男の子になる方法

廣瀬純七

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大学のキャンパスに近い、落ち着いた雰囲気のカフェ。岡田恵理と佐藤達也は、向かい合って座り、コーヒーを飲みながらのんびりと話をしています。

「ねえ、達也くん。私、小さい頃にさ、お母さんに変なこと聞いたことがあるんだよね」

恵理がふと思い出したように笑いながら切り出しました。

「何? 変なことって」

達也が興味深そうに身を乗り出します。

「私、男の兄弟がいるじゃない? だからお兄ちゃんたちにはおちんちんが付いてるのに、何で私にはないの?ってお母さんに聞いたんだ」

「あはは、子供の頃あるあるだね。それで……?」

達也が先を促すと、恵理は当時の母親の真似をするように少し声を弾ませました。

「そしたらお母さん、真面目な顔して『お母さんの言うことをちゃんと聞いたら、恵理にも生えてくるわよ』って言ったの」

「うんうん、いかにもお母さんが言いそうな嘘だ」

達也は苦笑いしながら頷きます。

「でしょ? 私、それを信じちゃって。でも、一年ぐらい経っても全然気配がないから、お母さんに言ったんだ。『私、もう一年ぐらいずっとお母さんの言うこと聞いてるのに、全然生えてこないよ!』って」

「そりゃそうだよね」

「そしたらお母さん、なんて言ったと思う? 『恵理はまだまだ私の言うことを聞いていないわよ!』って、さらにハードルを上げてきたの」

恵理がおかしくてたまらないといった様子で続けると、達也もつられて笑います。

「徹底してるなあ。それで恵理はどうしたの?」

「納得いかなくて、お母さんに聞いたんだ。『じゃあ、お兄ちゃんたちはお母さんの言うことを聞いたの?』って。そしたらお母さん、『そうよ、お兄ちゃんたちはちゃんと言うことを聞いてたから生えてきたのヨ!』って断言するの」

「お兄ちゃんたち、模範的な子供だったんだね」

「そう。だから私、さらに聞いたの。『お兄ちゃんたちも、昔は女の子だったの?』って。そしたらお母さん、遠い目をして『とってもかわいい女の子だったわよ』って言うんだもん」

「あはは! お兄さんたちが元女の子……!」

達也が声を上げて笑うと、恵理も身を乗り出してオチをつけました。

「でもね、気になってお兄ちゃんに直接聞いたんだよ。『お兄ちゃん、昔は女の子だったの?』って。そしたらお兄ちゃん、『女の子じゃないよ、生まれた時から男だよ!』ってムキになって否定して。それをまたお母さんに報告したら、お母さん、なんて言ったと思う?」

「なんて?」

「『それはね、昔は女の子だったっていうのが恥ずかしいからよ!』って。最後まで言い張るんだもん、もう笑っちゃうよね」

恵理が楽しそうに笑うと、達也も「お母さん、最高だね」と言って、二人の間に温かい笑い声が響いた。
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