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ハルゼー台風への対処
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「我々は迎撃のみだ」
沖縄周辺を担当する第一航空艦隊司令長官小沢中将は部下に言って聞かせた。
訓練のため部隊の大部分を南方へ送っており、手元に残っているのは、僅かな攻撃機と防空戦闘機のみだ。
「フィリピンに上陸する敵部隊を確実に細く殲滅するためにも我々は兵力を温存しなければならない。機動部隊に攻撃を仕掛けてはならない」
幕僚達の間に苦渋の表情が浮かび上がったが、一番心苦しいのは小沢だった。
海軍軍人として敵艦を葬り去ろうと考えるのは、当然だった。
だが、昨今の状況では安易に艦隊攻撃を行えない。
ハルゼーの機動部隊を攻撃するには数百機の航空機で一気に攻撃しなければならないが陸上航空部隊にそのような攻撃は無理だ。
空襲下で数百機の航空機を集結、発進、攻撃に回せる余裕はない。
数十機の編隊で波状攻撃する事になる。
それでは敵艦隊上空に展開しているであろう数百機の防空戦闘機に撃墜されてしまう。
「我々は防空に専念し、敵機の撃墜を優先する」
小沢の指示は適切だった。
上空に上がった戦闘機隊は地上の誘導と対空砲火により、二〇〇機に及ぶ損害をハルゼー艦隊に与えた。
ハルゼー台風に対して今、日本が得られる最良の戦果と言えた。
「フィリピンの様にならずに済んで良かった」
「はい、大西中将は頭を悩ませていることでしょう」
空襲報告を受ける小沢の呟きに幕僚は同意した。
九月のフィリピン空襲で大西中将率いる第二航空艦隊は大損害を受けた。
特に酷かったのはミンダナオ島のダバオ部隊だった。
次の上陸作戦が予想される地域であり、特に緊張を強いられていた。
上陸が行われた場合の手順も確認されており、攻撃を受けたとき機材の破壊、撤退も命令されていた。
そして、敵部隊上陸の通報があり、ダバオの部隊は手順に従い、指揮下にあった航空機の破壊を始めた。
だが、通報は誤認による誤報だった。
偵察機を出すと米軍の上陸部隊は影も形もなかった。
訂正が伝わったときには既に遅く、二〇〇機あった航空機は味方の手により破壊され、大西の第二航空艦隊は戦う前から大損害を受けた。
責任者であった寺岡中将は解任され、大西があとを引き継いだが、減った戦力は取り返せなかった。
この事件の影響で、ペリリューへの支援作戦も中止され、ペリリューは孤立無援の状態となった。
日本軍の抵抗が少なかったのもこの事件の影響が大きかった。
「例え、無事だったとしても攻撃出来なかっただろう」
激しい攻撃を受けていては攻撃隊を編制して送り出すことなど不可能だった。
「攻撃隊は出さない。これは決定だ。指揮下の部隊に通達しろ」
「了解」
小沢は重ねて指示を徹底させた。
マリアナで部下が勝手に攻撃に出たため、戦力を消耗したことが頭に残っていたからだ。
特に陸海軍の共同部隊が指揮下にある航空隊に無駄な損害を与え、陸海軍強力に日々を入れる事は避けたかった。
「T部隊は出さないことになった。迎撃のみで撃滅は行わない」
「良いことです」
日本本土への帰還中、軍令部の方針を聞いた佐久田は安堵して頷いた。
「疑問がありましたからね。米機動部隊と戦うことに意味があるのか」
「意義があるだろう」
「しかし機動部隊程度ではすぐに回復してきます。実際、潰した空母群が復活しています」
事実だったので山口は黙り込んだ。
マリアナで半壊させたあ空母群をアメリカは補填どころか増強までしている。
まともにやっては戦えない。
「それに」
「それに?」
「今から敵機動部隊を追いかけて追いつけますか?」
「無理だな」
山口は佐久田の意見に同意した。
実際機動部隊を追いかけるのは不可能だし無意味、いや状況を悪化させる。
半年前のクウェゼリンをはじめとする外南洋の失陥は前年のギルバード諸島沖航空戦とマーシャル諸島沖航空戦に連合艦隊主力が出撃し、敵艦隊を捕捉できなかったからだ。
空振りとなり燃料を無駄遣いした結果トラックは燃料不足となった。
そのため、クウェゼリンへの上陸作戦が行われたとき連合艦隊は燃料不足で出撃できなかった。
ようやくインド洋から戻ってきた第三艦隊と共に出撃準備を終えたときには失陥していた。
だが、その兵力で雄作戦を実行し、クウェゼリンにいた米軍機動部隊を奇襲して大打撃を与え、一矢報いた。
直後にトラックが空襲を受けて壊滅したが、米軍の侵攻を遅らせる事に成功した。
しかし、重要なとき、クウェゼリンが失陥するときに駆けつけられなかったのは、燃料不足だ。
確実に米軍を攻撃するために、上陸作戦時を狙うのがよい。
マリアナの時、サイパンへの上陸が行われるまで出撃しなかったのは、空振りを避けるためだった。
「米軍は必ずフィリピンにやってきます。上陸したとき確実に攻撃を行いましょう」
佐久田の意見に山口は頷いた。
それ以外に方法はないのだ。
T部隊を出さないのも、この方針に従ってのことだ。
だが、この方針に満足しない人間がいた。
沖縄周辺を担当する第一航空艦隊司令長官小沢中将は部下に言って聞かせた。
訓練のため部隊の大部分を南方へ送っており、手元に残っているのは、僅かな攻撃機と防空戦闘機のみだ。
「フィリピンに上陸する敵部隊を確実に細く殲滅するためにも我々は兵力を温存しなければならない。機動部隊に攻撃を仕掛けてはならない」
幕僚達の間に苦渋の表情が浮かび上がったが、一番心苦しいのは小沢だった。
海軍軍人として敵艦を葬り去ろうと考えるのは、当然だった。
だが、昨今の状況では安易に艦隊攻撃を行えない。
ハルゼーの機動部隊を攻撃するには数百機の航空機で一気に攻撃しなければならないが陸上航空部隊にそのような攻撃は無理だ。
空襲下で数百機の航空機を集結、発進、攻撃に回せる余裕はない。
数十機の編隊で波状攻撃する事になる。
それでは敵艦隊上空に展開しているであろう数百機の防空戦闘機に撃墜されてしまう。
「我々は防空に専念し、敵機の撃墜を優先する」
小沢の指示は適切だった。
上空に上がった戦闘機隊は地上の誘導と対空砲火により、二〇〇機に及ぶ損害をハルゼー艦隊に与えた。
ハルゼー台風に対して今、日本が得られる最良の戦果と言えた。
「フィリピンの様にならずに済んで良かった」
「はい、大西中将は頭を悩ませていることでしょう」
空襲報告を受ける小沢の呟きに幕僚は同意した。
九月のフィリピン空襲で大西中将率いる第二航空艦隊は大損害を受けた。
特に酷かったのはミンダナオ島のダバオ部隊だった。
次の上陸作戦が予想される地域であり、特に緊張を強いられていた。
上陸が行われた場合の手順も確認されており、攻撃を受けたとき機材の破壊、撤退も命令されていた。
そして、敵部隊上陸の通報があり、ダバオの部隊は手順に従い、指揮下にあった航空機の破壊を始めた。
だが、通報は誤認による誤報だった。
偵察機を出すと米軍の上陸部隊は影も形もなかった。
訂正が伝わったときには既に遅く、二〇〇機あった航空機は味方の手により破壊され、大西の第二航空艦隊は戦う前から大損害を受けた。
責任者であった寺岡中将は解任され、大西があとを引き継いだが、減った戦力は取り返せなかった。
この事件の影響で、ペリリューへの支援作戦も中止され、ペリリューは孤立無援の状態となった。
日本軍の抵抗が少なかったのもこの事件の影響が大きかった。
「例え、無事だったとしても攻撃出来なかっただろう」
激しい攻撃を受けていては攻撃隊を編制して送り出すことなど不可能だった。
「攻撃隊は出さない。これは決定だ。指揮下の部隊に通達しろ」
「了解」
小沢は重ねて指示を徹底させた。
マリアナで部下が勝手に攻撃に出たため、戦力を消耗したことが頭に残っていたからだ。
特に陸海軍の共同部隊が指揮下にある航空隊に無駄な損害を与え、陸海軍強力に日々を入れる事は避けたかった。
「T部隊は出さないことになった。迎撃のみで撃滅は行わない」
「良いことです」
日本本土への帰還中、軍令部の方針を聞いた佐久田は安堵して頷いた。
「疑問がありましたからね。米機動部隊と戦うことに意味があるのか」
「意義があるだろう」
「しかし機動部隊程度ではすぐに回復してきます。実際、潰した空母群が復活しています」
事実だったので山口は黙り込んだ。
マリアナで半壊させたあ空母群をアメリカは補填どころか増強までしている。
まともにやっては戦えない。
「それに」
「それに?」
「今から敵機動部隊を追いかけて追いつけますか?」
「無理だな」
山口は佐久田の意見に同意した。
実際機動部隊を追いかけるのは不可能だし無意味、いや状況を悪化させる。
半年前のクウェゼリンをはじめとする外南洋の失陥は前年のギルバード諸島沖航空戦とマーシャル諸島沖航空戦に連合艦隊主力が出撃し、敵艦隊を捕捉できなかったからだ。
空振りとなり燃料を無駄遣いした結果トラックは燃料不足となった。
そのため、クウェゼリンへの上陸作戦が行われたとき連合艦隊は燃料不足で出撃できなかった。
ようやくインド洋から戻ってきた第三艦隊と共に出撃準備を終えたときには失陥していた。
だが、その兵力で雄作戦を実行し、クウェゼリンにいた米軍機動部隊を奇襲して大打撃を与え、一矢報いた。
直後にトラックが空襲を受けて壊滅したが、米軍の侵攻を遅らせる事に成功した。
しかし、重要なとき、クウェゼリンが失陥するときに駆けつけられなかったのは、燃料不足だ。
確実に米軍を攻撃するために、上陸作戦時を狙うのがよい。
マリアナの時、サイパンへの上陸が行われるまで出撃しなかったのは、空振りを避けるためだった。
「米軍は必ずフィリピンにやってきます。上陸したとき確実に攻撃を行いましょう」
佐久田の意見に山口は頷いた。
それ以外に方法はないのだ。
T部隊を出さないのも、この方針に従ってのことだ。
だが、この方針に満足しない人間がいた。
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