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マリアナの敗因
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「何故我々はマリアナで負けたのだ?」
山本はこれまでの経緯を踏まえ、佐久田にマリアナでの敗戦の理由を尋ねた。
ソロモンでの消耗戦を撤退戦に切り替え、後退しつつ時間を稼ぎ、トラックさえ放棄して絶対国防圏であるマリアナ諸島の要塞化。
切り札である第一航空艦隊の編成を行って、米軍の侵攻を食い止めようとした。
だが結果は敗北。
マリアナは失陥し、日本は危機に立たされていた。
「我々がアメリカ相手に正面切って戦えないからですよ」
佐久田は簡単に言いのけた。
「アメリカの方が、強大です。とても正面から戦えません」
「君の作戦案なら勝てたか?」
「ええ」
佐久田は認めた。
佐久田が立てた作戦は、第一航空艦隊の防空部隊のみマリアナに配置、攻撃隊は後方、硫黄島やペリリューで待機させる。
そして米軍が上陸した後、第一機動艦隊は、米軍の後方や上陸船団を攻撃。
孤立した米軍に対して硫黄島やペリリューから攻撃隊を送り出し、撃滅する作戦だ。
だが、対等な戦力がある状態で戦わないでどうする、という意見が出てきて佐久田の提案は却下され、米機動部隊を主目標とする作戦へ変更された。
結果は、前述の通りだ。
「私に責任があると?」
「そうは言っていない」
山本はねぎらうように否定した。
「君の言うとおり、潜水艦に後方への襲撃を命じたお陰で助かったよ」
佐久田は作戦案に反対した。特に潜水艦の哨戒線配置に断固として反対した。
来るか来ないか分からない敵艦隊を見つけ出す偵察と雷撃より、常に後方で前線への補給を担っている輸送船団を攻撃した方が活躍の機会があるからだ。
結果は、輸送船団襲撃で多くの船を沈めることができた。
少なくとも米軍の攻略が遅れることに期待できる程度には戦果を挙げていた。
また、作戦中の助言も的確であり、機動部隊の訓練プログラムを作り上げた功績もある。
佐久田に責任を押しつけることなどできない。
他の人間に代わりができるような人物ではなかった。
「何とか、次の戦で勝てないかね」
山本は佐久田に尋ねた。
あ号作戦で批判的だったし失敗したとはいえ、最小限の損害で撤退できたのは佐久田の手腕によるものだ。
また佐久田が予め米軍の後方に配備した潜水艦が輸送船を襲撃し成果を上げていた。
その成果、撤収作戦により救出した航空要員の活用を見込んでのこと、いや希望だった。
「無理ですね」
しかし佐久田はあっさりと否定した。
「日本とアメリカでは国力が隔絶しています。アメリカの方が物が良いですし量も多い」
「それでも日本軍人か!」
「事実ですから」
激昂する豊田に佐久田は冷めた声で答えた。
事実であり、佐久田が七年前に経験した現実だった。
中国戦線にいたとき、佐久田は陸戦隊を指揮していた。
匪賊や軍服を脱いだ便衣隊が跋扈する地域へ自動車で進出する時、日本のいすゞではなくフォードのトラックが配給されるよう血眼になって手配していた。
国産だと故障しやすく行軍中に故障して敵中に取り残されたらあっという間に取り囲まれ、なぶり殺しにされる。
故障しないフォードに乗ることで少しでも生存率を高めようと前線の将兵達は必死だった。
その事実を目の前で見せつけられた佐久田は、日本がアメリカに勝てないことを確信した
それでも軍人として最良の判断をしながら戦った。
敗北を先延ばしにしただけかもしれないが、やってきた。
「資源も生産力もアメリカが上です。どうしようもありません」
「そこをどうにかして欲しいのだが」
その部屋に初老の男が入ってきた。
「初めまして北山茂です」
海軍から生まれた軍需産業の寵児、北山重工の総帥だった。
山本はこれまでの経緯を踏まえ、佐久田にマリアナでの敗戦の理由を尋ねた。
ソロモンでの消耗戦を撤退戦に切り替え、後退しつつ時間を稼ぎ、トラックさえ放棄して絶対国防圏であるマリアナ諸島の要塞化。
切り札である第一航空艦隊の編成を行って、米軍の侵攻を食い止めようとした。
だが結果は敗北。
マリアナは失陥し、日本は危機に立たされていた。
「我々がアメリカ相手に正面切って戦えないからですよ」
佐久田は簡単に言いのけた。
「アメリカの方が、強大です。とても正面から戦えません」
「君の作戦案なら勝てたか?」
「ええ」
佐久田は認めた。
佐久田が立てた作戦は、第一航空艦隊の防空部隊のみマリアナに配置、攻撃隊は後方、硫黄島やペリリューで待機させる。
そして米軍が上陸した後、第一機動艦隊は、米軍の後方や上陸船団を攻撃。
孤立した米軍に対して硫黄島やペリリューから攻撃隊を送り出し、撃滅する作戦だ。
だが、対等な戦力がある状態で戦わないでどうする、という意見が出てきて佐久田の提案は却下され、米機動部隊を主目標とする作戦へ変更された。
結果は、前述の通りだ。
「私に責任があると?」
「そうは言っていない」
山本はねぎらうように否定した。
「君の言うとおり、潜水艦に後方への襲撃を命じたお陰で助かったよ」
佐久田は作戦案に反対した。特に潜水艦の哨戒線配置に断固として反対した。
来るか来ないか分からない敵艦隊を見つけ出す偵察と雷撃より、常に後方で前線への補給を担っている輸送船団を攻撃した方が活躍の機会があるからだ。
結果は、輸送船団襲撃で多くの船を沈めることができた。
少なくとも米軍の攻略が遅れることに期待できる程度には戦果を挙げていた。
また、作戦中の助言も的確であり、機動部隊の訓練プログラムを作り上げた功績もある。
佐久田に責任を押しつけることなどできない。
他の人間に代わりができるような人物ではなかった。
「何とか、次の戦で勝てないかね」
山本は佐久田に尋ねた。
あ号作戦で批判的だったし失敗したとはいえ、最小限の損害で撤退できたのは佐久田の手腕によるものだ。
また佐久田が予め米軍の後方に配備した潜水艦が輸送船を襲撃し成果を上げていた。
その成果、撤収作戦により救出した航空要員の活用を見込んでのこと、いや希望だった。
「無理ですね」
しかし佐久田はあっさりと否定した。
「日本とアメリカでは国力が隔絶しています。アメリカの方が物が良いですし量も多い」
「それでも日本軍人か!」
「事実ですから」
激昂する豊田に佐久田は冷めた声で答えた。
事実であり、佐久田が七年前に経験した現実だった。
中国戦線にいたとき、佐久田は陸戦隊を指揮していた。
匪賊や軍服を脱いだ便衣隊が跋扈する地域へ自動車で進出する時、日本のいすゞではなくフォードのトラックが配給されるよう血眼になって手配していた。
国産だと故障しやすく行軍中に故障して敵中に取り残されたらあっという間に取り囲まれ、なぶり殺しにされる。
故障しないフォードに乗ることで少しでも生存率を高めようと前線の将兵達は必死だった。
その事実を目の前で見せつけられた佐久田は、日本がアメリカに勝てないことを確信した
それでも軍人として最良の判断をしながら戦った。
敗北を先延ばしにしただけかもしれないが、やってきた。
「資源も生産力もアメリカが上です。どうしようもありません」
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