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第二次大戦回顧録 1942年 ウォッチタワー作戦
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ウォッチタワー作戦ではその時存在した全ての予備兵力、艦船、飛行機、陸上部隊の全てを投入しガダルカナル島へ上陸させた。
平時なら何も無い小島だが飛行場を建設するのに非常に良い島だった。事実終戦までに五つの飛行場を建設して尚拡張出来る余裕がこの島にはあった。そんな島を日本軍が占領した結果、南東にあるエスピリシスサット、フィジー、サモアへの足がかりとなり、これらの島が制圧されればアメリカとオーストラリアの連絡線は断たれ、オーストラリアは孤立して日本に降伏せざるを得ないだろう。
それを防ぐ為にもこの時期に、戦力の回復する四三年を待たずに四二年の夏に反攻を実行した理由だった。
上陸はほぼ無傷だったが一〇〇〇キロ離れたラバウルから、あの恐るべきゼロがやってきた。長距離攻撃にもかかわらずフレッチャー任務部隊は戦闘機を半数落とされ後方へ下がることになった。
上陸船団の上空援護がなくなった所へ、あの第八艦隊がやって来た。
第八艦隊はガダルカナル上陸の一ヶ月ほど前に編成されたばかりの巡洋艦主体の艦隊だった。編成間もないため連携は良くなかったが、各艦は良く訓練された強力な艦艇ばかりだった。
それを率いるのはあの三川提督だった。
勇猛な彼は我らのガダルカナル上陸を知ると直ぐさま先頭に立って出撃、一〇〇〇キロの海を越えて夜戦を挑んできた。
我が水上部隊は撃破され、再突入の際に物資を残していた船団は撃沈され、離脱時に行われた上陸地点への艦砲射撃により上陸した海兵師団に二〇〇〇人の死傷者を出した。
かくして海戦史に名高いサボ島沖海戦――日本側呼称第一次ソロモン海海戦は終わり我らは反攻の最初の一ページを味方将兵の血によって刻みつけた。
そして勝利する日までガダルカナル島周辺において一年にも及ぶ苦闘の日々を一ページずつ将兵と飛行機、艦船――鉄底海峡と呼ばれる程敵味方の艦船が沈んだことを書き加えていくことになる。
これほどまでの大きな犠牲を受けてまでウォッチタワー作戦を敢行する必要があったかと議論されるが、その当時は必要があったのだ。
アメリカとオーストラリアへの連絡線を確保するのもそうだが、何よりインド洋から南雲を引き離す必要があった。
ミッドウェー海戦後、日本軍は残った機動部隊を再編し雪辱を果たすべくインド洋へ派遣する計画があった。
インドは大英帝国の王冠に輝く最大の宝石であり、第二次大戦において英国が戦う為の力の源泉であった。
そのインド洋を制圧し大英帝国の航路を封鎖されれば、英国は負けてしまう。
ミッドウェーの大敗後でも南雲機動部隊は十分な戦力を保有していたためインド洋遮断は十分に可能であった。
その派遣を防ぐべくガダルカナルに上陸したのだ。
事実、南雲機動部隊はガダルカナル上陸の報により進路を変更してソロモン海へ進出し東部ソロモン海戦――日本側呼称第二次ソロモン海戦を戦う事になる。
この海戦で我々は復旧したエンタープライズを再び大破させ、サラトガも大破し戦線離脱、ワスプが沈められ、一時的に空母戦力が無くなると言う事態に陥り、ガダルカナル島から撤退することになった。
連合国の大敗北だが、それでも意義は十分にあった。
繰り返しになるが、南雲のインド洋進出を許せばインド洋航路は遮断され、英国の補給路は失われる。
四二年夏の同時期にエル・アラメインの戦いでエジプトを守っていたイギリス軍への補給路を断ち、ロンメルの猛攻の前に陥落しスエズも奪われ地中海の制海権は半ば奪われるのみならず、紅海経由でドイツ・イタリアと日本が手を携えることとなり連合国は著しく不利となる。場合によっては中東も印度も陥落し、南雲の機動部隊はスエズを通って地中海へ攻め入り、ジブラルタルを突破して大西洋へ進出しUボートと共にイギリスを締め上げたかも知れない。
その最悪の事態をウォッチタワー作戦は防いでくれた。
南雲機動部隊はアメリカ機動部隊を壊滅させ後顧の憂いを絶つと九月半ばにはインド洋に入り、下旬には各地への空襲と船団襲撃を始めた。
しかし、この二ヶ月弱の時間の間に連合国はインド洋経由でエジプトへ物資と兵力を送り防備を固め、一〇月のロンメルの第二次エル・アラメインの戦いを耐える事が出来た。
一〇月のガダルカナル再上陸作戦により再び南雲機動部隊を引きはがすことに成功したのは行幸だった。
最悪のクリスマスプレゼントとなったセイロン島陥落は二ヶ月は早まり、ソコトラ島も四二年中に占領され、我々は大きな危機と試練を迎える。
しかし、最悪の時期に起きてはいなかった。少なくとも四ヶ月という時間を数多の血を代償に我々は得る事が出来た。
四二年は大戦の大きな転換点となった。枢軸は優勢に進めていたが、最大のチャンスを逃し勝利の果実のほんの一部――それでも歴史上稀に見るほどの戦果を得ただけで終わり、大戦の最終的な勝利を掴む決定的な機会を逃し、敗北の苦難に耐えてきた我ら連合国が決定的な勝利を掴む道へ進む事となった。
しかし、それは決して平坦な道では無く、歩むには舗装を――多数の艦艇と多くの将兵の血で覆う必要があった。
ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチル著
第二次大戦回顧録より抜粋
平時なら何も無い小島だが飛行場を建設するのに非常に良い島だった。事実終戦までに五つの飛行場を建設して尚拡張出来る余裕がこの島にはあった。そんな島を日本軍が占領した結果、南東にあるエスピリシスサット、フィジー、サモアへの足がかりとなり、これらの島が制圧されればアメリカとオーストラリアの連絡線は断たれ、オーストラリアは孤立して日本に降伏せざるを得ないだろう。
それを防ぐ為にもこの時期に、戦力の回復する四三年を待たずに四二年の夏に反攻を実行した理由だった。
上陸はほぼ無傷だったが一〇〇〇キロ離れたラバウルから、あの恐るべきゼロがやってきた。長距離攻撃にもかかわらずフレッチャー任務部隊は戦闘機を半数落とされ後方へ下がることになった。
上陸船団の上空援護がなくなった所へ、あの第八艦隊がやって来た。
第八艦隊はガダルカナル上陸の一ヶ月ほど前に編成されたばかりの巡洋艦主体の艦隊だった。編成間もないため連携は良くなかったが、各艦は良く訓練された強力な艦艇ばかりだった。
それを率いるのはあの三川提督だった。
勇猛な彼は我らのガダルカナル上陸を知ると直ぐさま先頭に立って出撃、一〇〇〇キロの海を越えて夜戦を挑んできた。
我が水上部隊は撃破され、再突入の際に物資を残していた船団は撃沈され、離脱時に行われた上陸地点への艦砲射撃により上陸した海兵師団に二〇〇〇人の死傷者を出した。
かくして海戦史に名高いサボ島沖海戦――日本側呼称第一次ソロモン海海戦は終わり我らは反攻の最初の一ページを味方将兵の血によって刻みつけた。
そして勝利する日までガダルカナル島周辺において一年にも及ぶ苦闘の日々を一ページずつ将兵と飛行機、艦船――鉄底海峡と呼ばれる程敵味方の艦船が沈んだことを書き加えていくことになる。
これほどまでの大きな犠牲を受けてまでウォッチタワー作戦を敢行する必要があったかと議論されるが、その当時は必要があったのだ。
アメリカとオーストラリアへの連絡線を確保するのもそうだが、何よりインド洋から南雲を引き離す必要があった。
ミッドウェー海戦後、日本軍は残った機動部隊を再編し雪辱を果たすべくインド洋へ派遣する計画があった。
インドは大英帝国の王冠に輝く最大の宝石であり、第二次大戦において英国が戦う為の力の源泉であった。
そのインド洋を制圧し大英帝国の航路を封鎖されれば、英国は負けてしまう。
ミッドウェーの大敗後でも南雲機動部隊は十分な戦力を保有していたためインド洋遮断は十分に可能であった。
その派遣を防ぐべくガダルカナルに上陸したのだ。
事実、南雲機動部隊はガダルカナル上陸の報により進路を変更してソロモン海へ進出し東部ソロモン海戦――日本側呼称第二次ソロモン海戦を戦う事になる。
この海戦で我々は復旧したエンタープライズを再び大破させ、サラトガも大破し戦線離脱、ワスプが沈められ、一時的に空母戦力が無くなると言う事態に陥り、ガダルカナル島から撤退することになった。
連合国の大敗北だが、それでも意義は十分にあった。
繰り返しになるが、南雲のインド洋進出を許せばインド洋航路は遮断され、英国の補給路は失われる。
四二年夏の同時期にエル・アラメインの戦いでエジプトを守っていたイギリス軍への補給路を断ち、ロンメルの猛攻の前に陥落しスエズも奪われ地中海の制海権は半ば奪われるのみならず、紅海経由でドイツ・イタリアと日本が手を携えることとなり連合国は著しく不利となる。場合によっては中東も印度も陥落し、南雲の機動部隊はスエズを通って地中海へ攻め入り、ジブラルタルを突破して大西洋へ進出しUボートと共にイギリスを締め上げたかも知れない。
その最悪の事態をウォッチタワー作戦は防いでくれた。
南雲機動部隊はアメリカ機動部隊を壊滅させ後顧の憂いを絶つと九月半ばにはインド洋に入り、下旬には各地への空襲と船団襲撃を始めた。
しかし、この二ヶ月弱の時間の間に連合国はインド洋経由でエジプトへ物資と兵力を送り防備を固め、一〇月のロンメルの第二次エル・アラメインの戦いを耐える事が出来た。
一〇月のガダルカナル再上陸作戦により再び南雲機動部隊を引きはがすことに成功したのは行幸だった。
最悪のクリスマスプレゼントとなったセイロン島陥落は二ヶ月は早まり、ソコトラ島も四二年中に占領され、我々は大きな危機と試練を迎える。
しかし、最悪の時期に起きてはいなかった。少なくとも四ヶ月という時間を数多の血を代償に我々は得る事が出来た。
四二年は大戦の大きな転換点となった。枢軸は優勢に進めていたが、最大のチャンスを逃し勝利の果実のほんの一部――それでも歴史上稀に見るほどの戦果を得ただけで終わり、大戦の最終的な勝利を掴む決定的な機会を逃し、敗北の苦難に耐えてきた我ら連合国が決定的な勝利を掴む道へ進む事となった。
しかし、それは決して平坦な道では無く、歩むには舗装を――多数の艦艇と多くの将兵の血で覆う必要があった。
ウィンストン・レナード・スペンサー=チャーチル著
第二次大戦回顧録より抜粋
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