘れていた。
忠弥の後席は、不用意に接近した敵機に対して銃撃を浴びせた。
戦闘機はエンジンに銃弾を多数受けて、火災を発生させる。
しかも一発は操縦席前の冷却器を破壊していた。内部の熱々になった冷却液が噴出し、パイロットに襲いかかり、火傷を負わせる。
火傷したパイロットに火を吹いてエンジンが停止した機体の制御は出来ず、錐揉みを行いながら海へ落ちていった。
「やりますね」
僚機を撃墜されたベルケは不敵に笑った。
部下を落とされた怒りより不利な状況であっという間に対抗策を考え、危機を乗り越えたことに感心する。
心から賞賛できたらどれほど良いだろうか、と思うが現在は敵同士、戦わなくてはならない。
「さて、どうしたものか」
忠弥を相手に空中戦は不利だ。
ベルケは単座で、忠弥は複座だが、後方へ銃撃を浴びせることが出来る。
空中戦は後方から近づいて銃撃するのが基本だが、それを防ぐために複座機には銃座があり弾幕へ飛び込むのは、危険だ。
弾幕を躱して攻撃しても忠弥に避けられてしまうし、攻撃した後離脱した後、忠弥に後ろを取られてしまう可能性が高い。
「この手しか無いか」
ベルケは機体を旋回させた。
帝国の戦闘機は一直線に若宮へ突っ込み艦首から艦尾に掛けて機銃掃射を行い上空を通過していった。
甲板に無数の銃弾が降るが、幸い負傷者はいなかった。
機体も無事で発進可能だ。
だが、甲板は突然の奇襲に混乱していた。
「静かにしろ! 浮き足立つんじゃない! 配置に付け!」
艦長の一喝でようやく収まり、乗員は元の配置に戻る。
「二宮大佐! ご指示を!」
艦長が指示を求めるが、忠弥は通り過ぎた飛行機を見て呆然としていた。
「大佐」
整備長が尋ねてようやく忠弥は一言呟いた。
「ベルケか」
一瞬すれ違っただけだが、来襲した三機の中にベルケが乗っているのが見えた。
「昨日の偵察で襲撃を予知したのか」
一度も連合軍が襲来したことのない基地なら警戒も緩いと思っていたが、誤算だった。
まさかベルケがいるとは思わなかった。
もし、ベルケがいたら忠弥のもくろみを察知して対策を出すだろう。
丁度今のように自ら出撃することもあり得る。
それだけベルケは優秀な航空機運用者であり厄介な敵であった。
そして忠弥の予想は今、最悪の形で証明されようとしていた。
「やはり来ていましたか」
戦闘機を操って航空機を搭載した不審な船舶を攻撃したベルケは、上空を通過する時、甲板に忠弥がいるのを確認して呟いた。
昨日、基地上空を飛んでいた機体が気になり調べたところ、海軍側が飛ばした記録は無かった。
念のため、機体の形を絵にしてみたら、皇国の地上攻撃機に似ていた。
フロートが付いている事から水上機に改造して船から飛び出したと推測。
偵察だけとは思えず、攻撃を仕掛けてくると考え、襲撃は狙いを付けやすい夜明けと共に行うとベルケは推測した。
だから、ベルケは夜明け前に部下達と共に離陸し、散開して索敵を行った。
運良く、忠弥の場合は運悪くベルケの機体に見つかってしまった。
「飛び立った水上機に襲撃をかけ、撃墜する。続け」
基地を襲撃されないよう、飛んでいる機体を撃墜しようとベルケは部下に指示した。
「くっ、攻撃前なのに」
ベルケの戦闘機に襲撃された昴は機体を操り回避する。
しかし、フロートを付け、爆弾を乗せている機体は重い。
捨ててしまいたいが、爆弾を捨てたら基地への攻撃が出来ない。
必至に回避しようとする。
だが、フロートという重しのない軽快な陸上戦闘機に簡単に背後を取られた。
「やられる」
昴が思った瞬間、銃撃音がひびき巨大な爆発が起きた。
「な、なに!」
背後で起こった巨大な爆発に昴は驚いた。
疑問に答えるようにスマートな機体が昴の横を駆け抜ける。
「忠弥!」
機体に乗っていたのは忠弥だった。
発艦する前に整備員に命じてフロートを外させ――フロートと機体を結ぶ支柱をたたき壊して無理矢理取り払って胴体だけになった機体をカタパルトで打ち出し、空に飛び出たらすぐに爆弾を落として身軽になってベルケに空戦を挑んだ。
元々の地上攻撃機は戦闘機からの改造型で旋回性能が良い。
昴とサイクスを襲撃する敵機を相手にする程度は、簡単にできた。
襲いかかる敵機の横合いから殴りかかれば良い。
サイクスを狙っている一機に狙いを付けて忠弥は攻撃を仕掛ける。
しかし、今度は忠弥の横合いからベルケが襲撃してきた。
「くっ」
忠弥は機体を旋回させ、回避する。
やはりベルケ相手では一筋縄ではいかない。
その間にもう一機が忠弥の後ろを取ろうと、接近してきた。
だが、この戦闘機のパイロットは最近戦闘機に乗ったばかりで若く、経験が少なかった。
単座戦闘機が主流になる中、訓練を受けたため、単座戦闘機相手の訓練が多くなった。
複座機の場合、後席に旋回機銃がある事を若い帝国のパイロットは忘れていた。
忠弥の後席は、不用意に接近した敵機に対して銃撃を浴びせた。
戦闘機はエンジンに銃弾を多数受けて、火災を発生させる。
しかも一発は操縦席前の冷却器を破壊していた。内部の熱々になった冷却液が噴出し、パイロットに襲いかかり、火傷を負わせる。
火傷したパイロットに火を吹いてエンジンが停止した機体の制御は出来ず、錐揉みを行いながら海へ落ちていった。
「やりますね」
僚機を撃墜されたベルケは不敵に笑った。
部下を落とされた怒りより不利な状況であっという間に対抗策を考え、危機を乗り越えたことに感心する。
心から賞賛できたらどれほど良いだろうか、と思うが現在は敵同士、戦わなくてはならない。
「さて、どうしたものか」
忠弥を相手に空中戦は不利だ。
ベルケは単座で、忠弥は複座だが、後方へ銃撃を浴びせることが出来る。
空中戦は後方から近づいて銃撃するのが基本だが、それを防ぐために複座機には銃座があり弾幕へ飛び込むのは、危険だ。
弾幕を躱して攻撃しても忠弥に避けられてしまうし、攻撃した後離脱した後、忠弥に後ろを取られてしまう可能性が高い。
「この手しか無いか」
ベルケは機体を旋回させた。
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