36 / 83
新型酸素魚雷
しおりを挟む
「伊崎がうらやましい」
戦闘を見つつも田中は、思わずにはいられなかった。
自分の後任であり前任者である伊崎少将はソロモンの戦いコロンバンガラ島沖海戦で米軍の待ち伏せ攻撃を受けて戦死した。
先頭を走っていた乗艦する旗艦神通が米軍に捕捉され集中砲撃を受ける中、探照灯を照射し神通は、指揮下の艦艇を守り攻撃を成功させる為、自ら囮となった。
米艦隊の攻撃が集中し神通船体が両断されても、前部と後部に残った大砲が各個に反撃する史上無類の粘り強い反撃を行った。
あまりの激しさと、二つに分かれた事から、新たな敵艦が現れたと米軍が誤認するほどであった
そのため米軍は神通に攻撃を集中してしまい他の艦を見逃した。
米軍がようやく神通が沈めた時には残った日本駆逐艦は絶好の攻撃位置たどり着き反撃した。
海戦の結果日本軍は軽い損害、神通の轟沈で済んだ。
だが旗艦先頭の伝統を守り戦闘にいたのが仇となって神通の乗員はほとんどが戦死、乗艦していた水雷戦隊司令部も艦と運命を共にした。
水雷戦隊司令部の幕僚は駆逐艦艦長や駆逐隊司令を勤め上げられる優秀な人材が配属されている。
旗艦が小型の巡洋艦であるため司令部の人員が制限される上に、所属する駆逐艦の数が多いこともあり、優秀な人材でないと職務が滞る。
彼らが戦死すれば艦艇の損失以上の損害、水雷戦隊という組織に甚大な支障を来す。
そして、水雷戦隊司令部再建に各地から大勢の優秀な人材の引き抜き――引き抜かれた部署、駆逐艦、駆逐隊の能率、練度の低下をもたらした。
海戦の戦訓と司令部喪失と再建に伴う人事上の問題を重く見た日本海軍は水雷戦隊旗艦を戦隊中央へ移動させる処置が行われた。
この決定を田中は好意的に受け止めているが、自分も伊崎と同じように戦死すれば良かったのではないかという思い、そして海軍軍人としての憧憬がある。
部下を巻き込むわけにはいかず実行はしないが、指揮官先頭への憧れはある。
後方にいるが先頭にいるつもりで敵艦隊の動きを田中は注視した。
そして、敵艦隊の乱れを見つけて指示した。
「敵の戦列は崩れた! 射撃開始! 目標先頭艦! 撃破しろ!」
命令を受けて阿賀野が砲撃を浴びせる。
新たな攻撃に米軍は、動揺し先頭の艦が火達磨になり、速力を落とし隊列を離れたことで、後続していた艦は混乱。
前方の艦を避けるために各艦が勝手に左右に動き出した。
だが、その先で魚雷が命中し、さらに脱落、あるいは撃沈されていく艦が続出。
それどころか航行するのにも危険と判断して、進むのを躊躇する艦が出てきて混乱に拍車を掛けた。
「敵艦隊、混乱しています」
田中率いる水雷戦隊の砲撃と雷撃により米艦隊は混乱していた。
魚雷発射から十分が経過しても魚雷命中の水柱が次々と上がり、米駆逐艦を仕留めていく。
先ほど発射した一式酸素魚雷は、酸素魚雷の長所である射程をさらに伸ばした改造型だ。
炸薬量は減ったが四〇ノットで六万メートルもの射程を持つ。
最大の特徴は一定距離を走ると直径千メートルの円を描いて回り出すことだ。
水雷戦隊単位で一斉発射を行い一定距離で魚雷が旋回。広大な海面を無数の魚雷が航走する一種のキリングゾーンを作り出すことが出来る。
その輪の中に米駆逐隊を収めれば敵が通過するだけで魚雷が当たり大損害を受けることになる。
ソロモンの戦いで優位に立てた理由の一つがこの新型酸素魚雷の片割れだった。
見張りが監視している間にも、次々と魚雷が米駆逐艦に命中
炸薬量が減っていても、駆逐艦を切断し巡洋艦に大損害を与えるだけの威力を残している。
バークの駆逐艦部隊は少数を残して壊滅した。
そして発射から十五分が経過した後、米軍がいる海域で爆発が起こった。
命中しなかった酸素魚雷の残りが仕掛けれれていた時限装置が作動し自爆したのだ。
同時にそれまで酸素魚雷が動き回っていた海域にいる米艦隊に向かって、日本駆逐艦が再突入を始めた。
戦闘を見つつも田中は、思わずにはいられなかった。
自分の後任であり前任者である伊崎少将はソロモンの戦いコロンバンガラ島沖海戦で米軍の待ち伏せ攻撃を受けて戦死した。
先頭を走っていた乗艦する旗艦神通が米軍に捕捉され集中砲撃を受ける中、探照灯を照射し神通は、指揮下の艦艇を守り攻撃を成功させる為、自ら囮となった。
米艦隊の攻撃が集中し神通船体が両断されても、前部と後部に残った大砲が各個に反撃する史上無類の粘り強い反撃を行った。
あまりの激しさと、二つに分かれた事から、新たな敵艦が現れたと米軍が誤認するほどであった
そのため米軍は神通に攻撃を集中してしまい他の艦を見逃した。
米軍がようやく神通が沈めた時には残った日本駆逐艦は絶好の攻撃位置たどり着き反撃した。
海戦の結果日本軍は軽い損害、神通の轟沈で済んだ。
だが旗艦先頭の伝統を守り戦闘にいたのが仇となって神通の乗員はほとんどが戦死、乗艦していた水雷戦隊司令部も艦と運命を共にした。
水雷戦隊司令部の幕僚は駆逐艦艦長や駆逐隊司令を勤め上げられる優秀な人材が配属されている。
旗艦が小型の巡洋艦であるため司令部の人員が制限される上に、所属する駆逐艦の数が多いこともあり、優秀な人材でないと職務が滞る。
彼らが戦死すれば艦艇の損失以上の損害、水雷戦隊という組織に甚大な支障を来す。
そして、水雷戦隊司令部再建に各地から大勢の優秀な人材の引き抜き――引き抜かれた部署、駆逐艦、駆逐隊の能率、練度の低下をもたらした。
海戦の戦訓と司令部喪失と再建に伴う人事上の問題を重く見た日本海軍は水雷戦隊旗艦を戦隊中央へ移動させる処置が行われた。
この決定を田中は好意的に受け止めているが、自分も伊崎と同じように戦死すれば良かったのではないかという思い、そして海軍軍人としての憧憬がある。
部下を巻き込むわけにはいかず実行はしないが、指揮官先頭への憧れはある。
後方にいるが先頭にいるつもりで敵艦隊の動きを田中は注視した。
そして、敵艦隊の乱れを見つけて指示した。
「敵の戦列は崩れた! 射撃開始! 目標先頭艦! 撃破しろ!」
命令を受けて阿賀野が砲撃を浴びせる。
新たな攻撃に米軍は、動揺し先頭の艦が火達磨になり、速力を落とし隊列を離れたことで、後続していた艦は混乱。
前方の艦を避けるために各艦が勝手に左右に動き出した。
だが、その先で魚雷が命中し、さらに脱落、あるいは撃沈されていく艦が続出。
それどころか航行するのにも危険と判断して、進むのを躊躇する艦が出てきて混乱に拍車を掛けた。
「敵艦隊、混乱しています」
田中率いる水雷戦隊の砲撃と雷撃により米艦隊は混乱していた。
魚雷発射から十分が経過しても魚雷命中の水柱が次々と上がり、米駆逐艦を仕留めていく。
先ほど発射した一式酸素魚雷は、酸素魚雷の長所である射程をさらに伸ばした改造型だ。
炸薬量は減ったが四〇ノットで六万メートルもの射程を持つ。
最大の特徴は一定距離を走ると直径千メートルの円を描いて回り出すことだ。
水雷戦隊単位で一斉発射を行い一定距離で魚雷が旋回。広大な海面を無数の魚雷が航走する一種のキリングゾーンを作り出すことが出来る。
その輪の中に米駆逐隊を収めれば敵が通過するだけで魚雷が当たり大損害を受けることになる。
ソロモンの戦いで優位に立てた理由の一つがこの新型酸素魚雷の片割れだった。
見張りが監視している間にも、次々と魚雷が米駆逐艦に命中
炸薬量が減っていても、駆逐艦を切断し巡洋艦に大損害を与えるだけの威力を残している。
バークの駆逐艦部隊は少数を残して壊滅した。
そして発射から十五分が経過した後、米軍がいる海域で爆発が起こった。
命中しなかった酸素魚雷の残りが仕掛けれれていた時限装置が作動し自爆したのだ。
同時にそれまで酸素魚雷が動き回っていた海域にいる米艦隊に向かって、日本駆逐艦が再突入を始めた。
0
あなたにおすすめの小説
わたしの下着 母の私をBBA~と呼ぶことのある息子がまさか...
MisakiNonagase
青春
39才の母・真知子は息子が私の下着を持ち出していることに気づいた。
ネットで同様の事象がないか調べると、案外多いようだ。
さて、真知子は息子を問い詰める? それとも気づかないふりを続けてあげるか?
そのほかに外伝も綴りました。
四代目 豊臣秀勝
克全
歴史・時代
アルファポリス第5回歴史時代小説大賞参加作です。
読者賞を狙っていますので、アルファポリスで投票とお気に入り登録してくださると助かります。
史実で三木城合戦前後で夭折した木下与一郎が生き延びた。
秀吉の最年長の甥であり、秀長の嫡男・与一郎が生き延びた豊臣家が辿る歴史はどう言うモノになるのか。
小牧長久手で秀吉は勝てるのか?
朝日姫は徳川家康の嫁ぐのか?
朝鮮征伐は行われるのか?
秀頼は生まれるのか。
秀次が後継者に指名され切腹させられるのか?
【架空戦記】狂気の空母「浅間丸」逆境戦記
糸冬
歴史・時代
開戦劈頭の真珠湾攻撃にて、日本海軍は第三次攻撃によって港湾施設と燃料タンクを破壊し、さらには米空母「エンタープライズ」を撃沈する上々の滑り出しを見せた。
それから半年が経った昭和十七年(一九四二年)六月。三菱長崎造船所第三ドックに、一隻のフネが傷ついた船体を横たえていた。
かつて、「太平洋の女王」と称された、海軍輸送船「浅間丸」である。
ドーリットル空襲によってディーゼル機関を損傷した「浅間丸」は、史実においては船体が旧式化したため凍結された計画を復活させ、特設航空母艦として蘇ろうとしていたのだった。
※過去作「炎立つ真珠湾」と世界観を共有した内容となります。
If太平洋戦争 日本が懸命な判断をしていたら
みにみ
歴史・時代
もし、あの戦争で日本が異なる選択をしていたら?
国力の差を直視し、無謀な拡大を避け、戦略と外交で活路を開く。
真珠湾、ミッドウェー、ガダルカナル…そして終戦工作 分水嶺で下された「if」の決断。
破滅回避し、国家存続をかけたもう一つの終戦
そしてそこから繋がる新たな近代史へ
母の下着 タンスと洗濯籠の秘密
MisakiNonagase
青春
この物語は、思春期という複雑で繊細な時期を生きる少年の内面と、彼を取り巻く家族の静かなる絆を描いた作品です。
颯真(そうま)という一人の高校生の、ある「秘密」を通して、私たちは成長の過程で誰もが抱くかもしれない戸惑い、罪悪感、そしてそれらを包み込む家族の無言の理解に触れます。
物語は、現在の颯真と恋人・彩花との関係から、中学時代にさかのぼる形で展開されます。そこで明らかになるのは、彼がかつて母親の下着に対して抱いた抑えがたい好奇心と、それに伴う一連の行為です。それは彼自身が「歪んだ」と感じる過去の断片であり、深い恥ずかしさと自己嫌悪を伴う記憶です。
しかし、この物語の核心は、単なる過去の告白にはありません。むしろ、その行為に「気づいていたはず」の母親が、なぜ一言も問い詰めず、誰にも告げず、ただ静かに見守り続けたのか——という問いにこそあります。そこには、親子という関係を超えた、深い人間理解と、言葉にされない優しさが横たわっています。
センシティブな題材を、露骨な描写や扇情的な表現に頼ることなく、あくまで颯真の内省的な視点から丁寧に紡ぎ出しています。読者は、主人公の痛みと恥ずかしさを共有しながら、同時に、彼を破綻から救った「沈黙の救済」の重みと温かさを感じ取ることでしょう。
これは、一つの過ちと、その赦しについての物語です。また、成長とは時に恥ずかしい過去を背負いながら、他者の無償の寛容さによって初めて前を向けるようになる過程であること、そして家族の愛が最も深く現れるのは、時に何も言わない瞬間であることを、静かにしかし確かに伝える物語です。
どうか、登場人物たちの静かなる心の襞に寄り添いながら、ページをめくってください。
大東亜戦争を有利に
ゆみすけ
歴史・時代
日本は大東亜戦争に負けた、完敗であった。 そこから架空戦記なるものが増殖する。 しかしおもしろくない、つまらない。 であるから自分なりに無双日本軍を架空戦記に参戦させました。 主観満載のラノベ戦記ですから、ご感弁を
もし石田三成が島津義弘の意見に耳を傾けていたら
俣彦
歴史・時代
慶長5年9月14日。
赤坂に到着した徳川家康を狙うべく夜襲を提案する宇喜多秀家と島津義弘。
史実では、これを退けた石田三成でありましたが……。
もしここで彼らの意見に耳を傾けていたら……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる