架空戦記 旭日旗の元に

葉山宗次郎

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時雨水雷戦隊

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 「おい、味方の駆逐艦はどうなっているんだ」
「攻撃を受けているようです」
「そんな事は分かっている」

 アイオワに座乗したリー提督は苛立たしく声を上げる。
 彼はソロモンで発生した一連の海戦でレーダー射撃を指揮し、その道のエキスパートとして名をはせていた。
 劣勢の中、戦艦を果敢に突撃させ制海権を日本から奪ったことで知られる。
 その過程で、第三次ソロモン海戦で戦艦ノースカロライナとワシントンを失ったが、ソロモン奪回の立役者の一人である事は誰もが認めることであり戦艦部隊を指揮することに誰も異論は無かった。
 しかし、バークの駆逐艦部隊が加わったのはやりにくい。
 指揮系統も違うし連携のための打ち合わせの時間も無かった。
 これでは同士討ちの危険があり、果敢な突撃が出来ない。
 一応、バークが敵を混乱させている間にリーが有利な位置を占めて、敵艦の針路を塞ぎ、戦艦部隊が雨あられと砲弾を浴びせる。
 所謂T字戦法で迎え撃とうと考えていた。
 これなら全砲門を敵に向けられるし、敵艦隊の上陸部隊襲撃を断念させることが出来る。
 しかし、バークからの報告が上がってこないためリーは攻撃の指示が出せない。
 どうするべきか判断する材料が無かった。
 レーダーからは艦影が見えるが敵か味方か分からない。
 しかも多数の水柱が発生していて、味方がやられているのが見える。
 劣勢だとリーは判断した。
 後方の味方を守る為、同士討ち覚悟で砲撃するべきかリーは悩んだ。
 その時、無数の水柱が、敵艦隊の方向で上がった。



「予定時刻です。魚雷自爆」

 田中司令官に参謀長が報告した。
 命中しなかった一式魚雷は安全のために発射してから一定時間後に自爆する。一斉に発射したため同時に爆発したのだ。

「味方駆逐隊突入します」

 再装填を終えた駆逐艦が、作戦度入り奥にいるリーの戦艦部隊への肉薄攻撃に入った。
 米軍の駆逐艦達を壊滅させ通りぬけ易くなった米軍の防衛線を潰して敵戦艦に肉薄していく。
 途中、反撃してくる米駆逐艦もいたが、すぐさま日本側の駆逐艦が反撃し沈黙させ、進撃を続ける。
 駆逐艦など前座に過ぎない。
 彼らが戦前からたたき込まれてきた戦術、敵戦艦部隊に肉薄し魚雷を撃ち込もうとする。
 発射管に装填されているのは新型の三式酸素魚雷。
 一式酸素魚雷とは逆に射程が一万以下に抑えられた代わりに炸薬量を九〇〇キロに増量し威力を増している。
 戦艦クラスでさえ一発で大破する威力を持つ究極の魚雷だ。
 一式酸素魚雷で混乱させ、敵の陣形を乱し突入。再装填を終えた後、至近距離から三式酸素魚雷を放ってとどめを刺す。
 ソロモン海で米軍艦艇を海の底に沈めた功労者だ。
 そんな強力な魚雷を積み込んだ駆逐艦が米海軍に向かう。
 最初の魚雷攻撃によって隊列を乱した駆逐艦に砲撃を浴びせて排除していく。
 軽巡、重巡も突入し火力支援で駆逐隊を阻む敵を排除していく。
 やがて戦艦までの道が開けた。
 高速で駆逐艦が接近していく。

「時雨水雷戦隊いえ第四水雷戦隊突入していきます」

 改夕雲型駆逐艦、改秋月型と同様に特殊鋼ではなく普通鋼を使用し各部を直線化して工作を容易にして工数を削減、建造期間を一八ヶ月から八ヶ月に短縮した量産型の艦隊駆逐艦だ。
 開戦に備えて昭和一六年八月から建造が始まり開戦後急速に整備された。
 強度の低い一般鋼材を使っているため屑鉄艦隊と呼ばれながらもソロモンの消耗戦で一定の戦力維持どころか、量産性の高さ故増強さえされ戦い抜いた精鋭達だ。
 より多数を建造するために松型に整備は移ったが、今でも数の上では主力だ。
 そのうち、佐世保に配備された駆逐艦の多くが時雨の名前を冠している。
 佐世保に配属されている時雨がどんな作戦でも生きて帰ってくるので呉の雪風、佐世保の時雨と呼ばれ始めていた。それを知っていた命名担当者が半ば洒落と大量に生産される駆逐艦の名前候補の枯渇に頭を抱えたため、時雨の名前を付けた駆逐艦を次々と命名した。
 そのため春時雨、夕時雨、朝時雨など時雨の名前を付けた艦が第四水雷戦隊には集中して集まっている。
 名前の間違いによる混乱は起きているが挙げる戦果が大きいため今では気にしなくなっている。
 時雨の名を持つ駆逐艦達はリーの戦艦部隊へ三式酸素魚雷による雷撃を敢行した。
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