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お風呂のサプライズ
しおりを挟む湯気が立ち込めるバスルーム。
拓也の体になった沙織は、肩まで湯船に浸かりながらため息をついた。
「はぁ……今日はマジで疲れた……」
エンジニアの仕事をこなすだけでなく、慣れないスーツに、終始パソコンとにらめっこ。まさか拓也がこんな過酷な仕事をしていたとは思わなかった。
「でも、こうやってお風呂に入ると少しはリラックスできるわね……」
そう思って目を閉じた瞬間——。
**ガラッ!**
「よぉ!」
「え?」
びっくりして振り向くと、そこには——。
沙織の体の拓也が、バスタオルを胸元で巻き、まるで女湯に入るかのようなポーズで立っていた。
「……なにしてんの?」
「いやぁ、せっかくだし、一緒に風呂入ろうと思って!」
「は!? ちょ、待って!」
沙織(拓也)は思わず湯船の端に寄る。
「だって俺たち、夫婦なんだし、別に恥ずかしがることないだろ?」
「いやいや、めちゃくちゃ恥ずかしいわ!!」
「まあまあ、そんなこと言うなって。」
沙織の体の拓也は、バスタオルをギュッと押さえながら、なんとも言えないドヤ顔をしている。
「それに、俺が今女なんだから、むしろお前が堂々としてればいいだろ?」
「そういう問題じゃない!!」
拓也(沙織)は思わず顔を真っ赤にして叫ぶ。
「ふっふっふ……冗談だよ!」
そう言うと、沙織の体の拓也はクスクス笑いながら脱衣場へ引き返した。
「はぁ……もう……本当に調子に乗って……」
拓也(沙織)はため息をつきながら、湯の中に肩まで沈めた。
(まったく……こんな風に悪ノリするところは、体が入れ替わっても変わらないのね……)
ちょっとだけ、くすぐったいような気持ちになりながら、再びリラックスモードに入るのだった。
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