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新たな狩り場
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「損害報告!」
揺れが収まった後、田村は命じた。
「各部異常ありません」
報告を受けて田村は安堵した。
「二分間全速。その後微速前進」
爆発音で海中が騒音まみれになっている。その間に全速で離脱する。
やがて、音が収まってきた。
「敵艦、旋回。我々が居た場所に戻っていくようです。砲撃音! それと爆雷の投射音が聞こえます」
「よし」
咄嗟に艦尾にある短魚雷発射管から放出したボールド――カルシウム水素化合物の入った缶で、水圧により一定深度で弁が解放され海水に触れると水素を発生させ発生する泡が探知音を反射して潜水艦に擬態する装備とテティス――欺瞞潜望鏡で駆逐艦のレーダーを反射させ混乱させる装備を放った。
いずれもUボートから譲渡された装備でこいつのお陰で生存率が高まった。
更に廃油とゴミを放出することで駆逐艦に田村達の位置を誤認させ、損傷したように見せかけた。
ただ、こうした手は他の潜水艦も使っており、相手が腕の良い艦長だとこうした手に何度も引っかかっている事があるので、探知範囲を広げてくる可能性がある。
そのため、田村達は息を潜めて待った。
「敵駆逐艦、離れます。船団に戻っていくようです」
三十分後聴音手の報告にホッとした空気が艦内に流れる。
船団の被害が甚大なため救助の為に戻っていくようだ。
こちらの正確な位置が分からないため、攻撃しようがないというのもあるだろう。
「やりましたね艦長」
「ああ」
戦果を挙げた上、生還できた喜びから笑顔で田村は答える。
長射程の一式酸素魚雷と第二射法のお陰で安全な距離から魚雷を放って悠々と退避することが出来る。
お陰で潜水艦の損害は目に見えて少ない。
戦前訓練していた艦隊決戦前の敵艦隊攻撃はアメリカ海軍艦艇の対潜能力の高さと高速の前に不可能となった。
今は攻撃しやすい低速の商船を相手にした方が戦果が大きい。
弱い者虐めと陰口をたたく者もいるが、戦争とはそうした者だ。
敵の弱い部分を見つけて自分の強い攻撃を行う。
個人の喧嘩ではないのだから名誉など二の次だ。
少なくとも自分と部下、艦の安全は確保されている。
その点が田村には好ましかった。
遠距離からの攻撃の為外れやすいことと、戦果確認が難しい点があるが、何度も生きて出撃する事が出来る。
失敗しても挽回するチャンスはいくらでもある。
「さて、司令部は何といってくるかな」
攻撃終了後、田村は司令部からの通信を待った。
「艦長、司令部宛に当艦への通信を受信しました」
「どうした?」
「敵の警戒が厳重なため警戒が薄いウォッゼ~ハワイ方面へ転進せよとの事です」
「了解した」
素晴らしい命令だった。
敵が警戒厳重な中で攻撃する必要などない。
先ほどの攻撃で敵は警戒を厳重にしたに違いない。ここは離れて違う獲物を見つけるのが得策だ。
油断しているところを攻撃するのが当たり前だ。
そのために配置を変更して貰えるのは有り難い。
敵の情報を得ることが潜水艦には難しい。その点陸上の司令部は通信隊の通信諜報から敵の動きを知ることが出来る。
それを伝えて貰えるだけでも有り難いし、分析してその結果、敵の手薄な箇所が伝わるのはなお宜しい。
「浮上する。水上航行で針路を東へ向けろ」
田村は喜々として命令を下した。
まずは水上速力を上げて現場を離れる。敵が警戒している中にノコノコと向かう必要も無い。
「それとアフロディーテも用意しておけ」
これもUボートから譲渡された装備で気球にアルミ箔の吹き流しを取り付けただけの簡単な装備だが、敵のレーダーを反射して潜水艦の位置を誤認させる効果がある。
夜間に敵の駆逐艦を引き寄せるのに使えるため、非常に重宝している。
勿論離脱するときの囮として十分に使えるので田村は準備を命令し放出した。
これで敵の護衛は田村達を追いかけず攻撃しに来ると潜水艦と考えたアフロディーテへ引き寄せられる筈だ。
安全な海域に着いたら、甲板下に設置された魚雷格納筒から魚雷を引き出して魚雷室に入れなければ。折角、魚雷が発射されて広くなった発射管室に再び魚雷が入ってくるのは水兵達にとって不満だろうが、我慢して貰う。
しかし、追加される魚雷は発射数の半分の四本だけだから納得してくれるだろう。
何より戦果を上げたのだ。
新たな獲物を狩るため、戦果を更に上げられると思って貰えれば良い。
戦果をさらに挙げれば、横須賀に戻った時、熱海あたりで潜水戦隊が借り上げている温泉旅館で司令部が褒賞として豪遊させてくれるはずだ。
このことを伝えれば、乗組員も納得してくれるだろう。
田村はそう考えて、いつ行うか頭の中で計画を組み立て始めた。
そして伊二六八潜を新たな狩り場へ行かせるために全速力で進ませた。
揺れが収まった後、田村は命じた。
「各部異常ありません」
報告を受けて田村は安堵した。
「二分間全速。その後微速前進」
爆発音で海中が騒音まみれになっている。その間に全速で離脱する。
やがて、音が収まってきた。
「敵艦、旋回。我々が居た場所に戻っていくようです。砲撃音! それと爆雷の投射音が聞こえます」
「よし」
咄嗟に艦尾にある短魚雷発射管から放出したボールド――カルシウム水素化合物の入った缶で、水圧により一定深度で弁が解放され海水に触れると水素を発生させ発生する泡が探知音を反射して潜水艦に擬態する装備とテティス――欺瞞潜望鏡で駆逐艦のレーダーを反射させ混乱させる装備を放った。
いずれもUボートから譲渡された装備でこいつのお陰で生存率が高まった。
更に廃油とゴミを放出することで駆逐艦に田村達の位置を誤認させ、損傷したように見せかけた。
ただ、こうした手は他の潜水艦も使っており、相手が腕の良い艦長だとこうした手に何度も引っかかっている事があるので、探知範囲を広げてくる可能性がある。
そのため、田村達は息を潜めて待った。
「敵駆逐艦、離れます。船団に戻っていくようです」
三十分後聴音手の報告にホッとした空気が艦内に流れる。
船団の被害が甚大なため救助の為に戻っていくようだ。
こちらの正確な位置が分からないため、攻撃しようがないというのもあるだろう。
「やりましたね艦長」
「ああ」
戦果を挙げた上、生還できた喜びから笑顔で田村は答える。
長射程の一式酸素魚雷と第二射法のお陰で安全な距離から魚雷を放って悠々と退避することが出来る。
お陰で潜水艦の損害は目に見えて少ない。
戦前訓練していた艦隊決戦前の敵艦隊攻撃はアメリカ海軍艦艇の対潜能力の高さと高速の前に不可能となった。
今は攻撃しやすい低速の商船を相手にした方が戦果が大きい。
弱い者虐めと陰口をたたく者もいるが、戦争とはそうした者だ。
敵の弱い部分を見つけて自分の強い攻撃を行う。
個人の喧嘩ではないのだから名誉など二の次だ。
少なくとも自分と部下、艦の安全は確保されている。
その点が田村には好ましかった。
遠距離からの攻撃の為外れやすいことと、戦果確認が難しい点があるが、何度も生きて出撃する事が出来る。
失敗しても挽回するチャンスはいくらでもある。
「さて、司令部は何といってくるかな」
攻撃終了後、田村は司令部からの通信を待った。
「艦長、司令部宛に当艦への通信を受信しました」
「どうした?」
「敵の警戒が厳重なため警戒が薄いウォッゼ~ハワイ方面へ転進せよとの事です」
「了解した」
素晴らしい命令だった。
敵が警戒厳重な中で攻撃する必要などない。
先ほどの攻撃で敵は警戒を厳重にしたに違いない。ここは離れて違う獲物を見つけるのが得策だ。
油断しているところを攻撃するのが当たり前だ。
そのために配置を変更して貰えるのは有り難い。
敵の情報を得ることが潜水艦には難しい。その点陸上の司令部は通信隊の通信諜報から敵の動きを知ることが出来る。
それを伝えて貰えるだけでも有り難いし、分析してその結果、敵の手薄な箇所が伝わるのはなお宜しい。
「浮上する。水上航行で針路を東へ向けろ」
田村は喜々として命令を下した。
まずは水上速力を上げて現場を離れる。敵が警戒している中にノコノコと向かう必要も無い。
「それとアフロディーテも用意しておけ」
これもUボートから譲渡された装備で気球にアルミ箔の吹き流しを取り付けただけの簡単な装備だが、敵のレーダーを反射して潜水艦の位置を誤認させる効果がある。
夜間に敵の駆逐艦を引き寄せるのに使えるため、非常に重宝している。
勿論離脱するときの囮として十分に使えるので田村は準備を命令し放出した。
これで敵の護衛は田村達を追いかけず攻撃しに来ると潜水艦と考えたアフロディーテへ引き寄せられる筈だ。
安全な海域に着いたら、甲板下に設置された魚雷格納筒から魚雷を引き出して魚雷室に入れなければ。折角、魚雷が発射されて広くなった発射管室に再び魚雷が入ってくるのは水兵達にとって不満だろうが、我慢して貰う。
しかし、追加される魚雷は発射数の半分の四本だけだから納得してくれるだろう。
何より戦果を上げたのだ。
新たな獲物を狩るため、戦果を更に上げられると思って貰えれば良い。
戦果をさらに挙げれば、横須賀に戻った時、熱海あたりで潜水戦隊が借り上げている温泉旅館で司令部が褒賞として豪遊させてくれるはずだ。
このことを伝えれば、乗組員も納得してくれるだろう。
田村はそう考えて、いつ行うか頭の中で計画を組み立て始めた。
そして伊二六八潜を新たな狩り場へ行かせるために全速力で進ませた。
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