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有馬少将の出撃
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「断固攻撃あるのみだ!」
台湾に展開する陸軍第四航空軍の司令官富永恭次中将は、作戦会議の席上で声を荒げて言った。
「我が日本を攻撃する敵を前にして攻撃しないのは、武人の恥だ! 断固攻撃せよ!」
「お言葉ですが」
第一種軍装に身を包んだ海軍第二六航空戦隊司令官有馬正文少将が異議を唱えた。
「航空戦力が集まらない中の攻撃は非常に難しく、戦果の見込みはありません。ここは迎撃に専念するべきです」
「敵艦が近くに居るのに攻撃しないのは攻撃精神が足りないのではないか。海軍は腰抜けか」
「そのような事はありません!」
腰抜けと言われた有馬は激昂した。
少将へ昇進する前の大佐時代、有馬は翔鶴艦長を務め、常に艦橋に身を置いていた。
それも珊瑚海海戦後、ミッドウェーの敗戦の後の苦しい時期で、翔鶴が機動部隊の中心となっていた時期に着任。
日本海軍の主力として第二次ソロモン海戦、第二次インド洋作戦、南太平洋海戦に参加。
特に南太平洋海戦では、ドーントレスの急降下爆撃を受け大破してもなお進撃し囮となる覚悟を示した。
「修理すれば戦列復帰できる艦を使い捨てる事は出来ません」
と、当時第三艦隊参謀を務めていた佐久田の言葉で、実施はされなかったが、有馬の敢闘精神は高かった。
その後、修理を終えると戦列に復帰し第三次インド洋作戦に参加。
第三次インド洋作戦参加後に航空本部へ異動。
その後、昇進し現職の陸上航空戦隊の司令官に任命されたが闘志は衰えていない日本でも有数の航空隊指揮官だ。
「ならば、見せてもらいたい」
「見せましょう」
有馬はハッキリと富永に言うと、作戦室から出て行き海軍の飛行場へ向かった。
「出撃準備!」
到着すると幕僚達を集めて訓示を行った。
「日本海軍航空隊の攻撃精神がいかに強烈であっても、もはや通常の手段で勝利を収めるのは不可能である。この上は非常の手段、体当たり特攻を行うしかありません」
体当たりという言葉を聞いて幕僚達は凍り付いた。
「特攻を採用するのはパイロットたちの士気が高い今です」
静かながら強い口調で有馬は言い、周りを見渡した。
「これからは敵空母を沈めるためには、体当たり攻撃が必要です」
有馬は繰り返し特攻の必要性を述べた。
マリアナ沖海戦に敗北し、大量の機材を失った今、米軍を仕留めるには体当たりしかない、と考えていた。
「そのためには若い士官や兵隊だけを死なせるわけにはいきません。特攻を行うなら上級指揮官が搭乗すべきです。誰か居ませんか」
と、志願者を募ったが集まった幹部は誰一人名乗りを上げなかった。
すると有馬はそれまでの温厚な口調を一転し、激しい口調で言った。
「誰もおらんのか!」
非常の時なのに自らの命を治ような振る舞いに有馬は激昂した。
「よし、それなら私が乗ろう!」
有馬の言葉に、幕僚全員は唖然とした。
誰も本気で行くとは思わなかった。
「し、しかし、将官が出撃するのは前例がありません」
通常、出撃するのは飛行長、中佐クラスまでで航空隊司令以上は飛行隊の他、整備や施設などの要員を指揮する必要があるため、出撃することはない。
それが更に上位部隊の航空戦隊司令官が出撃するなど前例がない。
マレー沖海戦でプリンス・オブ・ウェールズとレパルスを撃沈した第二二航空戦隊司令官松永少将も出撃せず、サイゴンの基地で指揮を執っている。
副官は思いとどまるように説得しようとした。
だが、有馬は短刀を抜くと襟の階級章を切り落とし、次いで双眼鏡の司令官の文字を削り落とし、真っ直ぐ出撃機の下へ向かった。
止めようとしたが、有馬の気迫に遂に言い出せず、有馬は陸攻に乗り込むと攻撃隊と共に出撃していった。
「隊長、指揮は任せるぞ」
さすがの有馬でも空中での指揮は出来ないため、飛行長に指揮を任せたが陣頭であることに間違いはなかった。
第二六航空戦隊の攻撃隊は電子彩雲からの情報を受けて進軍しハルゼー機動部隊を発見した。
「全機突入せよ!」
米空母群を見つけた第二六航空戦隊は突入を始めた。
戦闘機隊が防空戦闘機を蹴散らし、攻撃隊への血路を開いた。
チャフを散布する部隊の活躍もあり、米戦闘機隊を誤誘導させることに成功し、攻撃隊は空母群の輪形陣に到達した。
だが、そこから地獄が始まった。
外周に配置された駆逐艦、防空巡洋艦が五インチ両用砲を発砲し、迎撃してくる。
それでも接近するとボフォース四〇ミリ機関砲が加わり、さらにエリコン二〇ミリ機銃、ブローニング五〇口径機関砲が加わる。
駆逐艦の防空網を突破しても、空母自身が対空砲を山のように搭載している。
火山のような対空砲火が攻撃隊に放たれ、次々に撃墜されていった。
だが、数機の三式陸攻が、防弾装備で生き延びた機体が空母フランクリンを雷撃位置に捕らえた。
彼らが放った魚雷はフランクリンに命中、大破させることに成功した。
しかし、攻撃に成功した機体への迎撃も激しく、成功して無事に基地に戻れた機体は三機しかいなかった。
残りは撃墜され、一機は被弾しフランクリンに突入、自爆した。
自爆機の突入により、残存燃料が広がったフランクリンは大火災を起こし、一時は総員退艦が発令された。
だが、駆逐艦の救援が間に合い、沈没は免れた。
大損害を受け、本土での修理が決定し戦線離脱となった。
なお、修理中、機体が突入した部分で双眼鏡が発見されたが、それが有馬少将のものかどうかは、側面が削れていたため、出撃前に出来たモノか、突入時に出来たモノか判別できず、不明である。
台湾に展開する陸軍第四航空軍の司令官富永恭次中将は、作戦会議の席上で声を荒げて言った。
「我が日本を攻撃する敵を前にして攻撃しないのは、武人の恥だ! 断固攻撃せよ!」
「お言葉ですが」
第一種軍装に身を包んだ海軍第二六航空戦隊司令官有馬正文少将が異議を唱えた。
「航空戦力が集まらない中の攻撃は非常に難しく、戦果の見込みはありません。ここは迎撃に専念するべきです」
「敵艦が近くに居るのに攻撃しないのは攻撃精神が足りないのではないか。海軍は腰抜けか」
「そのような事はありません!」
腰抜けと言われた有馬は激昂した。
少将へ昇進する前の大佐時代、有馬は翔鶴艦長を務め、常に艦橋に身を置いていた。
それも珊瑚海海戦後、ミッドウェーの敗戦の後の苦しい時期で、翔鶴が機動部隊の中心となっていた時期に着任。
日本海軍の主力として第二次ソロモン海戦、第二次インド洋作戦、南太平洋海戦に参加。
特に南太平洋海戦では、ドーントレスの急降下爆撃を受け大破してもなお進撃し囮となる覚悟を示した。
「修理すれば戦列復帰できる艦を使い捨てる事は出来ません」
と、当時第三艦隊参謀を務めていた佐久田の言葉で、実施はされなかったが、有馬の敢闘精神は高かった。
その後、修理を終えると戦列に復帰し第三次インド洋作戦に参加。
第三次インド洋作戦参加後に航空本部へ異動。
その後、昇進し現職の陸上航空戦隊の司令官に任命されたが闘志は衰えていない日本でも有数の航空隊指揮官だ。
「ならば、見せてもらいたい」
「見せましょう」
有馬はハッキリと富永に言うと、作戦室から出て行き海軍の飛行場へ向かった。
「出撃準備!」
到着すると幕僚達を集めて訓示を行った。
「日本海軍航空隊の攻撃精神がいかに強烈であっても、もはや通常の手段で勝利を収めるのは不可能である。この上は非常の手段、体当たり特攻を行うしかありません」
体当たりという言葉を聞いて幕僚達は凍り付いた。
「特攻を採用するのはパイロットたちの士気が高い今です」
静かながら強い口調で有馬は言い、周りを見渡した。
「これからは敵空母を沈めるためには、体当たり攻撃が必要です」
有馬は繰り返し特攻の必要性を述べた。
マリアナ沖海戦に敗北し、大量の機材を失った今、米軍を仕留めるには体当たりしかない、と考えていた。
「そのためには若い士官や兵隊だけを死なせるわけにはいきません。特攻を行うなら上級指揮官が搭乗すべきです。誰か居ませんか」
と、志願者を募ったが集まった幹部は誰一人名乗りを上げなかった。
すると有馬はそれまでの温厚な口調を一転し、激しい口調で言った。
「誰もおらんのか!」
非常の時なのに自らの命を治ような振る舞いに有馬は激昂した。
「よし、それなら私が乗ろう!」
有馬の言葉に、幕僚全員は唖然とした。
誰も本気で行くとは思わなかった。
「し、しかし、将官が出撃するのは前例がありません」
通常、出撃するのは飛行長、中佐クラスまでで航空隊司令以上は飛行隊の他、整備や施設などの要員を指揮する必要があるため、出撃することはない。
それが更に上位部隊の航空戦隊司令官が出撃するなど前例がない。
マレー沖海戦でプリンス・オブ・ウェールズとレパルスを撃沈した第二二航空戦隊司令官松永少将も出撃せず、サイゴンの基地で指揮を執っている。
副官は思いとどまるように説得しようとした。
だが、有馬は短刀を抜くと襟の階級章を切り落とし、次いで双眼鏡の司令官の文字を削り落とし、真っ直ぐ出撃機の下へ向かった。
止めようとしたが、有馬の気迫に遂に言い出せず、有馬は陸攻に乗り込むと攻撃隊と共に出撃していった。
「隊長、指揮は任せるぞ」
さすがの有馬でも空中での指揮は出来ないため、飛行長に指揮を任せたが陣頭であることに間違いはなかった。
第二六航空戦隊の攻撃隊は電子彩雲からの情報を受けて進軍しハルゼー機動部隊を発見した。
「全機突入せよ!」
米空母群を見つけた第二六航空戦隊は突入を始めた。
戦闘機隊が防空戦闘機を蹴散らし、攻撃隊への血路を開いた。
チャフを散布する部隊の活躍もあり、米戦闘機隊を誤誘導させることに成功し、攻撃隊は空母群の輪形陣に到達した。
だが、そこから地獄が始まった。
外周に配置された駆逐艦、防空巡洋艦が五インチ両用砲を発砲し、迎撃してくる。
それでも接近するとボフォース四〇ミリ機関砲が加わり、さらにエリコン二〇ミリ機銃、ブローニング五〇口径機関砲が加わる。
駆逐艦の防空網を突破しても、空母自身が対空砲を山のように搭載している。
火山のような対空砲火が攻撃隊に放たれ、次々に撃墜されていった。
だが、数機の三式陸攻が、防弾装備で生き延びた機体が空母フランクリンを雷撃位置に捕らえた。
彼らが放った魚雷はフランクリンに命中、大破させることに成功した。
しかし、攻撃に成功した機体への迎撃も激しく、成功して無事に基地に戻れた機体は三機しかいなかった。
残りは撃墜され、一機は被弾しフランクリンに突入、自爆した。
自爆機の突入により、残存燃料が広がったフランクリンは大火災を起こし、一時は総員退艦が発令された。
だが、駆逐艦の救援が間に合い、沈没は免れた。
大損害を受け、本土での修理が決定し戦線離脱となった。
なお、修理中、機体が突入した部分で双眼鏡が発見されたが、それが有馬少将のものかどうかは、側面が削れていたため、出撃前に出来たモノか、突入時に出来たモノか判別できず、不明である。
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