架空戦記 旭日旗の元に

葉山宗次郎

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新型酸素魚雷

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「伊崎がうらやましい」

 戦闘を見つつも田中は、思わずにはいられなかった。
 自分の後任であり前任者である伊崎少将はソロモンの戦いコロンバンガラ島沖海戦で米軍の待ち伏せ攻撃を受けて戦死した。
 先頭を走っていた乗艦する旗艦神通が米軍に捕捉され集中砲撃を受ける中、探照灯を照射し神通は、指揮下の艦艇を守り攻撃を成功させる為、自ら囮となった。
 米艦隊の攻撃が集中し神通船体が両断されても、前部と後部に残った大砲が各個に反撃する史上無類の粘り強い反撃を行った。
 あまりの激しさと、二つに分かれた事から、新たな敵艦が現れたと米軍が誤認するほどであった
 そのため米軍は神通に攻撃を集中してしまい他の艦を見逃した。
 米軍がようやく神通が沈めた時には残った日本駆逐艦は絶好の攻撃位置たどり着き反撃した。
 海戦の結果日本軍は軽い損害、神通の轟沈で済んだ。
 だが旗艦先頭の伝統を守り戦闘にいたのが仇となって神通の乗員はほとんどが戦死、乗艦していた水雷戦隊司令部も艦と運命を共にした。
 水雷戦隊司令部の幕僚は駆逐艦艦長や駆逐隊司令を勤め上げられる優秀な人材が配属されている。
 旗艦が小型の巡洋艦であるため司令部の人員が制限される上に、所属する駆逐艦の数が多いこともあり、優秀な人材でないと職務が滞る。
 彼らが戦死すれば艦艇の損失以上の損害、水雷戦隊という組織に甚大な支障を来す。
 そして、水雷戦隊司令部再建に各地から大勢の優秀な人材の引き抜き――引き抜かれた部署、駆逐艦、駆逐隊の能率、練度の低下をもたらした。
 海戦の戦訓と司令部喪失と再建に伴う人事上の問題を重く見た日本海軍は水雷戦隊旗艦を戦隊中央へ移動させる処置が行われた。
 この決定を田中は好意的に受け止めているが、自分も伊崎と同じように戦死すれば良かったのではないかという思い、そして海軍軍人としての憧憬がある。
 部下を巻き込むわけにはいかず実行はしないが、指揮官先頭への憧れはある。
 後方にいるが先頭にいるつもりで敵艦隊の動きを田中は注視した。
 そして、敵艦隊の乱れを見つけて指示した。

「敵の戦列は崩れた! 射撃開始! 目標先頭艦! 撃破しろ!」

 命令を受けて阿賀野が砲撃を浴びせる。
 新たな攻撃に米軍は、動揺し先頭の艦が火達磨になり、速力を落とし隊列を離れたことで、後続していた艦は混乱。
 前方の艦を避けるために各艦が勝手に左右に動き出した。
 だが、その先で魚雷が命中し、さらに脱落、あるいは撃沈されていく艦が続出。
 それどころか航行するのにも危険と判断して、進むのを躊躇する艦が出てきて混乱に拍車を掛けた。

「敵艦隊、混乱しています」

 田中率いる水雷戦隊の砲撃と雷撃により米艦隊は混乱していた。
 魚雷発射から十分が経過しても魚雷命中の水柱が次々と上がり、米駆逐艦を仕留めていく。
 先ほど発射した一式酸素魚雷は、酸素魚雷の長所である射程をさらに伸ばした改造型だ。
 炸薬量は減ったが四〇ノットで六万メートルもの射程を持つ。
 最大の特徴は一定距離を走ると直径千メートルの円を描いて回り出すことだ。
 水雷戦隊単位で一斉発射を行い一定距離で魚雷が旋回。広大な海面を無数の魚雷が航走する一種のキリングゾーンを作り出すことが出来る。
 その輪の中に米駆逐隊を収めれば敵が通過するだけで魚雷が当たり大損害を受けることになる。
 ソロモンの戦いで優位に立てた理由の一つがこの新型酸素魚雷の片割れだった。
 見張りが監視している間にも、次々と魚雷が米駆逐艦に命中
 炸薬量が減っていても、駆逐艦を切断し巡洋艦に大損害を与えるだけの威力を残している。
 バークの駆逐艦部隊は少数を残して壊滅した。
 そして発射から十五分が経過した後、米軍がいる海域で爆発が起こった。
 命中しなかった酸素魚雷の残りが仕掛けれれていた時限装置が作動し自爆したのだ。
 同時にそれまで酸素魚雷が動き回っていた海域にいる米艦隊に向かって、日本駆逐艦が再突入を始めた。
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