ムスコの盗難

別れた彼女

ある朝、目が覚めた瞬間、俺は何かがおかしいことに気づいた。布団の中で体を動かすたびに、下腹部に異様な軽さを感じる。嫌な予感がして、すぐに確認した。目を疑った。

ペニスが、無くなっていた。

「え、なんで…！？」

慌てて布団をはぐと、そこには虚無感だけが残されていた。何度見ても同じ。夢かと思い、頬をつねったが、痛い。現実だ。

「誰だよ、こんなふざけた悪戯を…！」

半ばパニックになりながらスマホを手に取り、ネットで「ペニス　盗まれた」と検索する。が、そんな異常な事態に関するまともな情報なんて出てくるわけがない。どうしたらいいのか分からないまま、俺はぼう然としていた。

その時、メールの通知音が鳴った。開いてみると、奇妙なタイトルのメールが届いている。

「オークション出品通知：あなたのペニス」

「なんだこれ…？」

震える手でメールを開くと、そこには驚愕の内容が記されていた。

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**出品者:** 匿名  
**商品:** あなたのペニス  
**入札開始額:** 50万円  
**入札状況:** 現在5件の入札あり

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信じられない。まさか俺のペニスがネットオークションに出品されているなんて！どうやら、出品者は「匿名」で、商品写真には確かに俺のペニスが映っていた。気持ち悪いほどリアルな画像で、自分のものだと一瞬で分かった。

「冗談じゃない…どうなってんだよ！」

さらに入札状況を確認すると、既に5人もの人間が入札しているらしい。俺は急いでオークションサイトにログインし、何とかして出品を取り下げようと試みたが、出品者に直接アクセスする手段が見つからない。焦りと怒りが入り混じり、どうすればいいのか分からないまま時間だけが過ぎていった。

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翌日、俺はオークションの進捗状況を再び確認した。そして、目を疑った。

**落札者:** 名前が表示されている。

そこには、見覚えのある名前があった。

「え…！？」

それは、先週別れたばかりの彼女、リサの名前だった。

「なんでリサが…」

心臓が激しく鼓動を打つ。別れたばかりで、もう二度と会うことはないと思っていた彼女が、まさか俺のペニスを落札するなんて、一体どういうことなんだ？

頭が混乱し、リサに直接連絡を取ることにした。

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「リサ、どういうことだ？なんで俺のペニスを落札したんだよ！」

電話越しに問い詰めると、リサは少しも驚いた様子を見せずに、静かに答えた。

「…あなた、別れる前に言ってたでしょ？“もう俺のことなんてどうでもいい”って。だから、あなたがいらないものなら、私がもらってもいいかなって思ったの。」

「そ、そんなこと言ったかもしれないけど、これは…ペニスだぞ!?」

「分かってるわ。だからこそ、ちゃんと価値があると思ったの。あなたが持っているより、私が持っている方が、意味があるって思ったの。」

彼女の冷静な口調が、かえって不気味だった。俺は、彼女がただの嫌がらせでこんなことをしているのか、それとも本気なのかが分からなくなってきた。

「リサ、頼むから返してくれよ…これは俺のだ。お金なら何とかするから…」

「お金じゃないの。あなたが言ったこと、その言葉を取り戻すなら、返してあげてもいいわ。」

「…言葉？」

「“どうでもいい”って言ったこと。あれ、本当にそう思ってた？それとも、ただの言い訳だったの？」

彼女の問いに、俺は答えに詰まった。あの時は、感情的になっていた。今になってみれば、俺は彼女のことをどうでもいいなんて思っていなかった。むしろ、未練すら残っている。それを認めるのが怖かっただけだ。

「…リサ、ごめん。あれは嘘だ。お前のこと、どうでもいいなんて思ってなかった。今でも、お前が大事だ。」

沈黙が続いた。彼女が電話の向こうで何を考えているのか、全く分からなかったが、やがて、静かな声が返ってきた。

「…そう。じゃあ、明日、返してあげるわ。」

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翌日、リサと再会した俺は、彼女から無事にペニスを受け取った。奇妙な体験だったが、彼女の手元にあったそれは、どこか満足そうに見えた。

そして、俺たちはまた少しだけ、元の関係に戻れたような気がした。