架空戦記 旭日旗の元に

葉山宗次郎

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米軍 第二波攻撃

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「敵空母は仕留めたのか」
「状況不明です」

 第一機動艦隊の司令部は重苦しい空気が漂っていた。
 昨日から四波、今日だけで三波に及ぶ攻撃隊を出している。
 だが、攻撃に成功したのは昨日出した第一波のみ。
 今日出した三波はいずれも成果を上げていない。
 敵の護衛戦闘機が多すぎて敵艦隊に接近すらできないようだ。
 そして攻撃隊の半数が撃墜されている。
 残存機やマリアナの飛行隊から送り込まれた航空機をかき集めて送った第三波はさらに被害が大きい。
 現在準備中の第四波がうまくいく保証はない。
 艦隊内に焦りが浮かび始めていた。

「敵編隊来襲! 機数三百!」

 伝令が報告してきた。
 アメリカは後方から艦載機を補充しているらしく、敵攻撃機が減る気配がない。

「迎撃を出すんだ」

 直ちに無線で迎撃隊に命令が下る。
 無線機の改良によって艦内から上空にいる戦闘機に迎撃指揮ができるようになっていた。
 また前方に突出している第一部隊、戦艦大和に護衛された信濃をはじめとする装甲空母群に敵攻撃隊を吸収させている。
 松田少将直伝の回避術もあって、大きな被害は出ていなかった。
 リンガで行った艦隊機動訓練と対空射撃演習により艦隊の回避と防空は良くなっており、改良された無線指示による迎撃もあって盾は十分に機能している。
 だが、機動部隊の矛、艦載機が減っている状況はまずい。
 いくら空母が残っていても積み込む機体がなければ、防御力の高い装甲空母とはいえただの箱だ。
 一部の部隊を下げてフィリピンから艦載機を呼び寄せようかと佐久田は考えた。
 空地分離により、空母搭載数の倍の機体を用意して二隊に分けて、一隊が母艦に乗っているとき、もう一隊を再編成と訓練に回すという方法を取っており、後方には艦載機が残っている。
 呼び寄せるべきかと思案していた。

「敵機! 後方の第二部隊に向かいます!」

 伝令の報告に佐久田は凍り付いた。

「見つかったか」

 後方の空母部隊が見つかった。それでも攻撃隊を出す可能性は小さいと思っていた。
 なぜなら攻撃機を積んでいるであろ敵の護衛空母部隊からでは航続距離がぎりぎりだからだ。
 下手をすれば、途中で燃料切れ。到達できても帰艦が遅くなり夜間着艦となり多数の艦載機を失うだろう。
 そのような危険を米軍が冒すとは佐久田には思えなかった。

「そうか、正規空母の艦隊に着艦させるつもりか」

 すぐさま米軍の考えを佐久田は読み取った。
 発艦した空母に着艦させなければならない理由はない。
 攻撃終了後は、近い正規空母に攻撃隊を着艦させるのだろう。
 防空のために戦闘機が多いが、消耗しているハズである程度は余裕があるはず。
 それでも航空機は空母の収容限界を超えるだろう。だが着艦した後、機体を海中投棄すれば良いだけの話だ。
 洋上に不時着させる方法もある。

「機体は消耗しても構わないということか」

 潤沢な生産力を生かして後方から機体を補充できる体制がアメリカ軍には整っているだろう。
 この程度の損耗は想定の範囲で、十分に効果がある。
 日本軍にはとてもまねできない手だった。

「直ちに迎撃機を出すんだ」

 佐久田は指示を出したが、すぐに思いとどまり山口のほうを見る。
 参謀に指揮権はなく、長官への意見具申ができるだけだ。

「許可する。直ちに迎撃機を出すんだ。第二部隊には退避命令」

 山口は咎めることなく、佐久田の指示を追認した。
 直ちに迎撃隊を出すが、第一部隊へ向かうと思っていたため指示に時間がかかった。
 そのため、一部を除いて迎撃に失敗した。
 最初の攻撃を迎撃したとき日本側も少なくない被害が出ていた。
 燃料弾薬の消耗を大きかった。
 ロケット弾を装備した零戦改は先ほどの迎撃でロケット弾を撃ち尽くし、着艦して再装填中。
 残りの零戦改も補給の為に着艦している機体が多くあり、上空に出ている機数が少なく、攻撃隊の侵攻を許した。
 しかも第二部隊の指揮官角田少将は攻撃隊を出すことにこだわり、退避へ移るのが遅れた。
 間違った判断ではなかった。
 燃料を満載し武器を搭載して飛行甲板に待機している空母は特大の可燃物だ。
 逃れられるかどうかわからない回避を行うより、発艦させて甲板を空にしたほうが良い。
 幸い第四波攻撃隊が飛び立った後、敵攻撃隊が、第二部隊に襲来してきた。

「こちらにも敵機が来襲しております」

 敵攻撃隊の一部が第一部隊にもやってきた。
 敵は全力で自分達を潰そうと考えている。
 そして強固な第一部隊ではなく柔らかい後方の第二部隊に狙いを定めてきた。

「どえらいことになるな」
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